第110話 入学式
三年生が卒業した後も、東鶴間高校野球部は変わらず練習を続けていた。
春の風はまだ冷たく、だが確実に季節は進んでいた。
日々の練習。
走り込み。
基礎練習。
何気ない毎日が過ぎていく。
そして――
時間は流れた。
高橋雪夜たち一年生は、二年生となり。
進藤竜也たち二年生は、三年生となった。
チームの中心が、入れ替わる。
責任も、少しずつ重くなる。
やがて春休みも終わり、新学期が始まった。
校門には、新しい制服の生徒たちが並んでいる。
新入生たちの入学だった。
その中に――
雪夜は、見慣れた顔を見つけた。
浮田総二。
白石広志。
竹田栄司。
中学時代の後輩たちだった。
三人は、本当に東鶴間高校に入学してきた。
雪夜は、内心で小さく喜んでいた。
あの時の約束が、現実になったからだ。
だが――
同時に。
一人の姿が、そこにはなかった。
六本遊希。
雪夜は、ほんの少しだけ寂しさを感じていた。
それでも。
浮田総二、白石広志、竹田栄司。
この三人が入部すれば、人数は揃う。
ようやく、試合が出来る。
東鶴間高校野球部の面々は、そう思っていた。
だが――
この時、まだ誰も知らなかった。
さらに。
入部希望者が現れることを。
新しい風が、もうすぐ吹こうとしていた。
なお、この入学式の中に、マネージャーの夏目真衣の弟がいるのを知っているのは、夏目真衣と六条遊人だけであった。




