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第四十二歩「消された既視感、見える既視感」

「……(記憶復活イベントとか無かった! 何も無かった!)」


 気を失っていたらしい私は目を覚ます。

中々に衝撃的な光景に化け物でも気絶出来るんだという喜びと

そこら辺耐性持っとけよと思う文句が綯い交ぜになって混濁していたが

意識の覚醒と共に辺りを見る。小屋だろうか?

木の床に毛皮が敷かれて私は転がされていた。

そう、特に気を失っている時の記憶はない。無いったら無い。

本当に無い、絶対に無い。良いね? 無かったの!!!


「……(って、おぃ。また手枷か)」


 木製の手枷が手に掛けられていた。加えて、胸元に包帯が巻かれている。

私は再生出来るだろうから申し訳ない気持ちで一杯になる。

こういうのも物資として貴重だろうに勿体無い。

布製じゃなくて木の皮かなんかで造られてるのかな?

ちょっと肌触りがゴワゴワする。うむ、まぁソレは良いや。


「……(軟禁状態って奴かな? あ、ってことは此処はエルフの里?

    お、ある意味行くのに手間が省けたかも。って私を運んだのか)」


 ああ、無駄に重かったろうに、申し訳ない。気を失ってなかったら

ちゃんと歩いていったよ。ただ、うん。逆に意識があるまま行ったら

メッチャクチャ警戒されていたかもしれないしね。

奇しくも以前思い付いた、『捕まって中に入る案』が実現してしまった。

さて、まだ私の意識が戻った事にエルフの人は気付いてないかな?


「……(今のうちに色々と新しく手に入れたスキルと情報を整理しよう)」


 多分、アニメで言う編集回的な役割が今、必要だと思うの。

ラナス君とコアタルちゃんとの戦闘で私は一杯スキルを覚えた。

ええと、まずはドコから見ていこうか。とりま、ステータスオープンっと。


【ステータス画面をオープンします。

 新規取得のスキル、称号等が溜まっています】


 おおぅ、システムさんにまで突っ込まれてしまったよ。

新規更新欄にはずらりとスキル名や称号が並んでいる。

さてさて、えーと、戦闘系は後でいいや。今すぐ戦闘はないだろう。

あ、ただ、コレはちょっと早く見ないとね。

おそらく、さっきの戦闘で能力が暴発していた筈だよ。


【〘蠱惑の少年愛〙Level2 [状態異常][怪異]

    未成年の男性の人類、亜人類を〘魅了〙状態にするスキル。

    恋愛的、性的な欲求錯覚ではなく、強い印象と興味を持たせる。

NEW 肌の露出を増やす、性的な言動を行って扇情した等の場合

    自動でスキル対象に発動されることもある】


「……(なるほど。って、ちょっと待て?!)」


 アレか、少年の性のときめきを強制的に引き起こすのか!?

これ、しかも私が無自覚にやった場合かなり危なくないか?

裸見られただけでもうそりゃ男の子なんてそうなるっていうのに

それがクリティカルで状態異常並の威力になっちゃうの?

淫乱じゃん! 私が誰でも誘う淫乱みたいじゃん!?

そりゃ、破廉恥言われますわ! コアタルちゃんの言う事合ってたわ!


「……(うう、憂鬱だ。けど、進まないと……あれ?)」


【記憶称号〘追想の百景〙

 現在の称号取得状態では詳細が表示出来ません。

 レガシーピースによるイベントの回想自体は可能です】


【英傑のレガシーピース〘映し身の湖面〙。

 現在、それに関連する[パーストポータル]が展開されていない為

 この英傑のレガシーピースを観覧出来ません】


【英傑のレガシーピース〘戦場ヶ原のその先に〙。

 現在、それに関連する[パーストポータル]が展開されていない為

 この英傑のレガシーピースを観覧出来ません】


 む、三連続でNGをくらってしまった。うーんっと此処らへんは

この[レガシーピース]って奴に対応している[パーストポータル]が無いと

駄目って事か。うわ、面倒くさくない? 再生位サクサクさせなさいよ。

きっとコアタルちゃんやラナス君達の過去や背景が知れたのかも知れないのに。

[パーストポータル]ってドコにあるんだろう? ねぇ、システムさん?

そこら辺、ヒントとか無いの?


【現在、〈パーストポータル〉〘隠蔽されし森人の罪〙のデータを収拾しています】


「……(マジで? てか、字面がなんか不穏だなおぃ)」


 システムさんの応えた事に私は驚きと共に考え込む。

森人ってのは多分エルフの事なのかな? まぁ、字面でそう推察出来る。

罪? 罪ってなんだろ。なんかやらかしたのかな?

うーん、もしかするとラナス君やコアタルちゃんみたいに来た人に

乱暴してた過去があるからそれとか? なんか田舎の悪い習慣みたい。


「……(う、なんかこっちの称号もロックされてる)」


【神秘称号〘母なる者の面影〙

 現在の称号取得状態では詳細が表示出来ません。

 神秘スキルの発現、使用等は問題ありません】


 〘母なる者の面影〙は解らないか。なんか、いきなり取れたけど

これは取れた時の状況が異常っぽかったからなぁ。

前のラナス君達と初めて見つけた時みたいに頭痛もあった。

まぁ、私自身がアノときはもうそんな状況じゃなかったが

これの取得も本来とは違ったイレギュラーなのかも知れない。

今までのスキルと方向性や色合いが違い過ぎるもの。

兎に角、この神秘スキルってのが取れる称号って認識にしとこう。


「……(ただ、こっちのスキルはちょっと好き。

    本来は使わないで事が治められれば良いんだけどね)」


【神秘スキル〘愛念の抱擁〙[神秘][状態異常]Level1

NEW 対象を抱擁する事で愛情を伝え、対象の戦意を奪う。

    その際、自身の魔力、体力を分け与える事も出来る】


 こっちのスキルは要するにぎゅっとハグをして

戦いを止めさせるという事なんだろう。〘魂削りの愛撫〙と一緒で

私はとことん接近したり、触らないと効果が出せないんだな。

それ故に視線を合わせて怖がらせたり、〘魅了〙でこちらに寄せたりという

スキル構築をしているんだろう。私の肉体がやたらタフにできているおかげで

痛みはあるだろうが近付けて、素早い相手には〘捕獲機動〙で追いかける。


「……(無駄にシステマチックだな、私のスキル)」


 正直、解らない事ばかりではあるが段々とやれる事が解ると

本当にこの体とスキルは一定の指向性を持っている事が実感出来る。

コアタルちゃんの戦闘みたいに変幻自在とは真逆ではあるが

私はあんまし考えて動くというか、未だに戦闘慣れはしてないので

こういう応用は効かないがやる事の方向性が狭いのは大変助かるよ。


「……(さて、エルフの人達とも仲良くしないと)」


 私は決意を新たにする。ラナス君とコアタルちゃんとの戦闘は大変だったが

おかげで私も自信が持てた。あんなに七転八倒しつつもちゃんと最後は

解ってくれたし、エルフの少年……あー、なんか老人になっちゃったけど

あの人達ともお話が出来る様になったのは大変良い。

よし、未来は明るいぞ私。ファイトーーー!


「ン? ソロソロ起キタカ?」

「ぽっ、ぽぽぽっ(あ、はーい)」


 ふと扉の向こうから声がする。監視役の人かな?

うん、手枷とかされてるのもあるし、まだまだ全面的に

信用された訳じゃないだろうしね! 此処からの行動で私の今後が

大きく決まる訳だ。しっかり友好的なアピールをしないと。


「……ヨシ。今ナラ誰モ居ナイナ?」

「ぽっ? ぽぽぽっーーー!?(え? えええーーー!?)」


 扉を開けると前日に私に矢を浴びせまくった黒い線の入った

エルフのお姉ちゃんが居た。手には明らかに自分の身長の2/3位のサイズはある

大きな鈍器みたいな……刀? 石で出来た刀っぽいのを持っている。

あ、やばい。この子の目は完全にぶっ殺しに掛かってる顔だ。

唇とか歪めまくってるし、これヒャッハー成分満載だよ!?

え? アレか。急激に老化したから解らなかったが

先日の出くわしたのと同じ部族だったかあのエルフ達。

まぁ、どのくらいの森の広さか解かんないけど

そんな部族が乱立するのは考えづらいもんね。



「イケヅキ 仇 ブッ殺ス!!!」

「ぽぽっ、ぽぽぽぽっ(まままま、待ってー!?)」


 私は手枷を前に出す様にして首を左右に振る。

いかん、このお姉ちゃんブチギレ過ぎ。なんで怒ってんの?

あ、同じエルフって事は最初の少年エルフ君が今大変なの!?

いや、殺害人数確認してるから殺しては居ない筈。

エルフのお姉ちゃんは手枷を見るとにこっと微笑む。

あ、これは……たすか……いや駄目だコレ!?


「オゥ! ソノ手枷ブッ壊シテ、殺シ合イダ。

 英傑二人殺ッタソウダガ、アタシは負ケナイ!!!」

「……(やっぱり、そうですよねーー!?)」


 表情と流れから絶対平和的な方向無理だと思ったもん!

ひぃっ!? まだ、バトルパート続くの? あの二人倒したから

ようやく終わったと思ったのに、もうそっちお腹一杯だよ!

ラブとまでいかなくていいからせめて日常路線戻ろう?

洗濯とか掃除とか魚捕まえるとかさせてよぉ!!


「行クゾ、オラアアアアッ!!!」

「ぽぽっーー、ぽぽぽっ!?(ひぃっーー、助けて!?)」


 そうして、石の剣を持って振りかぶるエルフのお姉ちゃん。

思わず目を瞑りそうになる中、その空気を壊す怒声が響く。


「テメエハ何ヤッテンダ、クソガァア!」


 あ、この流れ昨日見たわ。

          第四十三歩「強制告白」に続く

[パーストポータル]運用概要

転生した際に置いて、情報の取得というのは存在の存続に関わるものである。

しかし、情報伝達及び情報保存が難しい場合は往々にして発生する。

特に過去の情報、情勢に関しては口伝も難しく、また文章が残っている場合も

古文の文字、文法等で遺されている場合はその解読が必要になる。


それら必要要素のハードルにおいて、存在保全が難しくなる事を考慮し

特定の情報源の発生地に[パーストポータル]を設置する。

[レガシーピース]の取得を用いて過去情報の引き出しを可能とし

対象に情報面での支援をし、目的への遂行を目指すものである。

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