↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

90/127

第八十七歩「激動の外界」

「うーん。うまく行きませんでしたか」

「ミタイダネ。一応、交渉ハシテ貰エタノデ

 ソロソロソチラ二連絡ヲ入レルカ話シ合ッテイタ所ダ」

「ぽぽっ、ぽぽぽっぽぽっぽっ?(ええ、どういうことなの?)」

「ブッ!? 嗚呼、コノオ嬢チャンノ声カ」


〈廃棄されし者の楽園〉から里へ報告へと向かった直後の事だ。

事態の急展開に私の頭は当然ついていけなかった。

ってか、一緒に居たイケヅキ君はなんだか事態を予測しているっぽい。

私が思わず、喋ったらむしろ相手がびっくりして吹き出した。

ああ、このエルフさん含めて〘映し鏡からの呼び声〙で

私の鳴き声がスルスミちゃんの声で再生されるのに驚くだろうね。

そして、軽く話が脱線したが、サマンおばさんが咳払いをして

話を戻していく。スルスミちゃんからやっぱ声変えておくかな後で。


「イケヅキハ解ッテルネ?

 国ガ軍ヲ動カスッテノハ面子ノ意味合イガ強イ」

「ええ、そりゃ野良の盗賊団や魔物の群れだったら追い返したり

 殺してお終いですけど、国から派遣されたってのは面倒なんです」

「向コウハ『必要じゃね?』ト思ッテ派遣シテル。

 将来ノ脅威ヤ現状ノ悪影響ヲ考慮シテ対処シヨウト

 見二来タ訳ダ。民カラ掻キ集メタ税金デ雇ッタ奴ヲ使ッテナ」


 さらっとイケヅキ君が殺してお終いとかいうパワーワードに

思わず息を呑んでしまいながらも、なんだか途中から公務員や

自治体の軌道修正が効かない計画みたいな話になってきた。

まぁ、此処の人達がどれだけ国に税金徴収されているか知らないが

日々の平穏と生活の発展の為に払ってる訳だから

そりゃ、追い返して失敗して『はい、そうですか』って訳にはいかない。

国が守る安心感や実務能力を疑われたりしたら終わりだもの。


「今回は英傑様のお二人には

 『封印したモノの眷属の魔人と決死の戦闘後に和解。英傑の力を畏れて

  暫くは封印した者が暴れる事はないのでこの地域は安定している』

 って事にしてもらっている……筈です」

「ぽぽぽっぽぽっぽぽっ(魔人って私か)」

「ソウソウ。マ、族長達デモ追イ返セタケド、今回ハオ嬢チャンモ

 和解シタ魔人トシテ此処二生息シテイル事ニスルッテサ」

「ぽぽっーぽぽぽっぽぽっ(おおー、それはありがたい)」


 そんな訳で大方の事情は教えて貰って大体の現状の説明を聞く。

なんでも外でその〈第四勇者軍〉とかいう地方の魔物や盗賊討伐やら

とりあえず、便利屋みたいな感じで揉め事を解決してる

皇太子直属の遊撃軍が居る。皇太子様どんだけヒャッハーだよ。

族長はその代表の皇太子とお話し合いの機会を貰って

現在、軽い戦が起こされる事になったみたいだ。軽いっておぃ。

色々と世紀末過ぎないか、その皇太子様。


「ぽぽっぽっ、ぽぽぽっぽぽっぽぽぽっ(私、討伐されちゃうの?)」

「ソレハ多分無イネ。オ嬢チャン一人相手ナラ

 英傑ノ数ヲ増ヤシテ来リャ良イダケサ」

「まぁ族長に報告がてら聞いてみます」

「ウン。イッテラッシャイ」


 そういってサマンおばさんは私達を見送ってくれる。

そのまま、イケヅキ君と以前軟禁されたエルフの里へと早足で歩いて行く。

流石に事態が事態だが急いでどうにでもなるもんでもない。

しかし、気持ちは焦ってしまう。うーん、戦かぁ。

そりゃ戦争って規模じゃないんだろうけど、死んじゃう人とか出るのかな。

私は流石にエルフ達の決めた事に口出し出来ないが

おそらく、私自身がこの間まで殴り方すら知らない生き方をしてたのに

突然、『戦始まります!』とか言われても戸惑わずにはいられない。


「ぽぽっぽっぽぽっぽぽぽっ(大丈夫じゃないよねぇ)」

「そうですね。本来は賄賂とか含めて穏便に済ませる予定で

 話し合いも慣れている筈なんですけど」

「ぽぽぽっぽっ(賄賂って)」

「大切ですよ。女子供の命より安いもんです」


 さらっとイケヅキ君の発言が諸々ブラック過ぎる。

うーん、なんかリトモさんには目を賭けられてたみたいだから

そういう手口なりもちゃんと教えているのかな?

そんな事を話していると私達は里へと戻ってきた。

と言っても、其処は以前見た感じとは大分様子が違っている。

各々が引き車やタワラみたいな狼や他の使役魔物達に荷を乗せていた。

その陣頭指揮を取っているのはリトモさんだ。

私達はエルフ達の夜逃げ準備の合間をすり抜けながらも彼へと近寄る。


「オオ、丁度良カッタ。治療ハ如何ジャッタ?」

「はい! 報告します! 最初に選んだ子供達はほぼ終わりました。

 まだ、体調が優れない子もいますが概ね悪影響は今出ていません」

「ウム。間二合ッテ良カッタノ。報告ハ受ケテタガ元気ソウジャシ」

「ぽぽぽっぽぽっ……ぽぽぽっぽぽっ?

 (間に合うって……危ない情勢ですか?)」


リトモさん含めた老人たちは妙に着込んでいる。

肌が見えないと言うか、まるで特殊部隊と言うか

創作の暗殺者集団みたいに肌を一切見せない

フード付きの革の服みたいな装束を着込んでいた。

当然ベルトには以前見せた高そうな白金の武器がぶら下がっている。

各々の得物が微妙に違うのはあるがやっぱり近くで見たら

どれも高そうなものばかりだ。まず、老人たちが先陣を切るという事なのかな?


「向コウノ本気度ガ解ランガ、一応女子供ハ見逃シテ貰ウ様二

 話ハ付ケテオル。オ嬢チャンノ判断ハ解ランガナ」

「まぁ、危険と認識される可能性がありますからね。

 なんだかんだで向こうの英傑二名を撃退しているので」

「ぽぽぽっ、ぽぽっぽぽぽっぽぽっぽぽっぽぽぽぽっ。

 (うううっ、怖がって帰ってくれたら良いのに)」

「恐怖トハ“痛ミ”カ“理解出来ヌモノ”デシカ想起サレンヨ」


 しれっと言いのけるリトモさんもなんだかブラッディ&ブラックな

印象を感じ取れる。やっぱり、場数踏んでる人物の言葉の重みは違う。

頼りになると言えばそうだが、実際に血生臭さまで匂い立つよ。

私が若干怖がっている様子を見れば、腰元を大きくリトモさんに

叩かれて前につんのめりそうになる。油断仕切っていた訳で

態勢もグラグラな訳だが、なんとなく嬉しかった。

マゾヒズム的な訳じゃなくてほんと小娘扱いは何か良いね。


「マ、オ嬢チャンハソレダケ相手ヲ見テルッテ事ジャナ。

 殺ルカ殺ラレルカニナッタラソウイウ面持チデハ居ラレン」

「ぽぽぽっぽぽっぽぽぽっぽぽぽっ?(そういうものですか?)

「ソウジャトモ。イケヅキ、オ嬢チャンヲ例ノ所二案内シテオケ。

 ソシタラ、今夜ハ此処デ休ンダ後、治療シタ場所ヘ戻ッテ良イ」

「解りました。っと、ではちょっと休憩したらこっちへ」

「ワシハ皆ノ誘導ヲ終ワラセテオクカラノ」


 そう言ってリトモさんはまたエルフ達の移動準備の指揮へと戻る。

皆、代わる代わるに尋ねては荷物を積み直したり、私達が来た道を

車を動かしていく姿が見えていた。それらは〘ヒビ割れ〙でも無い

白い肌の少年少女のエルフに加えて親御さんであろう

中年エルフ達も一緒だ。ま、スルスミちゃんが居るから大丈夫だとは

思うけど、あっちも心配と言えば心配だ。……いや、むしろ

スルスミちゃんが居る事による心配事の方が多いだろうか?

私も大分この里の思考に染まってきたなぁ。


「ぽっ、ぽぽぽっぽぽっ(で、何処行くの?)」

「はい。こっちへ。正直言ってしまうと戦が始まれば

 何が起こるかは解りません。いざとなれば僕達は助けられないかも

 知れませんので見晴らしが良い場所を知ってもらいます」

「ぽぽっぽっ、ぽぽぽっぽぽっ!(なるほど、それはありがたい!)」


 お、なるほどね。まー、この前飛竜に空の散歩に連れてって

貰えて大体の全体像は見たけど、そういういざって時の観察場所はありがたい。

私だって見張りとか何か報告位は出来るかも知れないもの。

前は言葉も通じなかったがこうやって協力できる事がどんどん増えていく。

アレだね、なんかやっぱ仕事が出来るってのは嬉しいもんなんだね。

増え過ぎて潰されるのは嫌だけど、そう吐かされたりとか

吐かされたりとか、吐かされたりとかよりマシだよね!


「では、こっちへ。タワラも荷の積み込みに参加するでしょうから

 僕達だけで行きましょう」

「ぽぽぽっぽぽっ(了解だよー)」


 私は元気に返事を返しながらも里を二人で後にしていく。

喧騒から段々と離れていくと此処はやっぱり見慣れ始めていた

真っ白い森な訳で、静寂も鳥も獣の鳴き声もかすかに聞こえる

最初に来たときから此処だけは何も変わっていない。


「ぽぽぽっ(ここはずっと一緒だね)」

「そうですね。〘ハッシャクサマ〙が来てから

 色々とドタバタした感じもありましたが……此処はずっとこうです」


 そう言いながらも目当ての場所へとついた。

少し小高い丘になっており、木が遠くまで一定の高さまでで

伐採されていて、森の外の平原が見える。

なんだか白い何かがポツポツと見えているが目の良いイケヅキ君曰く

軍の野営地を設営しているらしく、兵士や馬がドタバタと

行き交っているのが見えるそうだ。向こうさんも準備してるんだね。

どうやら、本当に戦が起きてしまうのだろうか?

そんな不安を他所にまさかの言葉が頭に鳴り響いていって。


【[レガシーピース]〘小さき者達の挫き方〙を取得しました】


 このタイミングで!? 思わず、声を上げそうになるが

イケヅキ君が隣に居るので我慢我慢。ううむ、そうかこの場所にも

エルフたちのなんらかの歴史があったって事なんだろうね。

そりゃ、なんかいかにも手入れされてます感が残っているのだから

当然と言えば、当然だろう。うーん、まぁ折を見てこれも見てみないとね。


「此処の丘ならある程度の森の様子は見えます。

 まぁ、木の根本で何が起きてるかまではスキルを使わないと

 難しいでしょうが〘ハッシャクサマ〙は持ってます?」

「ぽぽぽっ(ないよー)」

「ま、ならば大まかな方向と相手の動きが見える程度ですかね」

「ぽぽぽっー?(かなー?)」


 そりゃそうか。エルフたちは森の中で過ごしているんだから

視認系のスキルの一つや二つ習得していてもおかしくないか。

なにせ、生活に直結するだろうしね。イケヅキ君も隣で

スキルを使っている様子だったがお仕事の邪魔をしちゃいけないので

暫く黙っていると急に私の腕を掴まれて引き倒される。

正確に言うと倒される程の力がある訳ではないが私はその動作に

順応するかの様に腰を屈める事を促されたのでそれに倣う形だ。


「ぽぽぽっぽっ!?(どうしたの!?)」

「いけない。向こうから見られました」


【未確認の対象から現在スキルによって視認されています】


「ぽぽぽっぽっ!?(なんですと!?)」

「向こうもスキル持ちが居ます。ちょっと迂闊でした。

 ごめんなさい」


 私は気にしないでっと首を左右に振りながらも

暫くイケヅキ君と一緒に伏せている。

流石、慣れているのかイケヅキ君の方が理解と反応が早かったが

システムさんも負けじと私に報告をしてくれた。

マジであの距離からこっちが見えるのか。どういうスキルだよ。

そんなの使えるなら下手したら狙撃とか砲撃とかし放題じゃない?

私、あんまし戦略とか戦争とか解かんないんだけど

遠くが見えるって事はソレを有効的に使えるってことだよね。


「……ふーむ。後はもう一箇所だけにしておきましょうか」

「ぽぽぽっ、ぽぽっ?(次は、何処?)」

「あそこに行きます」


 そう言って、彼が指差したのは森の中で

一つ無駄に大きく育っている巨大な針葉樹の木だった。

        第八十八歩「大きなのっぽの木の上で」に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。