↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/127

第二十五歩「いざ、川へ洗濯へ」

*投稿は毎週火曜、金曜の午前12時になります

「ぽぽぽっーーー! ぽぽっ、ぽぽっ?(いやーーー! 絶対、臭ってない?)」


 ダメダメ駄目駄目駄目駄目だめぇえええ!?

待って、三日だよ? 三日、しかも歩いて走って森の中で

汚れに汚れている訳ですよ! ここここ、これは不味い。

お風呂! ああ、けどお湯が作れない。湯がはれない!

そもそも、湯釜もないし、水も汲まないといけない!

うわあああ、ほんとどうしよう。汚い、絶対汚い!

み、水洗いでもしないと! そうだ、川! 川なら多分、洗える!


「……(ほ、ほら。桃太郎でもお婆さんが川で洗濯とかしてたし!)」


 何となく薄ら覚えで出てくる絵本の話が頭をよぎる。

よし、人生初の水浴びですよ。正確には人生じゃないけど!

しかし、海水浴とか行った事はあるかも知れないけど

まさか、体を洗いに川の水に入るとか凄いキャンピングじゃない?

いや、多分、此処に住んでる人の殆どがそんな感じなんでしょうけど。


「……(水洗いで大丈夫かな? 泡立てなくて平気かな?)」


 自分の腕や手首などの匂いを嗅いでみる。うっそ、意外とスンスンって

鼻で匂いを嗅ぐ音って聞こえるのね!? 結構びっくりした。

しかし、石鹸とか無いよな。ていうか、石鹸ってどうやって作るんだっけ?

なんか、油を固めるみたいなのは思い出したけど、詳しくは解らない。

うわー、そもそもタオルも無いじゃん! 着替えも無いじゃん!

く、これは晴れている内に現地で服を干すしか無いよね!?

よ、よし! 仕方ない。毛皮は持っていこう。バスタオルにはならないけど!


「……(えーと、手洗いってどうしたらいいんだろ?)」


 体を洗う事もそうだが、今、三日目を迎えるワンピースもそうだ。

一度位、水洗いでもしておくべきだろう。部屋で干す訳じゃないから

生乾きの匂いは気にしなくて済むが……うう、天日干しじゃ

シワになっちゃうかな? しかし、背に腹は変えられないよ。

うー、鍋でもあれば、アイロンの代わりにはなったかもだが

そもそも、火すら起こせないのだからお話にならない。


「……(あ、そういえば洗濯板みたいなのはあった気がする!)」


 そういって私はステータス画面の灯りを頼りに道具が積まれた部分を漁る。

うん、多分コレかな? 大根下ろしじゃないだろうし、これであっている筈。

薄い木の板に波が打っている。薬局とか百均で売っているのとは違い

いかにも手彫りな作りが、逆に職人のプレミアム感を感じる。

後は、水を汲んでくる用だろうか、木と縄で作られた桶も見つけられた。

お墓とかに置いてそうな作りの奴で、持ち手の柄が長いので私でも使い易い。


「……(おー、これはいいものなのかな?)」


【〈洗濯板〉と〈木桶〉を発見しました】


 私は手に持って考える。で、具体的にどう洗うかが解らん!

ええと、あれか。揉めばいいのか? って、服は痛まないの?

生地とか破けないのこれ? わ、解らんが何となくやるだけやってみよう。

文明文化の叡智はあんまし間違いがない筈だ、多分!


「……(流石に誰が使ったか解らん石鹸は嫌だし、スポンジとか無いよねー)」


 私は道具箱をひっくり返しては他の物を漁って見る。

確かスポンジって出来たの最近だったから、昔の人は何で洗ってたんだろうか?

あ、えーとなんかご老人の世代はヘチマを使ってたってのを聞いたよーな。

しかし、食料の木の実すら見つからないのに、ヘチマを見つけられる気がしない。

うう、こりゃ大変だ。まぁ、毎日は無理として定期的に水浴びはしないと。


「……(こう、匂いって大変じゃないですか)」


 私はただでさえ未確認、不確定な存在だ。

印象として『臭い』って付いたら、私のガラスハートが耐えられる気がしない。

近づくとちょっと眉間にシワが酔ったり、何となく避けられたり

ヒソヒソと『あの子臭うよねー』とか言われでもしたら。

それもあの美少年のエルフとかエルフとか美少年とか辺りに言われたら!


「ぽぽっーーー! ぽぽぽっーーー!(いやーーー! それはいやーーー!)」


 両頬に手を当てて、左右に頭を触れば、黒髪がぶんぶんと揺れ乱される。

それが鼻先を僅かに掠めた時に『あれ、髪の毛も洗わないと臭うんじゃね?』

と思い至るともう、私は止まる事ができなかった。

謎の強迫観念に捕らえられ、私が道具箱や小屋の中を漁りに漁り続ける。

その後、何も見つからなかったのでワンピースを脱いで

洗濯板の使用シミュレーションもやってみた。

実際、現場で脱いで試行錯誤は危な過ぎるからね。


「……(おお、まぁ日が出てからと思ったけど、もう朝だよ)」


 そんな七転八倒どころか、転がり倒した深夜であったが、朝を向かえる。

小鳥のさえずり、朝の日の出、顕になった小屋の惨状。散らかし過ぎだろ、私。

朝ごはんを求める程お腹も空いていない。昨日、散々木を枯らした所為だろうか?

流石に散らかったままという訳にはいかないので片付けをしてから出立するか。

箱に道具を詰め直したりそれを棚に戻したりするだけでも存外奇麗になった。


「……(〈鋭い枝〉先輩はあれだ。物干し竿になって貰おう。うん、そうしよう)」


 私は小屋に置いていたつっかえ棒代わりの〈鋭い枝〉を手に取り

毛皮を畳んで脇に抱え、〈木桶〉に洗濯板を突っ込んでは川を目指す。

うむ、なんか本当に川を往復する生活だね。

昔の人もこんな感じで川や井戸を往復していたのだろうし

多分、前世でもそーいった地域の方が多いんじゃないかな?

機械も電気もない生活をすると、改めて先人のインフラの偉大さを痛感する。


「……ぽぽっ! ぽぽぽっぽっ!(いざっ! 川に洗濯へ!)」


【行ってらっしゃいませ】


 システムさんのお見送りボイスをぐっと心に刻み、私は再び川へと向かう。

朝日が登りつつある頃合いの森。冬だったら寒かったかも知れないが

幸い気温、天候に恵まれている。後はそもそも寒さや暑さに耐性はある様だ。

うむ、そこら辺は化け物ボディに感謝なのかな?

今の状態で風邪とか引いたら、確実にくたばってるだろうから大変助かる。


「……(ほっ、着いた。意外と獣と遭遇しないもんだねぇ)」


 河原は着くとそこには動物さんの先客は居なかった。

道中ばったりと動物とであったり、草食動物が先に水とか飲んでるか絵面を

想像していたが現実はただのぼっちの朝の散歩で終わってしまう。

うむ、最初のオオカミさんとのエンカウントで警戒されてるのかな?

動物さんネットワークですら私は要警戒対象なんだろうか?


「……(いや、実際、私も動物だったらそーするかな?)」


 私は〈鋭い枝〉を斜めに突き刺して、それに毛皮と帽子を掛ける。

さて、いよいよ洗濯な訳です。見慣れたというか昨日から何度も

出没している川辺を眺めては周囲を警戒する。

あれ? そー言えば、昨日この場所でスキル使った時に

服と帽子も再生してたけど、匂いとか除菌もしてくれるのだろうか?

なら、そもそも洗濯の必要はあるのだろうか?


「……(いやいや、これは違う。着たきりスズメが嫌だという気分の問題だ)」


 私は頭によぎった疑念を振り切る様に首を左右に振る。

そうそう、気分の問題だ、気分。仮に必要無くても私は嫌だ。

ちゃんとお風呂入りたいし、服も洗濯したものを着たい。

ワガママかも知れないが、女子として其処は譲りたくないのだ。


「……(さて、洗濯から始めますか!)」


 いよいよ、私の化け物生活初の洗濯が始まるよ!

正直、こんなんで覚悟と気合を入れ直すのはどうなんだろうか?


                 第二十六歩「百の英雄譚 Episode3 "雄弁に、誠実に"」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。