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第四十五歩「過去への入り口」

【[パーストポータル]に適合する[レガシーピース]を獲得しました。

 [パーストポータル]の説明を観覧後、展開を推奨します】


 いよいよか、散々引っ張りに引っ張ったコレが遂に見れるのか。

前に貰ったのがラナス君とコアタルちゃんの二人を倒した時だし

確か、一番最初にこのワードを見たのが雪っぽい奴に言及した時だっけか。

相変わらず取得条件が解らないが、リトモさんから

スキルで力を吸った時に情報も付随したって考えるのが妥当かな?


「あの大丈夫ですか?」

「……(あ、えーと『大丈夫』、『ごめんなさい』と)」

「いえ、ではまた此方に」


 立ち止まっている事に話掛けられて初めて気付く。

そうだ、うっかりしてた。もう、周りには色んなエルフが居るんだ。

一挙手一投足で印象もその先の事も変わってしまう事を忘れない様にしないと。

私はそう思い直しながらも、さっきの来た道を戻っていく。

改めて、少年エルフのイケヅキ君を見るがやっぱり緊張している。

そりゃそうだ、問答無用で追い回されてスキルで

痕付けられた正体不明の化け物を連れて歩かなきゃならないとなれば

私だって緊張する。それ以前に拒否しているかもしれない位だ。


「……(『私』『怖い?』)」

「あ、えーと……。そうですね。よく考えたらいきなり弓を向けましたし

 言葉も〘霊話〙も通じないというのはその……こっちもごめんなさい」

「ぽぽっ、ぽぽぽっぽっ!(ああ、こっちこそ!)」


 私は耐え切れずに単刀直入に聞いてしまった。

まぁ、最初誘惑を仕掛けた私もアレだがイケヅキ君は

大分理性的な対応をしてくれた。良かったこの子はヤクザなノリじゃない。

いや、ラナス君達を倒した結果、怖がられている可能性もあるけどね。

頭を下げるイケヅキ君に私も返す様に頭を下げ合う。

なんか、この光景だけを切り取って見ると日本人同士みたいで

ちょっと異世界感が薄れて面白い。


「あの時も〘霊話〙で語り掛けてたんですけど」

「……(んーと『霊話』『常識?』っと)」

「ん、知能のある幽霊や精霊は〘霊話〙でしか対話をしません。

 口語の言葉という概念が欠落していますので」


 成る程、私は下手に言葉を聞く事に注力していたから

気付けなかったのかな? いや、そもそも言葉が話せない事に

初めて気付いた瞬間だったものね、この子との邂逅の時って。


 私は小屋の中まで送り出されると族長が持ってきていた敷物の内

族長が座っていた分だけ持ってイケヅキ君は入り口へと立つ。

私もそれを見送った後、手枷を掲げる様にしても片手をだけ振って見送る。

うむ、しばらく軟禁は続きそうだ。今のうちにお礼はちゃんと言っておこう。


「……(『教える』『貰う』『ありがとう』っと)」

「!? ……いえ。では、しばらくこちらで待っていて下さい」


 ふぅ、なんとか一応、話は出来たのかな?

イケヅキ君は言葉を返した後、扉を締めて外から何か操作していた。

多分、鍵みたいなのを掛ける仕掛けがあるんだろう。

木が擦れて叩きつけられる音がした後、扉を押し引きしては

開かない事を確認して去っていた様だ。


 まぁー、今のところ友好的なのかな? リトモさんの腕が

黒くなっちゃったのは驚いたし、イケヅキ君の腕も気になる。

これはちゃんと私の能力とかを把握してない所為だし

何とかしてあげないと。それが、その後の関係にも繋がるだろうしね。

となれば、情報収集! そして、やるべきことは決まっている。



「……(さてっと、では説明を伺いますか。システムさんお願いー)」


【[パーストポータル]の仕様説明に入ります】


 そう言ってシステムさんの説明が始まる。私はリトモさんが持ってきた

敷物を壁際の床に置いて、私も背を預ける様に其処へと座る。

みしっと木の壁が少し軋む音が私の体重を伝え少し心が傷付いた。

ま、まぁ、仕方ないんだけどね? サイズがサイズだし。


【[パーストポータル]展開中は一切の行動が取れません。

 外部的には睡眠状態とほぼ同等と判断されます。

 一定の衝撃や危険性の判断を認識した際、強制終了されます】


「……(なるほど。夢の中で見るみたいなノリなのかな?

 何かあったら起こしてくれる機能付きは嬉しいなぁ)」


【展開中は対応した[レガシーピース]の観覧になりますが

 展開される映像と舞台は移動の制限が掛けられます。

 また、過去の事象の再現の為、干渉や変更などを行う事は出来ません】


「……(本当にイベント回想って感じなんだねぇ。OK、大体把握した!)」


 システムさんの説明はおおよそ解った。限定的な過去の再生かぁ。

なんかVRゲームみたいで楽しそうっちゃ楽しそうだ。

タイトルからして棘々しい予感がぷんぷんするのが怖いんだけど?

まぁ、ココでだらっと待ち惚けても仕方ない。いっちょ試して見ますか!


 私はステータスウィンドウを開いて[パーストポータル]の項目をクリック。

南京錠マークの無い唯一の選択肢〘隠蔽されし森人の罪〙を触れば

[レガシーピース]の一覧がずらり……という事はなく、一個浮かび上がる。


「……(システムさーん。それじゃコレ再生するよー)」


【[パーストポータル]〘隠蔽されし森人の罪〙を展開します。

 [レガシーピース]〘賢者の実験依頼〙を再生します。

 舞台展開中。現在時刻より地球時間200年程遡ります。

 詳しい年月日等は現段階では特定出来ません。

 現在、データを読み込み、構築中です】


「……(200年!? また、随分古いな!?)」


 私がぽんっとその[レガシーピース]の項目をクリックすると同時

視界が一気にブラックアウトしていく。身体がふわふわと浮かび上がる様な

感覚とともにしばらく漆黒の空間に私は投げ出されていった。

今から過去の再生が始まるのか。しかし、200年って言うとどれくらいだ?

江戸幕府があった期間位? いや、うーん、実感が全くわかない。

私はそんなに歴史のテスト良くなかったのか一般的な就学では

そこまで深く意識することはないんだろうか?


 そんなことを考えているとなんだか飛び出す絵本みたいに

背景がぼんっぼんっと絵が下から生えて書割の様に並べられていく。

その書割から押し出される様に家具や建物の内装が立体的になっていく様子は

本当に一枚の写真からぼこっと壁と家具が浮かび出る様な感じだ。

びっくりもしたが、これはこれで本当に再現してます感が半端ない。


「……(すっごいなぁ。ココはどこかの部屋かな?)」


 久しぶりに白以外の色のある木材を見る。

昨日一昨日と寝させて貰った小屋も今、軟禁中のこの小屋も

2つとも森にあったであろう白木が建材だったので本当に色味がなかった。

今、再生されている室内は木の茶色がメインで他の布の色など

派手な色は少ないが温かみのある暖色でまとめられている。

そうそう、木の家屋って本来こういう色味だよね。


「……(お、家具も出てきた)」


 大きなテーブルに椅子が4脚。彫刻が僅かに掘られたが

シンプルな作り感を感じさせ、いかにもロッジとか山荘の家具っぽい見た目だ。

そして、いよいよ人物の読み込みが始まった。

面白い事に床に側面からのショットが描かれたと思ったら

べりっと跳ね上がり、書割の様に出て立体的に膨らんでいく。


一人は……褐色とまではいかないが健康的に肌の焼けた

屈強な男性の様だ。ご老人とまではいかないが中々の渋みのある

中年より少し年上かな? えーと、こう言うのって初老であってたっけ?


「……(お、この人はエルフさんか? 此処のエルフとは別部族の人かな?)」


 その出現した初老の男性の耳はいかにもエルフ特有の尖ったものだった。

顔も身なりも綺麗だったから、実は美形な別種族ですなんて不意打ちは

無いかな? 実はオークなんですとか無いよね? まぁ、良いや。

しかし、リトモさんを始めとした〈封印の白き森〉のエルフとは肌の色味が違う。



 そして、次に現れるのはちょっと不健康そうな……お兄さんかな?

お医者さんが着てる白衣の様なジャケットに

金糸の刺繍が入ったローブを着てるね。なんか魔法陣っぽい。

フード付きみたいだしなんだか様式が随分違うかな?

あ、そもそもアレか。私が見たのはまだ森の中だけだ。

森の外の人はラナス君とコアタルちゃんしか見てないんだよね。

此処が田舎とか自然と共存系の秘境で、外は文明が発達してる可能性もある訳だ。


「……(ん? お肌がさがさ? ちょっとささくれてるのかな?

     不健康そうーっていうかヒビ入ってるみたい?)」


 お兄ちゃんは眼鏡を掛けていたが皮膚はなんだか凄いボロボロだった。

なんか病気なのかな? そんな事を気にしてると後ろを振り向けばもう一人。

部屋の片隅で立っているのは背の高い人……そして細いね、ウエストも腕も。

なんだか、柱とかナナフシみたいな印象を与える。

服はこっちもゆったりとしたローブを来ており、フードも深く被ってる。

如何にも刺客か切り札って感じのポジっぽいね。


「……(あんまし覗き込むのもフィギュアとか3Dモデルデータを

    カメラ操作駆使して覗いているみたいでちょっとやだなぁ)」


 そんな事を思いつつも多分、最後の人かな?

女の人っぽい……おぅふ、喪服だよこれ。しかも結構高そうだね。

めっちゃおフランスな感じで少しフリルがツイてたりする喪服ドレス?

頭のヴェールみたいなので目元半分を隠してる。〈トークハット〉って奴だっけ?

これ、キャラ立ちはともかく、公式な面会でする服装としてアリなのか?

そんな黒い装いはまるで引き立てる為だけの様に毒々しくも

燃える暗い紅色の髪を結っている。この人も肌しっろいなぁ。

なんだ、この世界は皆、美白ブームなのか。


「……(まーた、無駄に濃いのが3人並んでるなぁ。

いや、このおじ様もキャラは立ってんだけど)」


【データ読み込み終了。再生を開始しますか?】


「……(うん、お願いー)」


【[レガシーピース]〘賢者の依頼〙を再生します】


 システムさんの言葉と同時にその空間の時間が進み出す。

と言っても、鎮痛な面持ちをする初老のおじ様は腕を組み直し

少しうつむいた後、天を仰ぐ。瞼に手を置いて少し時間が経てば

テーブルに両肘を着いた後、意を決した様に口を開く。

なんだか、この動作だけでこの4人が話している事の

重要さと緊迫した空気が私にも伝わってきた。


「申し訳ありません。我々は人間の学とは違う言葉や思想を学んでおります。

 なのでお話を間違った解釈で受け止めてしまっている可能性があります。

 失礼かと思いますが確認させて下さい」

「はい。どうぞ」


 意を決した様に話し始めた初老のおじ様は畏れと敬意と

決意を秘めた様な面持ちで物凄い決断をしているのだろう。

脂汗をたらりと額から垂らしつつも尋ねていく様子は

見てるだけでもハラハラする。言い回しから見て

このお肌ガサガサのお兄ちゃんはそんなに偉いか強いのかな?

大変、口調と態度が及び腰で言葉も慎重に選んでいる。

まぁ、まともじゃなさそうなのは見ただけで解るけど。


「里の子ども達を貴方の開発する術式の実験体として差し出せ。

 そう仰る様にお話が聞こえますが、間違いでしょうか?」

「いえ、端的に言えばそうなりますね。その理解で合っています」


 ……………はぁ!? 前の! 前の文脈を! いきなりぶっこむなや!?

               第四十六歩「賢者の依頼」に続く


〈トークハット〉[正装][帽子]

中世の貴族などが着用していたとされる浅い円筒形の帽子。

黒いトークハットは葬儀の席などで見られており

亡くなった方のカトリック教徒の近縁の親族がヴェール付きのモノを被る事が正装とされる。


登場人物がこの帽子を被っているが現実世界では正装としては好ましくはない。

ただ、彼女の場合ある設定により顔を見られるのが好ましくない事と

彼女個人の悪辣な趣味により着用しているので印象はあまり良くない。

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