一緒にいられたなら
「セミ。死んだ人は、そのあとどうなると思う?」
「…どうしたんだハチ」
俺の頭を離れない、一つの疑問があった。
それはロミオとジュリエットや、あの死んだおばさんのせいではない。
もっと前に起きたことだった。
「ハチ…俺が思うのは、死んだ人は寝ていると思う。だから永遠の眠りと呼ぶのさ」
「…」
「目を閉じて、毎夜寝るように、彼らも意識がないまま眠っている。暗闇すら見えない、俺らには想像もできないところで」
「セミはそう思うんだね。俺も、それが楽だと思う」
「あんまり考えすぎるなよ」
だれも、死に対して完璧な答えを持ってるわけじゃない。
セミも、想像した死後を俺に語ってくれているだけだ。
でも、その想像は、俺のと妙に合う。
「ありがとうセミ」
セミはまだ病院の中にいた。
明日になれば車椅子か、木製のアレをもらって骨折した足を家で治療できるようになる。
そうすれば、彼はいつものように配信を続けることができる。
毎日、頭によぎってしまうある出来事がある。
お父さんだった。
お母さんは、誰かを失うことは簡単じゃないが、いずれ時間が心の傷を治してくれると昔言ってくれた。
でも、俺はそう思わない。
一度傷ついた心はどれだけ時間がたっても、その傷を忘れることも、その傷を治すこともできない。
人にできることは、その傷と毎日暮らし、痛みに慣れていくことだと思う。
この病院の廊下を歩いていると、やけにすべてが大きかったころを思い出してしまう。
父親は、痛みを我慢して何日も病院に来ることも考えていなかった。
俺たちは、彼の苦しむ毎日に寄り添うことも、無理矢理病院に連れ込ませることもできなかった。
彼が倒れた日には、もう遅かった。
母親が葬式の日に泣いていたのを思い出す。
セミは、何が起きているのか、まだよく理解できない顔で黒い服を着て、ほかの大人たちと一緒に雨の中で立っていた。
俺は、お母さんに質問をした。
なんでこんなに早く、彼は死んでしまったのかって。
母親は答えることができなかった。俺を強く抱きしめて、もっと泣いた。
あの時は、俺が彼女を泣かしてしまったと。
でも、その質問は今でも消えることはない。
なんで一緒にもっと、いられなかったのだろうかって。
毎日、静かになった部屋の中で考えてしまう。
彼の墓場を、俺は見に行っているわけじゃないし、お盆の間に様子を見たり、掃除をするわけでもない。
でも、考えてないわけじゃない。
あんな、あんな大きくて重たい石に名前を刻まれても、少なくとも生きている俺は嬉しくない。
薔薇と一緒に、彼をきれいな緑に囲まれたところに。
燃やすんじゃなくって、埋めたかった。
「ハチ! ハチ! 今からカードショップでニセカード作ってヲタクどもを騙しに行くんだ! よかったら行くか?」
「あ、ナナフシじゃん!」
「ちーっす!」
「前のオラクルについてはごめんね、ドブに落とすことになっちゃって」
「大丈夫だよ、呪われてたんだし。カードショップいく?」
「うん、いくいく!」




