↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/127

第三十一歩「月までご一緒?」

「ほぉ、若いのにやりなさる」

「流石、噂の『救世を遣わす神の英傑』だけはあるのぅ」


 爺口調の少年エルフ達は相変わらずのんきなリアクションをしているが

私は毛皮が開け落ちぬ様に掴んだままソレを見つめていた。

川が確かにそこにはあったのだ。それは粘液に飲み込まれ、まずは龍の頭を作り

宙空へ浮かんだと思えば、其処から川を引き剥がす様にうねっていく。

頭の所には筒を横に咥えたコアタルちゃんが丁度髭の位置辺りで沈んでいる。

にょろっと筒の左右から出ていた触手が本当に龍の髭の位置へとなっている。

水龍の頭は上空を旋回しては水のうねりとを形成したまま

地面から引剥した川の水を龍の胴体へと整形していく。


「ぽぽっぽっ、ぽっ(でけぇな、おい)」

「あ、アレわしらの方へ来るな」

「おー、そりゃ大変じゃの」


 あ、えーと付け加えるなら西洋のドラゴンじゃない。

中国とか日本でのイメージの龍だ。鱗や足は見えないので

本当に水流に龍の頭がぼんっとのっている様な形ではあるが、うん。

それが宙空で螺旋を描きながら昇りきった後、真っ逆さまに降りてくる。

単純に水の塊がぶっ飛んでくるというか滝の直撃が少年エルフ達を襲う。

河原の石を水しぶきと水圧でふっ飛ばし、そのまま地面をえぐる様な

水龍の突進は続く。エルフ達が何人かふっ飛ばされてるが

なんだかそれはそれで楽しんでそうな無邪気さを表情から感じられる。

ほんと、此処のエルフはよくわかんないよ。


「って、わーけで! 僕がぽぽぽっな御姉さんの相手だね」

「ぽっ、ぽっぽっ?(えー、そうなるの?)」

「一応、エルフの子がやられちゃっているらしいから。

 ちょっとお仕置きさせてもらうよ?」


 くっ、お仕置きとか素敵ワードを並べつつもラナス君が斧槍を構えている。

確かに背は小さいが鎧はしっかりした作りっぽいし、コアタルちゃんが

実演してくれた様に下手に素手で殴ってもこっちが痛いだけだ。

私は石を掴みつつもへっぴり腰のまま、相手と対峙する。

毛皮が落ちそうで怖い。そして、何よりもコレは困った。

相手の兜が結構しっかりした作りだから視線というか目の位置がよく見えない!

まぁ、冷静に考えて矢だの石だのが目に入ったらそれこそ兜の意味が無いから

構造的に視界は確保しつつも、眼が狙われにくい様に出来ているんだろう。


「あ、言葉解らないかな? 取り敢えず、服どうぞ。

 僕の騎士道はそーいうのを好まないからね! 終わるまで待ってるよ!」

「ぽぽっ? ぽぽぽっ!(マジで? ありがとう!)」


 そう言って、ラナス君は斧槍で河原に突き立てられた〈鋭い枝〉と

私のワンピースを指して頷いてくれた。うむ、紳士で良い子だよ。

さっきまで少年エルフの一人が見張っていたが

流石にコアタルちゃんの水龍に対応してる為、忘れ去られた様に

ぽつんっと置かれている。ラナス君が対峙してなければ取りに行きたかった所だ。

まぁ、その提案中に視線が私の胸部ガン見じゃなければ、もっと良かったんだが。

当人も〘魅了〙状態であると色々とやりづらいのだろう。

私はペコペコと数度、頭を下げつつも服を手に取る。


「ぁー! 服着せとる!」

「いや、あれはアレで味わいがあるかの?」

「おーい、そっち行ったぞー!」


 くそ、なんでこっちの少年エルフ達は余裕なんだ。

コアタルちゃんの水龍に喰らったり避けたりを繰り返しながらも森の中に隠れたり

そこから出て斬りつけたりとヒット&アウェイで撹乱している。

水龍はちょっとやそっとの斬撃ではすぐに形を戻して再生するのでキリがない。

コアタルちゃんも多分、エルフなのかな?

木にぶつかる時は若干、躊躇しているのが見えるので

本心では木々を傷つけたくないのかも知れない。


 ラナス君がお爺ちゃんとか言ってたが、どういう事なんだろうか?

族長とか言ってたけど、こんな少年たちが里を治めていると言うのは

ちょっと考えにくい。そんな事を考えつつもなんとかワンピースは着れた。

まだ、濡れている為、肌に張り付いてるし、べちょべちょしている。

乳首が透けたりしてるかもだが、もうそんなの気にしてられない。

向き直るとラナス君が改めて、一礼をして名乗りを上げた。


「それじゃ、改めて。百英傑が一人!

 ラナス・ノタカハ! 参るよーーーー!」

「がぁああっ!」

「ぽぽっ、ぽぽぽっ!(ひぃっ、やっぱ怖いって!)」


 そう言って、高らかに宣言をしつつもラナス君は私へと切りかかってくる。

一応、私も化け物カテゴリーだったとは言え、人様に刃物やら武器向けるのに

躊躇が無い事から、やっぱり彼も戦士と言うか武を生業にしてる人なんだろう。

〈鋭い枝〉では無意味に真っ二つだ。私は石を手にとって相手の斧槍を

殴りつける様に弾こうとする。うう、やっぱり刃物は怖い。

矢を射られた時にもうある程度敵意や攻撃には慣れる事は出来た。

それでもあてくし女子な訳で、刃物どころか斧槍で斬りつけるとか

事案どころの騒ぎじゃない事態にはどうにも逃げ腰になってしまう。

おまけに下のグリフォンは私に爪を立て、堅いクチバシをぶつけてくる。


「……(あ、危ないぃ!)」

「アポロ! そのまま、押し倒すよ!」

「がぁああっ!」


 なんとか、グリフォンの頭を掴んでいるが突進力は流石、騎士様か。

なるほど、グリフォンの爪とクチバシでのしかかって相手を倒した後

長いリーチの斧槍で相手を攻撃するってスタイルなのかな。

くっ、ちゃんと考えられてるなぁ! いや、命のやり取りだから当然か。

ちなみに私がそんな冷静な解説をしていられるのは

その抑えつけたクチバシへと注意が向いた中、大きく掲げられた斧槍が

私の肩目掛けて振り下ろされようとしているからだ。走馬灯という奴だろうか?

明らかにピンチに直面して物凄く頭が回った結果の産物だ。


「……(ひぃっ、痛そう、怖い、怖い、怖い、怖い)」


 そして、そんな無意味な考察で、現実は変える事は出来る訳がない。

思わず目を閉じ、身体を屈ませては痛みと衝撃に備える。

しかし、数秒経ってもその斧槍から来る痛みは感じられなかった。

恐る恐る目を開けると振り下ろす事に躊躇するラナス君は斧槍を

掲げたままの状態になっている。え、どういうことなの?


「あうー、どうしよう。あの状態だとコアタルは声聞こえないんだよね。

 け、けどこんなに弱い者に武器を向けるのは騎士としてー!」

「ぽぽっー(えぇっー)」

「魔獣とか戦士さんって訳じゃないからねぇ……うー、けど。

 死霊さんならちゃんと浄化して上げたほうがいいし?

 いや、ちゃんと触れるって事は実体があるからそういうのでも無いし?」


 思わぬ展開だった。私があまりにも動きが素人過ぎらしく

むしろ、ラナス君の方が困っているという状態らしい。

彼の中であっさりと抑えつけられ、そのまま心臓なりを突くなり

切りかかって致命傷という流れなのだろうが、それが逆に上手く行き過ぎたのだ。

私がグリフォンの爪やクチバシに必死にもがけばもがく程に

それはただ背がでかいだけの戦いを知らぬ女が襲われている図に過ぎない。

私本人ですらよく解ってない〘八尺様〙という存在に対して

ラナス君も大変困惑しているご様子。グリフォンさんも後ろを見て困っている。


「……(何とか戦わない方向に持っていけないものかなぁ)」

「うー、うー、仕方ない! これは一気に決めて、コアタルを助けるよ!

 峰打ちするから死なないでね!」

「ぽっ、ぽぽぽっぽっ(んな、無茶なぁ)」


 斧槍に峰打ちとかあるんだろうか? 単純に鈍器として叩かれたら

生身の私は大変危ないと思うんだ。しかし、そんな事を伝える事は叶わず

グリフォンが私の胸元を踏みつけては、大きく後方宙返りをして距離を取る。

うー、折角洗濯したのに見事に肉球マークが着いてしまった。

手綱を握りしめては大きく斧槍を掲げたラナス君。必殺技を使うっぽいよね?

もう服を汚したくないので何とか止めたい。止めてくれない?


「行くよ、アポロ! 騎乗技〘月兎飛翔ラビット・ゴー・ホーム〙!」

「ぽっ。ぽぽぽぽぽっぽぽぽっ!?(あっ。それはだめえええええええ!?)」


【相手の[ムーブ]系スキル発動を確認。伝承スキル〘捕縛機動〙を発動します】


 そう、名前の響きで直感した。まるでロケットの様に大きくグリフォンは

垂直に飛翔する。原理とかどうなんだろうとか関係ない。

高く飛び上がっては先程と同じ様にぐるっと背面宙返りをして

そのまま突撃する予定だったのだろう。

しかし、ラナス君は宙空を一回転した後、驚嘆の声を上げる事になる。


「……え?」

「ぽぽぽぽっぽぽぽぽぽっーーー!(いやぁああああああああーーー!)」


 そう、私もそれを追いかける様に空を舞っていたのだ。

            第三十二歩「どうせ落ちるなら、恋でお願いします」

騎乗技〘月兎飛翔ラビット・ゴー・ホーム〙[騎乗][ムーブ]

百英傑ラナス・ノタカハのオリジナル技。

自身の魔力での急速浮上、更にそれが終わると同時に

騎乗している〘ライディング・グリフォン〙のアポロによる追加の魔力加速飛翔。

その際に一度宙返りをして、再度狙いを定めた後に最後にラナス・ノタカハによる魔力による

速度加速でリーチと加速による突撃突進の威力を高める戦技。


三段階による魔力放出の加速と瞬時の突撃までの助走距離を稼ぐなど

本来、騎兵として突撃に取らなければいけない距離を上下の距離を用いる事で代用し

狭い空間や接近戦中でも斧槍による突撃をする為に発案された。

ただし、制御が大変難しいので開けた上空がある箇所ではないと使用が出来ない。


ちなみに技名は〘ウェア・ラビットリア〙は昔、月に住んでいたという伝承に寄るものであり

この技を発展させて、月まで行ってみたいらしい。

技名の構成に関しては本当はもっと長くしたり構成の詰めも必要なのだが

そもそもラナスの頭があまり長い文章を覚えられない為、簡単な単語の羅列になっている。

文字は相方に教えて貰って練習済だが時々「翔」が書けない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。