幕間1『打ち上げミッション─BAR Velvet─』
──午後八時。ここは東京都✕✕区にあるお店。
BAR【Velvet】《ベルベット》
元警察官であるマスター・山崎が営む店だ。
【Zero】メンバーの行きつけでもあり、
警察関係者の常連も多い────
「うぉっほん!
改めまして諸君、先日の任務お疲れさん。
無事、任務達成できて、俺も鼻高々だ!
今日は任務達成の打ち上げだ!
好きなだけ飲んで食って楽しんでくれ!
みんなグラスは持ったか?
それでは任務達成を祝して──乾杯!」
「「「「「「かんぱーーーーい」」」」」」
柏木の音頭を皮切りに各々お酒を飲み始めた。
心春はカシスオレンジ、翔はレモンサワー。
その他は皆ビールを手に取り乾杯した。
テーブルにはオードブルとは思えないほど豪華な料理が並んでいた。
「山崎さん、今日は貸し切りにしてくれてありがとうございます。いつも本当に助かります」
柏木は昔の上司でもあるマスターにお礼を述べた。
「ほっほっほ、全然構わないよ。
今日は月曜日だからほとんど客も来ないし、むしろ助かるよ」
御年68歳。
警察を定年退職後、すぐにこの店をオープンして、早八年。
今では警察関係者の常連客も多く、この店で騒ぎを起こせば即警察沙汰になる。
「それに実際、働くのは彼らだしね」
ベルベットには三人の従業員、「白洲一徳」と「知多慎也」、女性の「響京香」がいる。
今日のシフトは白洲と知多のようだ。
白洲がお酒を作り、知多がテーブルへ運んでいく。
♪ウイスキーガオスキデショウ♫
♪モウスコーシシャベリマショウ♫
店内のBGMを聞きながらアリスがメニューを見る。
「アタシそろそろ赤ワインにしようかな」
アリスがそう言うと知多が確認する。
「かしこまりました。
年代や産地のご希望はございますか?」
「んー、特にないからオススメの赤ワインをお願いできるかしら」
知多は白洲に伝え、準備を始めた。
「心春はワイン飲まないの?」
「わたし、まだお酒は甘いのしか無理なんです。
どちらかと言えば弱いですし……」
知多がグラスへワインを注ぎ、お辞儀をする。
アリスがワイングラスを軽く回し、口に含んだ。
「アリスさんはワインも画になるしカッコイイですね……。うらやましいですぅ」
「ま、まあね、心春もいつか飲めるようになるわよ」
少し照れながらアリスはワインを優雅に口へ運んだ。
目線を正面に移すとアリスは肩を竦めた。
「でも一緒に飲んでる相手がこいつらだからねー、色気も雰囲気も無いようなもんだわ」
対面でジョージがひたすら肉を爆食し、ビールを流しこんでいる。バクバク
翔はチップスやチョコなどお菓子系ばっかり一人で食べている。モグモグ
相津とレオがカウンターにいる柏木の元へ取り分けた食事を持っていった。
「ねぇ、マスター。今日は京香さんいないの?」
レオが尋ねる。
「ごめんねぇ、今日は月曜日だから京香ちゃん休みなんだよ」
マスターが口元の白い髭に手をあて答える。
レオはとても残念な顔をしてお酒を口に流し込んだ。
「残念だったなレオ。俺がお酌相手してやるよ」
柏木がレオを連れてテーブルに戻った。
「マスター、ウイスキーロック。山崎で」
相津がそう注文するとマスターは後ろのボトル棚に手を伸ばし、直々に用意した。
マスターは相津にウイスキーを手渡すとニッコリ笑う。
「相津君、柏木君の力になってくれてありがとね。
"あの事件"以降、見てられない時もあったが君と出会ってからは本当に楽しそうだ。
傷が癒えることは無いのだろうが、それでもちゃんと今を生きている。大事なことだよ。
これからも彼を宜しく頼むよ」
マスターは笑顔のまま、相津にしか聞こえない声で優しく語りかけた。
相津はウイスキーを飲み干し、柏木を見た。
「それはお互い様ですよ」
───二時間後
「────でな心春ちゃん、俺は上のバカに言ってやったんだ────」
「ひぇ~、相津さん、助けてくださいよ〜」
完全に酔っ払いオヤジと化した柏木に、心春が捕まっていた。
相津は聞こえないフリを決め込み、カウンターから動かない。心春をチラ見しつつマスターと笑っている。
「おっ、こいつもめちゃめちゃうめーな!」
「おい脳筋ゴリラ!僕のお菓子まで食べるなよ!」
ジョージが翔の皿のお菓子を食べてしまった。
「追加頼めばいいじゃねーか!
白洲さん、このお菓子と最初の肉、追加お願い!」
白洲は「かしこまりました」と一礼し、注文の電話をした。
「これだからデリカシーのない野生動物は困る」
「どうどう、落ち着きなさいな、お坊ちゃん」
「誰がお坊ちゃんだ、この僕を何だと思ってる──」ムグッ
アリスの言葉に翔がツッコミをしたところ、レオが翔を羽交い締めにして溜め息をついた。
「はあ、京香さんがいればまだ口説きがいがあるってもんなのになー……」パタパタ
「あら失礼ね、ここに絶世の美女とあそこにカワイイ小動物がいるじゃない」パタパタ
アリスがしれっと心春を小動物扱いしていたことはさておき、レオが素早く反応した。
「いやいや狡賢い女狐と純真無垢な子供はさすがに私の広いストライクゾーンでも厳しいかな」チーン
「あんですってー!もういっぺん言ってみなさいよー」
動かなくなった翔のことを忘れて、レオとアリスが軽口を言い合う。
どうやら酒もいい具合に回ってきたらしい。
「────だからな心春ちゃん、俺は上のバカに言ってやったんだ────」
「柏木さん、もうその話、五回目ですぅ!」
心春が泣き叫ぶ。
「やれやれマスター、今日は長くなりそうだから支払いは"いつもの"ように頼む」
相津の言葉にマスターはニッコリ笑って頷いた。
その時、酔っ払った柏木が相津に肩を組んできた。
「おいおい相津、いつまでカッコつけて飲んでんだ〜、せっかくの打ち上げ何だからハメを外せよ!」
「そうよ!今日こそアンタがベロベロに酔って醜態を晒すところを拝んでやるわよ」
アリスが相津に食ってかかる。
「おっ!いいね!俺も乗ったぜ!
飲み比べといこうか、覚悟しやがれ真一!」
ジョージが楽しそうにノってきた。
「心配しなくていいよ、真一。
骨は拾ってあげるから安心して醜態を晒すがいいさ!」
レオは相津の弱みを握りたいらしい。
「酔い潰れた記念に僕がその顔写真をデータバンクに永久保存してあげるよ」
いつの間にか復活していた翔も続く。
「さっき助けてくれなかった恨みですぅ!」
心春が恨み言を投げかける。
「あっはっは!さあ、相津!いよいよ年貢の納め時だぜー」
柏木が声高らかに言い放った。
だが相津は全く怯まない。
「くっくっく、お前らがこの俺に勝てるとでも?
身の程知らずを教えてやるよ。
いいぜ!───全員まとめてかかってきな!」
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──午前五時。
淡い朝焼けが空を静かに染め上げる。
ベルベットの外でマスターが朝日を眺めていた。
店内へ戻るとジョージと柏木が床に大の字になって寝ていた。
他のメンバーもソファやカウンターなど、どこかしらで酔い潰れて寝ている。
パシャッ
マスターは全員を撮影し、ニッコリ笑う。
「ほっほっほ、"仲間"というのは楽しいね」
おしまい
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