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夢見る星で待っていて  作者:
第1章
3/22

3.ミーティング

今日集ってもらったのは、みんなに頼みたいことがあるからなんだと、大月君が主導で始まったミーティングは、農業用肥料·飼料の血粉についてだった。


動物の血液、主に牛豚鶏の血から作られる血粉という有機肥料は昔から定番ではあるけれど、食肉が減ってからは屠殺業者からも入手しずらくなっている。

疫病が蔓延してからは感染を危惧し避けられてしまい、余計に入手が困難になってしまった。


「俺ん家の近所にあった『肉のカトー』っていう店が廃業しちゃってさ、いつもそこの(つて)で血粉を分けてもらっていたんだよ」

「コロッケやハムカツとか惣菜の旨いあの店だろ?ええ~やめちゃったの?残念!」

「そう、俺のソウルフード的な店だよ」

「あそこは家禽も頼めば捌いてくれたから助かっていたのにな」


『肉のカトー』閉店の損失の大きさを、大月君と同じ高校出身で近所に住んでいる望月君がしばらく熱く語っていた。


「それでさ、血粉の新しい入手先を見つけて行きたくて、もし心当たりがあったら紹介してくれないかな」


畜産業者が減る一方だと、こういう影響もあるのだ。模造肉、代替肉のシェアが増えると昔ながらの精肉店がやって行けなくなる。肉のカトーの店主は、代替肉を売るのを頑なに避けて来たらしい。


こうやって益々本物のお肉が食べられなくなってゆくわね。


「ああ、わかったよ」

「了解」

「はーい」


ダメ元で私は聞いてみた。


「それって、マタギさんとかでもいいのかな?」

「「マタギ!?」」


大月君達は目を見開いて驚いた。


「みか、何でそんな知り合いがいるの?」

「う、うんちょっとね」

「それって、おじいさん?」

「ううん、若い人だよ。マタギの末裔」

「あっ、もしかして、前にみかが言ってた大人な男性ってその人?」


如月君が怖い顔でこちらを睨んでいる。


「えっ、違うよ違う」

「なんだぁ、つまらない」

「それで、確約はできないけど、一応聞いてみようか?」

「ああ、頼むよ」


私が熊討伐メンバーだったことは話していないし、知られてはいない。高校に通いながら土日を利用して活動していたから、バレることがなかった。

陰陽師の末裔の魔法使いさんと一緒に転移魔法で移動できたから、時短かつ安全に討伐を済ますことができた。


私のチートも内緒だ。

私って、なんだかんだ秘密にしていることが多いな。普段の私は仮の姿みたいだ。



ミーティングはそれでお開きになったけれど、美月と私はこのまま残ってくれと頼まれた。


「あのさ、血粉の代わりに試してみたいことがあるんだよ。協力してもらえるかな?」

「へぇ、何?」


大月君が言おうとしていることが、彼が口にする前にわかってしまった私は、かなり引いた。


(大月君、そ、それはちょっと······!)


「君達の経血を分けてくれないかな?」


人間の経血を血粉の材料にしている国は確かに今もある。これも疫病が蔓延してから使用が慎重になっているものだ。


「はあ?!何言ってるの?そんなの嫌に決まってるでしょ!」


美月は即拒否した。いくら彼の彼女でも、これはそうなるよね。


「朏さんも······、やっぱりダメかな?」

「······状況的に代用したい気持ちはわかるけど、誰のって特定されちゃうのはみんな嫌だと思うよ」

「そうだよ!いくら大月君のためでも嫌だ」

「学部の女子全員を対象にするとかならまだいいかもしれないけど······」


使用した生理用品(オーガニックコットンに限られる)から経血を分離させて血粉の材料にすることは古くからある。半世紀ほど前には日本でも見直されて復活していたから、忌避や軽蔑されるようなものではないけど、自分の彼女に頼むって大月君、そのデリカシーの無さが心配よ。


「大月君の馬鹿っ!もう、信じられない」

「ごっ、ごめん」


大月君は焦って頭を掻いている。

化学肥料も世界的に不足している。入手できたとしても年々高騰しているし、大月君の家は農家だから死活問題なのかもしれない。

大月君も疫病でお母さんとお姉さんを亡くしたらしいから、身近で頼める人がいないのかも。


この疫病で社会や家庭は滅茶苦茶にされてしまっている。

本当に一刻も早く収束して欲しい。


でも、あなた方二人は未来の夫婦なんだから(それは内緒だけど)、ここで仲違いしないで欲しいな。


「まずは先生に話をしてみたらどうかな?個人で集めるよりも先生からとか大学側から募ってもらう方が協力してもらえるかもよ」

「そっ、そうだな」

「もしそうなったら、みかは協力するの?」

「多分ね。だけど······やり方次第かな」


一応そうぼかして答えておくことにした。私にとっては現実的に難しいことだったから。

それは、私には生理が······。


「えええ~!私は絶対に嫌よ!」


大月君は苦笑した。


「じゃあ大月君、マタギさんに伝がないか聞いてみるね」

「ありがとう、助かるよ」



美月と一緒にミーティングルームを出ると、前方にサッと足早に去って行く人物の後ろ姿が見えた。


(あれは···)


「ちょっと、あれって如月君じゃない?まさか今の話を盗み聞きしてたんじゃないよね?」

「······かもね」


私はゲンナリしてしまった。


「なんかあの人、最近ストーカーチックで気持ち悪いよ。みかは大丈夫?絡まれてるよね」

「非·爽やか系」

「ほんと、それよ」


爽やか好青年なんて言うのは、彼を良く知らない人だけだ。今や美月までも警戒する要注意人物になっている。



寮に帰る美月と校門前で別れ、徒歩十分の駅に向かっていると、その途中にある高架橋の下で如月君が私を待ち伏せていた。

頭上の暗がりで鳩が鳴いている。自転車に乗った二人組の中学生が、立ち止まった私を追い越して行った。


「マタギって、討伐隊で一緒だった男だろ?」


この人、何でそれを知っているのだろうか。本当にストーカーみたいね。

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