第114話 1年生、野手陣
高橋雪夜が一年生投手陣の投球練習に付き合っている間――
一年生の野手陣も、それぞれ練習に励んでいた。
浮田総二は、打撃練習をしていた。
コンパクトなスイングで、次々とボールを捉える。
派手さはないが、確実にミートしていく打撃だった。
その様子を見ていたキャプテンの進藤竜也が声をかけた。
「浮田君、いいバッティングをするね」
総二は少し照れたように答えた。
「ありがとうございます。当てるだけなら得意なもんで……」
進藤は続ける。
「君、高橋の後輩なんだろう……よくうちに来てくれたね」
総二は力強く言った。
「ワシは、雪夜先輩がおるから、ここに来たんでのう……雪夜先輩の力になりたいんじゃ」
進藤は小さく笑った。
「そうかい……高橋はいい後輩をもったもんだな」
一方――
竹田栄司も、打撃練習をしていた。
豪快なスイングで、鋭い打球を飛ばしている。
進藤は声をかけた。
「竹田君、力強いスイングだね」
栄司は嬉しそうに答えた。
「本当っすか……俺、守備がイマイチだから、打撃だけでもよくしたいんすよ」
進藤は思い出したように言った。
「そう言えば、君はサードがメインポジションなんだっけ」
「そうっすけど、試合に出られるなら、どこでもいいっすよ」
進藤は頷いた。
「そうか……僕も負けてられないな」
さらに――
早田士郎は、走塁練習をしていた。
スタートの鋭さが目立つ。
塁間を駆け抜けるスピードは、明らかに他の選手より速かった。
進藤は声をかける。
「早田君、足速いね」
早田は少し自嘲気味に言った。
「はい、俺には……足しかないんで」
進藤は首を横に振った。
「なら、打撃練習を中心にしてみなよ。出塁できれば、武器になる」
早田は小さく頷いた。
「まあ……やるだけやってみます」
一年生たちは、それぞれの持ち味を伸ばそうとしていた。
その様子を見ていた進藤は、内心で思った。
(このチームは……どこまで行けるのだろう……)
新しい力が加わった東鶴間高校野球部は、静かに、しかし確実に成長し始めていた。




