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第七十四歩「ゲロインは嫌だって言ったじゃないですか!」

「……(るーるーるー、吐いてるところを見られたよーるーるーるー)」

「姉さん、アレはちょっと。〘ハッシャクサマ〙結構傷付いてるよ」

「ンー良イ案ダト思ッタンダガ」


 ええ、私の腹部へとクリーンヒットしたスルスミちゃんの回し蹴りは

五臓六腑に振動響き立てて、私の胃の中を見事に叩き上げて頂いた訳です。

うう、見られたー。黒いドロドロっとした吐瀉物見られたよー!

アレは吐いてる本人も見てて気持ち悪いから嫌だったのにね。

そして、私は砂浜近くに生える木に抱きすがっては心を癒やすのです。

本当はイケヅキ君によしよしされたい……ってもうアレだ。

私、最近色々とブレーキが壊れている気がする。


「……(子供達と一緒だとどうにも童心と本能が溢れてしまうねぇ)」

「〘ハッシャクサマ〙は役に立ちたいと思って協力してくれるんだし

その割に家事は人並み以下しか出来ないんだから此処は気長にね?」

「ぽぽっ!?(ぐはっ!?)」

「マ、謝ットクカラ、今ハ明日カラノ事ヲ決メヨウ」


 イケヅキ君の忘れた頃に飛んでくるナチュラル毒舌に胸を抉られつつも

なんとか気分を立て直して話し合いに参加する。

と言っても私が話すことはあんましない。怒られているのが嫌なのか

露骨な話題逸しの為に事態の進展切り出すスルスミちゃんに

私もイケヅキ君も納得はしてないがいつまでグチグチ言っても仕方ないか。

砂浜に毛皮を敷いて、砂風呂に入っている3人のエルフ達を見ながらも

私は置物になっておく。


「大体、午前と午後に二人ずつ位かな? 無理させちゃ悪いし

 後はやっぱり男の子と女の子で能力の効きが違うみたい」

「ダナ。コッチノ奴ハスグ起キタガ、コッチハ気失ッタマンマダ」

「順番も考えないとね」


 アレっすね。なんか、犬猫を飼う時の親子の飼育方針話し合いとかを

しているのを見る気分を今体験しているのだと痛感する。

いや、ご飯提供してもらって、住む場所やら色々と世話をしてもらってるので

もう私ってペットなんじゃね?と思わないでもないのよ。

うーむ、ココでなんとか提案の一つもしてみたいがさっぱりだ。

このスキルの副作用がなんか効果的なのは解ったが

さっきみたいに蹴られて吐くなんて、過食症や拒食症じゃあるまいし

そんな不健康な常態を推し進めるのはダメだし、それじゃ傷付いて

ダメージを受けて自己治癒に回すなんてのも御免被りたい。


「シカシ、ペースガ遅イノハナァ。大所帯デ来ル必要アッタカ?」

「少人数で来た方がとも思ったんだけど、過程を見せないで

 少しずつ行って戻ってだと怖がって皆嫌がるからね」

「……(あー、そりゃ怖い)」


 幾ら治療だ云々とは言え、子供達が数人で洞窟入って

フラフラになって戻ってくるとかそのまんまホラー過ぎる。

こうやって、わいわいキャンプしながらやってる方が打ち解ける時間も出来るしね。

ただ、里の労働力とかは大丈夫なのかな? 子供も頭数にさせてるだろうし

うーん、子守が無い分効率が上がるんだろうか?

なんだかんだで里の様子は一度も見たいことがないので

彼らがどうやって日々を営んでいるかは想像の範疇でしかない。


「実際、コイツハ如何ナンダ? 仕事ップリハ。

家事ガダメナラ他ハ?」

「狩猟とかやろうと思えばだけど、僕達より上手くなるのは大変だし

 知恵はあるっぽいけどそれを伝えたり、何か作るのは限定的になりそう」

「コノ仕事ガ今ハ一番役立ツッテ事カ」

「そうだね。まぁ、族長も色々考えてるだろうし

 僕達は任された今回の運用を頑張ろう。少なくともこのスキルは

〘ハッシャクサマ〙しか使えないだろうし」


 ううむ。なんか色々と考えてくれているのに申し訳ない気持ちで

いっぱいになってくる。この前まで日々生きる事すら精一杯だったのが

なんとも贅沢な悩みという感じではあるんだけどね。


 そんな話し合いを経て日々のペースと各々の方針を話し

野営の残りの済ませている内に日は落ちて、夜へとなっていく。

私は少しだけ彼らと離れた所にちょっと大きめのテントを作って貰い

その間にスルスミちゃんが寝て、残りのイケヅキ君達が砂浜付近で

テントの群れを作っている。夕餉も昼間と同じ生肉スライムと魚のバーベキューを

堪能した後、皆は疲れたのか一通り騒がしくなった後、寝てしまった。


「……(よし、久しぶりの一人だ。此処は追えてなかった情報を見ておこう)」


 皆が寝静まった後、私は夜空の星星を眺めながらも情報の確認をする。

うう、この満点の星空をテントで眺めながら就寝とかロマンチック極まる

シチュエーションだというのに! これはさっさと見るもの見て

まったりと星空鑑賞するんだい、私!


【ステータスウィンドウを開きます。

 新規取得情報一覧にメッセージがあります】


 私はステータスウィンドウを開く。うう、大分見てなかった項目とかが

溜まっている。幸い、システムさんに頼ることが減った位には

現在生活が安定しているという事でもあるのかな?

ただ、それでもまだまだ私は知らない事が多いのでこれからもよろしく

頼みたいところですよ、ええほんと。べ、別に忘れてる訳じゃないんだからね。


「……(取り敢えず、ドラ……じゃないワイバーンさんから見ておくか)」


【〘セイント・フリード・ワイバーン〙[飛竜][種族]現在情報取得中

  NEW 聖属性に属する飛竜種の野生化した種族。

       使役されている種と同等高い知力を有しており

       独自の生態系を構築している         】


「……(野生化? えーと、飼い犬とか家畜みたいなのが

    お外で繁殖しちゃったって事なのかな?)」


 確かまだLevel1に届いていない筈だったが項目があったので

ポチってみると感嘆な情報が載っていた。

野性味溢れるままに〈骨の柱〉をぶち砕いていたワイバーンさん達だが

元々はタワラやトゥータと同じ様な感じで誰かに付き従ってる系なの?

うーむ、あんなでっかいのを率いるってもう軍隊だよね。

なんかドラゴンが神聖視されてるとか言ってたから

ひょっとするとこの世界では竜って偉い種族なのかもしれない。


 あのワイバーンさん達とも仲良くなっといた方が良いのかな?

うーん、後でお話出来るか試みてみたいかも。〘古代エルフ語〙と

〘霊話〙は通じるから……後はきっかけだよね。

いきなり変な化け物女に根掘り葉掘り聞かれるのも嫌だろうし

うーん、まぁこれはおいおいエルフ達からの情報か伝手を頼ろう。


「……(さてと、お次はっと。此処の水についても)」


【〈高濃度竜造聖水〉Level1[製造品][聖属性]

 竜種の聖属性が抽出された高濃度の聖水。

 効力は一般的な聖水より強いが扱いは大変難しく

 そのままでは効力が発揮出来ず、聖水の原料として使われる事が多い】


 ふむ、〈天然聖水〉と違って飲んでも平気だったのはこういう事か。

なんか、聖水も扱いが変わるんかなぁ? しかし、これだけ聖水やら

聖属性が重宝されるって事はやっぱ闇属性な魔族様とか居るのかね。

うーん、まぁ目下私が一番祓われそうな勢いでは有るけど。

そういや、イケヅキ君とは森の中の事は色々と聞いたけど

外のことはそんなに聞けなかったなぁ。

いけないいけない、自然と森に引き篭もってるイメージだが

全く、外部の情報が無いって考えるのは思い込みが過ぎる。

ココらへんも仲良くなってから確認しないとね。


「……(さって、いよいよコレか。開くの本気で怖いんだけど)」


【〈骨の柱〉Level 0 [不明][聖属性]

 巨大な骨で出来た柱。〈廃棄されし者の楽園〉を支えている。

 この情報は[パーストポータル]関係の情報規制を受けています】


 ふむ、案外あっさりとした説明だったね。

身構えては居たが意外な肩透かしを食らった感じだ。

どうしたものか。取り敢えず、あの等間隔に空いている部分は

全部この〈骨の柱〉で出来てるのかね? 

しかし、なんでワイバーン達はこれをぶっ壊してるんだろうか。

単純に出れないから? いや、そこまで隙間は狭くないよね?

ただ、魔法とか呪いとかで出れないって感じになっているなら

それもそれで納得する。うーん、脱獄中って事?


「……(さて、これでおしまい。と言ってもあんまし情報無さそう)」


【〈廃棄されし者の楽園〉Level 0 [地名]

 棄て去った者達が秘めし楽園。聖なる加護に守られており

 魔術的な探知を拒み、存在すら秘匿されている。

 棄て去った者達以外は此処に足を踏み入れる事が出来ない】


 おおぅ、なんだか妙に意味深な雰囲気を見せるテキストだ。

後、アレだね。Level1が情報Levelの下限かと思ってたら

さっきもそうなんだけど普通にLevel0分の情報しか取れなかった。

しかもこれで最低限の情報ってどんだけこの場所に秘密が詰まってるんだ。


「……(ぬぬぬっ、今回情報量が多い割に質が低い!?)」


 解らない事とか重要そうっぽいことだけ解ったこのもやもや感が!

流石にこれ以上は私も覚えられないし[レガシーピース]は明日にしよう。


「……(うーん、此処数日流され気味だったからもうちょっと

    自主的に動かないとダメっぽいなぁ。頑張ろ)」


 私は毛皮の上に寝転がりながらも明日には忘れる決意をするのであった。

                第七十五歩「楽園での一日を経て」に続く

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