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道草日記  作者: 西村系
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12/15

一緒にいられたなら

「セミ。死んだ人は、そのあとどうなると思う?」

「…どうしたんだハチ」


 俺の頭を離れない、一つの疑問があった。

 それはロミオとジュリエットや、あの死んだおばさんのせいではない。

 もっと前に起きたことだった。


「ハチ…俺が思うのは、死んだ人は寝ていると思う。だから永遠の眠りと呼ぶのさ」

「…」

「目を閉じて、毎夜寝るように、彼らも意識がないまま眠っている。暗闇すら見えない、俺らには想像もできないところで」

「セミはそう思うんだね。俺も、それが楽だと思う」

「あんまり考えすぎるなよ」


 だれも、死に対して完璧な答えを持ってるわけじゃない。

 セミも、想像した死後を俺に語ってくれているだけだ。

 でも、その想像は、俺のと妙に合う。


「ありがとうセミ」


 セミはまだ病院の中にいた。

 明日になれば車椅子か、木製のアレをもらって骨折した足を家で治療できるようになる。

 そうすれば、彼はいつものように配信を続けることができる。


 毎日、頭によぎってしまうある出来事がある。

 お父さんだった。

 お母さんは、誰かを失うことは簡単じゃないが、いずれ時間が心の傷を治してくれると昔言ってくれた。

 でも、俺はそう思わない。

 一度傷ついた心はどれだけ時間がたっても、その傷を忘れることも、その傷を治すこともできない。

 人にできることは、その傷と毎日暮らし、痛みに慣れていくことだと思う。


 この病院の廊下を歩いていると、やけにすべてが大きかったころを思い出してしまう。

 父親は、痛みを我慢して何日も病院に来ることも考えていなかった。

 俺たちは、彼の苦しむ毎日に寄り添うことも、無理矢理病院に連れ込ませることもできなかった。


 彼が倒れた日には、もう遅かった。

 

 母親が葬式の日に泣いていたのを思い出す。

 セミは、何が起きているのか、まだよく理解できない顔で黒い服を着て、ほかの大人たちと一緒に雨の中で立っていた。

 俺は、お母さんに質問をした。

 

 なんでこんなに早く、彼は死んでしまったのかって。

 母親は答えることができなかった。俺を強く抱きしめて、もっと泣いた。

 あの時は、俺が彼女を泣かしてしまったと。


 でも、その質問は今でも消えることはない。

 なんで一緒にもっと、いられなかったのだろうかって。

 毎日、静かになった部屋の中で考えてしまう。

 

 彼の墓場を、俺は見に行っているわけじゃないし、お盆の間に様子を見たり、掃除をするわけでもない。

 でも、考えてないわけじゃない。

 あんな、あんな大きくて重たい石に名前を刻まれても、少なくとも生きている俺は嬉しくない。

 薔薇と一緒に、彼をきれいな緑に囲まれたところに。

 燃やすんじゃなくって、埋めたかった。


「ハチ! ハチ! 今からカードショップでニセカード作ってヲタクどもを騙しに行くんだ! よかったら行くか?」

「あ、ナナフシじゃん!」

「ちーっす!」

「前のオラクルについてはごめんね、ドブに落とすことになっちゃって」

「大丈夫だよ、呪われてたんだし。カードショップいく?」

「うん、いくいく!」


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