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第108話 卒業式

 冬は過ぎていった。


 冷たい風も、次第にやわらぎ始める。


 季節は、春へと向かっていた。


 東鶴間高校野球部は、今日も変わらず練習を続けている。


 だが、その空気はどこか違っていた。


 いつもより、少しだけ静かだった。


 理由は、誰もが分かっていた。


 三年生の卒業が、迫っていたからだ。


 それは――


 共に戦ってきた仲間との別れを意味していた。


 キャプテンの渡辺貴明。


 中田大。


 座間康太。


 佐々木冬次郎。


 この四人が、東鶴間高校を卒業する。


 そして、野球部からも巣立っていく。


 卒業式当日。


 体育館には、静かな空気が流れていた。


 呼名される名前。


 返事。


 壇上へ向かう足音。


 一つ一つが、現実を突きつけてくる。


 在校生として並ぶ一年生と二年生は、その姿を見送っていた。


 高橋雪夜も、黙って見つめていた。


 キャプテンだった者の背中を。


 仲間たちの背中を。


 何度も、あの背中に引っ張られてきた。


 その背中が、今日で――


 最後になる。


 やがて、卒業式は終わった。


 校庭には、春の風が吹いていた。


 しばらくして。


 野球部のグラウンドに、三年生たちが姿を現した。


 すでに制服の胸には、卒業証書の筒が抱えられている。


 もう、在校生ではない。


 OBとして、そこに立っていた。


 自然と、在校生たちは整列した。


 誰も言葉を発しない。


 静かな時間が流れる。


 やがて――


 一歩前に出たのは、元キャプテンの渡辺貴明だった。


 ゆっくりと、全員を見渡す。


 その目は、いつもと変わらなかった。


 だが――


 どこか、優しかった。


 渡辺が口を開こうとしていた。


 最後の言葉が、始まろうとしていた。

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