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第四十三歩「強制告白」

 後ろからエルフのご老人のヤクザキックで吹き飛ばされると

まるで踏み潰されたカエルの様に、壁へとへばりつくエルフのお姉ちゃん。

吹っ飛び方がおかしかったので多分、魔法とか使ったのかな?

あ、今のうちになんか重そうな石の刀は蹴飛ばしておこう。


「ッテェナ! ナニスンダゴルァ!」

「テメェハ 謹慎ダッテ言ッタロウガ、クソガァ!」

「今、殺ラナイデ、何時殺ンダヨ!」


 先日も居たエルフの族長っぽいご老人と壁から振り返れば

メンチを切り合いながらも詰め寄るエルフのお姉ちゃん。

ココだけ見ると見たこと無いがなんとなく任侠映画みたいだ。

一触即発とは正にこの事か。今にも殴り掛からんばかりの勢いだ。

むしろ、まだ殴ってない事にエルフのお姉ちゃんの成長が見えるよ。


「コヤツハ積極的二害為ス様子ハ無イシ、イケヅキノ件デモ

 色々ト試ス必要ガアルト言ッタジャロウガ!」

「……クッ、イケヅキノ為ッテナラ……ガッーー!」

「血ガ余ッテンナラ、狩リデモ行ッテ来イ! 

 ソレハ許可シテヤル! オマエガ居ルト話ガ進マン!」

「……ゥッッ!! ッッタァアアヨ!」


 族長とのデコをぶつけ合いながらの罵り合いを数度交わした後

エルフのお姉ちゃんは激昂の様な返事を返して、刀を拾い部屋から出ていく。

血の気多過ぎだよ、解かんねぇよ、何だよこの開幕ヤクザスタイル。

私は大きなため息を吐きつつも残った族長さんを見やる。

いきなり声を張り上げたのは流石に疲れたのか数度咳き込んでいた。


「目ガ醒メタ様ジャナ。嗚呼、ソレト驚カセテスマンカッタノ」

「……ぽぽっぽぽぽっ(それはもうばっちりと)」

「マ、座レ」


 老化した事とさっきのエルフのお姉ちゃんの事の両方の意味だと思うが

確かに目覚めて半分ボケていた頭には中々のハードパンチだった。

お陰でおめめパッチリだよ。ほんと、どんな目覚ましだよ。


 族長様は手に持っていた籐で作られた様な敷物を床に置いては

私に座る様に促していく。私は軽く頭を下げた後、その敷物に

正座をして座る。その座り方をじっと見た後、数度頷いては

族長さんは向かい側に座り込む。こう見ると相手は身長が小さい。

いや、木々のでかさで感覚が狂っているが私が普通にでかいのか。



「……(『確認』『リトモ』『同じ?』)」

「フム、ソウジャ。アレハ若返ル術。強クナルガ長ク使エン」

「ぽぽっ(なるほど)」


 〘霊話〙で確認してみると返答が返ってきた。

さっきから普通に話掛けているし、嘘でもなさそうだ。

制限時間付き若返りか。心も少年になってのたか。

まぁ、実際に〘魅了〙やら私のスキルに掛かってたし

声も少年判定でちゃんと聞き取れていたので本当に若返るのだろう。

くそ、永遠のショタとかそれはそれで素敵だが戻った時の

あのグロテスクっぷりは思い出したくない。


「サッキヨリ、〘霊話〙ノ感度ガ低イノ。心当リハアルカ?」

「……(んーっと、心当たり。あ、やっぱりアレか)」


 心当たりを尋ねられる。考えれば、すぐに答えに行き着いたのだが

あぅっと声が上がってしまった。くっそ、私の性癖……じゃない。

断じて無い。例のスキルの関係をバラさないといけないのか。

簡単にばらして良いのかというのもあるし、素で恥ずかしい。

『自分、男の子相手に超有利なんすよ』とか変態丸出しじゃないか。

が、ココで黙り込んでも事態は悪化する。此処はちゃんとしないとね。

清水の舞台から蹴り落とされろ、私の羞恥心!


「老人相手。細カイ気遣イ、要ランゾ」

「……(『多分』『少年』『効果』『得意』『スキル』『影響』)」

「……ァ~、ナルホド」


 沈黙。族長さんは髭を撫でつつも静かな空気が包む。

は、恥ずかしい。想定以上に実感として恥ずかしい。

ううっと私は帽子のツバを掴んで顔を隠していく。

サイズ的にどう頑張っても顔は隠れないし

そもそも今の私は隠れられるサイズじゃない。

くっと小さく笑いを漏らすリトモさん。ええい、恥ずかしいんだよ、悪いか!

頭の中がぐるぐると煮えそうになる中、なんとか話は進んでいく。


「気二スルナ。子供ニシカ見エナイ、聞コエナイ妖精。

 珍シクナイ。オ嬢サンハ珍シイガノ」

「ぽぽっ? ぽぽっぽぽぽっ(そぅ? ならいいのだけど)」


 フォローを頂き、私は帽子を掴んでいた手を離す。

なるほど、この世界には妖精さんも居るのか。可愛いんだろうなぁ。

ちょっと見てみたいかも知れないが、まぁそれはいい。

子供相手に特化した他の生物も居るというのは

存外に私の心の重しを軽くしてくれた。

しかし、そう考えるとこの世界の子供は色々と大変だな。

私みたいな化け物に日々狙われてしまうのか。

この世界の子育てほんとハードル高いよね。


「……(ラナス君達もまだ、あんなに小さいのに戦いに出てたし。

     まったく、ハードな事だよ)」

「サテ、後ハコレジャガ」

「……ぽっ? ぽぽっ?(ん? 手枷?)」


 族長さんが私の手枷を指差す。私に合わせて視線を下げた後

相手に見える様に手枷を前に出す。うむ、なんかこういう

言葉が無くてもなんとなく疎通が出来る感覚は嬉しいなぁ。

私の地味な感慨深さを気にする事なく

リトモさんがこんこんっと指先で手枷を突ついて、話を再開していく。


「コレハソノ気ニナレバ、壊セルジャロウ」

「……?(それって意味あるの?)」

「タダシ、壊シタ場合、ワシヤ他ノ者ニ解ル様ニナットル。

 マ、色々ト済ムマデ、大人シクシトクトヨイノ」

「……(『解った』っと。なるほどねー)」


 この手枷が要するに態度と安全の担保になっている訳ね。

作りがちゃっちぃとは言わないが結構緩い作りっぽいのはその為か。

なんというか、此処のエルフさんはほんっと喧嘩っ早い割に

無駄に慎重というか警戒心が高いのかな?

実力での排除が躊躇ない代わりに、入られる事に対して過敏だよね。

やっぱり、封印されてるっぽい何かがそんなに大切なのかな?


「デハ、コッチニ来イ。2~3確カメネバナラン」

「ぽぽっ(はーい)」


 族長は立ち上がって手招きをするので私も応じ立ち上がる。

結構ジェスチャーは私が見知っている形式とか形態に近いモノみたいだ。

うーん、最初に警戒してしまったが案外、鈍感力を働かせて

身振り手振りでやってたらもっと円滑だったのかな?


 そんな事を思って小屋を出ると其処の景色もまた幻想的だった。

高い木々に囲まれた開けた土地にはまるで吊り下げられているかの様に

木々の太い枝に小屋が乗っていた。地面に設置されている小屋も数件あるが

圧倒的に木の上での生活する小屋や渡らせている白い木の丸太が多い。

これは子供が遊びに行ったら面白そうな作りだ。

命綱無いと怖すぎて危険だろうけど、アスレチック感が半端ない。

残念ながら今の私が上に登るのはちょっと怖い。

ただでさえ、でかいし、まぁ当然重いだろうしね……重いんだろうなぁ。


「ぽっ~、ぽぽっ(お~~、すっごい)」

「珍シイカ? ヤッパリ、元々森ニ居タト言ウ訳デモ無サソウジャノ」


 そう言って、私が感心している様子をにこにこと眺めているリトモさん。

既に完全に私を見る目がただの子供相手になっている。

まぁ、エルフのお爺ちゃんって事だからそりゃ年齢差すごいんだろうけど。

そして、案内される開けた箇所には何やら燃やした後が残っているのと

ずらりと里のエルフ達が揃っていた。

先日、お話を試みようとしたご老人達や黒い線の入った若いエルフも居る。

一応に私に対しての警戒は強く、これは中々に空気が重い。


「サテ、皆ノ衆。例ノ奴ジャガ、今ノ所大人シイ。

 一応、〘霊話〙デモ対話ハ可能ノ様ジャ。今カラ軽ク、話サセテ見ルゾ」

「大丈夫カ?」

「私ハ念ノ為、チャンネルハ閉ジテオク」


 リトモさんの声掛けに里のエルフさん達はそれぞれのリアクションを見せる。

うむ、流石に全員一致でって訳じゃないのは当然かな?

慎重だったり、興味津々だったり、怖がったり、色んな表情が並んでいた。

リトモさんの目配せに私も再び瞼を閉じて集中する。

第一声だ、ちゃんと考えて簡潔に伝えないと。


「……(『こんにちは』『私』『敵』『否定』で通じるかなぁ?)」

「ム、オオッ、見エタノ。薄ッスラジャガ」

「あ、僕の方ははっきり見えました」

「アタシハアンマシ?」

「大丈夫カ?」


 エルフさん達は各々でリアクションを取る。

ああ、ちゃんとこんなのでも話を聞いてくれるというのは

なんて嬉しいんだろうか。もう、三日目位でコレなんだから

ちんたら森の中でずっと過ごしてたら相当参ってたと思う。

特に夜中に変な鳴き声もあったし、怖いからねぇ。

そう言う風に見れば、今の流れはかなり良い。そう考えよう!


「今、チャンネルヲ開イテ見エタ者は前ニ」

「ハイ」

「はーい」

「ウム」


 そう言って、何人か私の〘霊話〙が聞こえたエルフが前に出る。

老若男女通じているのはちゃんと言語が学習出来た結果かな?

いや、学習って程なんかした訳じゃないけど、経験値は溜まった訳だ。

冷静に考えて、1~2日で多言語が聞き取れるってほんと便利だね。

これ、数ヶ月かけて盗み聞きレッスンとかだったらもう泣いてたよ。


「デハ、次。ハッキリト見エタ者ハ手ヲ上ゲヨ」

「……(む、この流れは!?)」

「あれ? お前も?」

「僕は聞こえたけど、え?」


 私の〘霊話〙がクリアに聞き取れた者が手を上げさせる。

どう見ても少年しか手を上げない訳でエルフ達の視線が

ものすごい事になっている。これ、え?

この流れってひょっとして? うわ、ヒソヒソ声が!

上手く聞き取れないが、なんとなく怪訝な顔をされておられるよ!?

違う、違うんだって! これは仕様なの! 仕様なんだからね!?


「……フム。確定ジャナ。オマエサンハ少年ニ〘霊話〙ガ通リ易イ様ニ

 出来テオル様ジャ。ウ~ム、話ヲスル際ニ誰ゾ、宛テガウカ」

「えー? 何、このお姉ちゃんって」

「子供好き? 見た目の割に?」

「嗚呼、人間ノ貴族トカデ居タノゥ」

「エー、ナンデ男ノ子ダケナノ?」


 私は今、全力でこの場から逃げ出したい!!!

             第四十四歩「過失か冤罪か」に続く


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