第113話 1年生、投手陣
新入部員が入ってから、数日が過ぎていた。
東鶴間高校野球部は、いつも通り練習を行っていた。
全体練習が終わると、それぞれが個別練習へと移る。
その中で――
高橋雪夜は、一年生投手陣の投球練習に付き合っていた。
最初にマウンドに立ったのは、白石広志だった。
広志の投じたボールが、ミットに収まる。
乾いた音が響く。
雪夜は頷いた。
「広志、球……良くなっているよ」
ミットを軽く叩く。
「以前より球速が上がっているし、変化球も良くなっている」
広志は嬉しそうに笑った。
「いや〜、雪夜さんに褒められると、嬉しいです」
次にマウンドに立ったのは、夏目海だった。
海のストレートが、鋭くミットへ突き刺さる。
雪夜は少し驚いたように言った。
「海君、ストレートの伸びがいいよ」
「球速より速く見える」
海は軽く頷いた。
「あの雪夜さんに言われるなら、嬉しいです」
最後にマウンドへ上がったのは、伯方歩夢だった。
投じられたボールは、鋭く曲がる。
続けて、山なりのカーブ。
雪夜は感心したように言った。
「歩夢君、変化球がいいよ」
少し笑う。
「特に高速スライダーとスローカーブの緩急の使い方が上手い」
歩夢は少し控えめに答えた。
「そう言われると……嬉しいです」
そして、続ける。
「でも、スタミナに自信がないんです」
雪夜はすぐに答えた。
「なら、個別メニューは走り込みを中心にしてみるかい」
歩夢はさらに言った。
「あと、投げ込みもしたいです」
雪夜は頷いた。
「分かった。考えておくよ」
一年生投手陣の練習は順調だった。
その一方で――
別の場所では。
田中三郎の球を受けていた中山太郎が、ぼそっと言った。
「なあ、田中……」
少し寂しそうに。
「俺って、人気ないのかなぁ」
田中は即答した。
「中山、俺がいるじゃないか」
その言葉に、中山は微妙な顔をした。
こうして――
東鶴間高校野球部の投手陣は、
天宮真十郎を含めて五人となった。
新たなチームが、ゆっくりと形になり始めていた。




