表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/48

『護衛MISSION ⑼─だから俺が行く─』

 ウゥゥゥゥゥゥゥーーーッ!!


 敵施設全体に非常警報のサイレンが鳴り響く。


 権藤武のいる十階建てビルでは、皇城インフラ開発の職員たちが慌ただしく対応に追われていた。


「おい!うるせぇぞ!

 早くこの警報を止めろ!どうせ誤報だろ!」


 幹部が苛立った声を飛ばす。


「申し訳ございません!

 現在、原因を確認中です。もう少々お待ちください!」


「ったく……社長の機嫌が悪くなったら、また俺たちがとばっちりを食うぞ……」


 その瞬間──。


 ドゴォォォォン!!

 バゴォォォォン!!

 ボガァァァァン!!


 凄まじい爆発音が立て続けに響き渡り、建物全体が激しく揺れた。


「な、何だ!?」


 幹部が思わず壁に手をつく。


「爆撃です!

 敷地内の倉庫や施設が何者かによって爆破されています!」


「おいおい……冗談だろ……」


 一瞬呆然とした幹部だったが、すぐに我へ返る。


「総員、敵襲だ!!直ちに迎え撃て!!」


 怒号が施設中へ響き渡った。




 ──敷地内 正門付近。


 ジョージはバッグからダイナマイトを取り出すと、周囲の建物へ次々と投げ込んでいた。


 轟音とともに火柱が上がり、黒煙が夜空を覆う。


 非常警報を聞きつけた構成員たちが、四方八方から続々と集結してくる。


 左右の建物からだけでも百人近い武装集団が怒号を上げながら押し寄せてきた。


 その光景を見たジョージは、口元を歪めた。


「ようやく出てきやがったか……。

 まずはゴミ虫どもを掃除するとしよう」


 ジョージはバッグから愛用のロケットランチャーを取り出す。


 左右へ向け、躊躇なく一発ずつ発射した。


 ドカァァァァン!!

 ドカァァァァン!!


 爆炎が敵陣を飲み込み、吹き飛ばされた構成員たちが宙を舞う。


 だが、それでもなお、生き残った者たちが武器を構え立ち上がってくる。


「……まぁ、この程度で全滅するとは思っちゃいねぇ」


「ゴキブリみてぇにワラワラ湧いてきやがって。

 一匹残らず駆除してやるよ」


 ジョージは背中の両手剣を確かめ、腰の二丁のサブマシンガンに手を添える。


 そしてアサルトライフルを構えると──


 獣のような雄叫びとともに、千人の敵軍へ──ただ一人、突撃した。




 ──一方その頃 屋敷裏門。


 皇城インフラ開発の職員と同じスーツに身を包んだ相津は、誰にも気づかれることなく裏門から敷地内へ侵入していた。


 裏門の守衛はすでに相津によって無力化されている。


 相津は物陰に身を潜め、インカムへ静かに口を開いた。


「こちら相津。裏門より敷地内へ侵入した。

 予定通り、玲依の監禁部屋付近で潜伏中のアリスと合流する」


「翔、最適ルートをPDAへ送ってくれ。

 誘導を頼む」


 ザザッ──。


〈了解。今、PDAへルートを送ったよ。

 ハッキングした防犯カメラの映像から、一番接敵の少ないルートを選んである〉


〈"アイギス"の演算補助でも成功確率は90%〉


〈ただし、完全に敵を避けられるわけじゃない。

 接敵はあるから気を付けて〉


 "アイギス"──。


 翔が【Zero】のメインコンピューターを守るために開発した、AI(人工知能)を利用したサイバー防御システムである。


 作戦指令室のメインコンソールと接続することで、施設の構造や敵の配置、防犯カメラの映像をリアルタイムで解析し、最適な侵入経路を瞬時に算出できる。


 相津はPDAに表示されたルートを一瞥すると、小さく頷いた。


「了解」


 短く返答すると、気配を殺したまま廊下へと滑り出す。


 警報が鳴り響き、構成員たちの意識はすべて正門へ向いている。


 その隙を縫うように、相津は玲依の囚われるビルの奥深くへと静かに侵入していった──。




 ──敷地内 中央広場付近。


 ジョージの奇襲は、皇城インフラ開発の構成員たちの予想を大きく上回っていた。


 一人の男に部隊は次々と蹴散らされ、現場は混乱の渦に包まれる。


 やむなく構成員たちは、協力関係にある中国系マフィアへ応援を要請した。


 リーダーが舌打ち混じりに前へ出る。


「ハッ、訓練された軍人相手とはいえ、たかが一人にここまでやられるとはナ……」

 

「だから日本人は甘いと言われるンダヨ」


 鼻で笑うように肩をすくめる。


「まあ、我々は金さえ貰えれば働いてやるガナ」


 リーダーは周囲を見渡し、鋭く命令を飛ばした。


「前衛で交戦している間に裏側、左右へと回り、取り囲んで遠距離から狙撃シロ!それでジ・エンド」


 命令と同時に数人の狙撃手が建物の陰へ散開し、ジョージを包囲するように配置についた。


 ゆっくりと銃身を構え、照準を合わせる。


 ──その瞬間だった。


 パシュッ。


「……え?」


 狙撃姿勢に入っていた一人が、糸が切れた人形のように崩れ落ちた。


 隣にいた男が驚いて振り向く。


「お、おい……何が──」


 パシュッ。


「ぐっ……!」


 二人目も倒れる。


 続いて三人目。


 四人目。


 静かな破裂音が響くたび、狙撃手たちは次々と地面へ沈んでいく。


「な、何だこれは!?」


 混乱したマフィアの一人が周囲を見回す。


 だが、敵の姿はどこにも見えない。


 銃声も閃光もない。


 あるのは、仲間が一人ずつ倒れていくという異様な光景だけだった。


 ようやく事態を悟ったリーダーが、血相を変えて叫ぶ。


「全員伏せロォッ!!」


「どこかにスナイパーがいる!

 狙われているのは我々ダ!」


 マフィアたちは慌てて物陰へ飛び込み、周囲を警戒する。


 しかし──。


 敵は、まだ一度も姿を現していなかった。




 ──施設向かいの高層マンション。


 レオは窓際に伏せ、スナイパーライフルの照準を静かに合わせていた。


 照準の先では、ジョージが何十人もの敵を相手に暴れ回っている。


 常人なら狙撃など到底不可能な距離。


 しかしレオは呼吸一つ乱すことなく、引き金を絞った。


 パシュッ。


 ジョージの背後から照準を合わせていた敵が、その場へ崩れ落ちる。


 続けざまに二人、三人。


 狙撃音すら敵に位置を悟らせない。


「ふふっ……」


 レオは口元だけで笑った。


「千人を相手に、たった一人で敵陣へ飛び込んだ男に、不意打ちとは実に無粋だ……」


 再び照準を合わせる。


「──そんな真似、この私が許すはずがないだろ」


 乾いた発砲音が静かに響く。


 狙撃手の存在を悟った中国マフィアたちは、物陰から動くことすらためらい始めた。


 結果として彼らはジョージとの正面戦闘を余儀なくされた。




 ──玲依が監禁されている十階建てビル五階。


 窓辺に立つ榊悠馬は双眼鏡を下ろし、小さく笑った。


「クフフ……。さすが"クレイジーモンスター"。

 噂に違わぬ強さだね」


 その細い目は戦場全体を冷静に観察していた。


(とはいえ、一人は一人……)


 ジョージは圧倒的な強さを誇る。


 だが敵地のど真ん中。


 四方は高い塀に囲まれ、補給も増援もない。


(こちらは総勢千人。

 人海戦術を続ければ、いずれ奴は武器も弾薬も尽きる)


 ジョージ単体なら、いずれ押し潰せる。


 問題は──。


 榊の視線が遠くの高層マンションへ向いた。


(あのスナイパーだ……)


 正確無比な狙撃。


 味方の動きを完全に封じている。


(事前調査では、伝説の殺し屋"ジョーカー"が【Zero】のメンバーにいるとあったが……)


 榊は口元を歪めた。


「クフフ……面白い」


 殺し屋としての本能が疼く。


「同業者として、一度くらい挨拶をしておこうじゃないか」


 双眼鏡を静かに閉じる。


「──ついでに、その伝説も終わらせてあげるよ」


 不気味な笑みだけを残し、榊は音もなく部屋を後にした。




 ──玲依が監禁されている十階建てビル二階。


 ザザッ──。


〈こちらオペレーター。榊が相津の予想どおり動いた。玲依のいる五階を離れ、一階へ向かってるよ〉


 作戦指令室。


 翔はハッキングした監視カメラを切り替えながら、敵味方の位置をリアルタイムで把握し、相津へ伝えていた。


 その頃、相津は接敵した敵を無力化し、近くの空き部屋へ拘束して放り込む。


「了解。レオに榊が向かったと伝えてくれ」


 倒れた男を縛り終え、相津は静かに続ける。


「こっちも尋問は終わった。

 やはり監禁部屋の防犯装置を解除できるスイッチは、権藤武だけが持っているらしい」


〈了解。レオには伝えておくよ〉


 一拍置いて、翔が不安そうな声を漏らした。


〈でも、防犯装置はどうするの?前にも言ったけど、完全独立型だからネットワークには繋がってない。リモートハッキングは無理だよ〉


 相津は迷いなく答える。


「問題ない」


「アリスの報告によれば、防犯装置は監禁部屋まで続く約十メートルの廊下に、赤外線レーザーが幾重にも張り巡らされている」


「一本でも触れれば警報が鳴り、迎撃システムが作動する仕組みだ」


 しかし相津の口調に焦りはない。


「ただし、レーザーは蜘蛛の巣のように隙間なく張られているわけじゃない。人一人が通れるだけの隙間はある」


「体が柔らかく、侵入の経験も豊富なアリスなら突破できる」


 翔はなおも首を傾げる。


〈それはアリスも言ってたよ。

 でも問題はそこじゃない〉


〈レーザーそのものが見えないんだ。どこに張られているか分からなければ、避けようがない〉


 その言葉に、相津は小さく笑った。


「だから俺が行く」


 短く、それだけ言う。


「俺の《アイズ》なら、赤外線を"見る"ことができる」


 一瞬の静寂。


 そして相津は静かに言い切った。


「──俺が、アリスの"眼"になる」


 

読んで頂きありがとうございます。

良ければブックマーク、評価をお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ