幕間2『ゴミ拾いミッション〜警察と地域の交流会〜』
──皆さん、お久しぶりです。立花心春です。
今日は警察の地域交流の一環で街のゴミ拾いに参加しています───
──とある日曜日 午前八時。
相津、柏木、心春の三人は河川敷にある広場に来ていた。
「ふあー、日曜の朝からゴミ拾いとか俺のキャラじゃねーんだけど……」
「そんなことないですよ、相津さん!
ゴミ袋持ってる姿もお似合いです!
ほら、今日は天気も良いですし、めちゃめちゃゴミ拾い日和ですよ!」
「いや、ゴミ拾い日和って何だよ……そんな言葉聞いたことねぇぞ……」
相津は黒一色のTシャツに上着、カーゴパンツにキャップ帽を被り、眠そうにしている。
そんな相津の背中を心春が押している。
心春はTシャツにアームカバーを付け、薄手のピンクパーカーを羽織っている。
レギンスにショートパンツ、頭にはサファリハットという可愛らしい服装だ。
「まあ、そう言うなよ相津。
これもれっきとした警察のお仕事だよ」
柏木はトングを片手に持ちながら、煙草をくわえていた。
ロングTシャツにベスト、大きな麦わら帽子を被っていた。
「おい、柏木。
ゴミ拾いする奴がゴミ増やしてどうすんだよ。
自分でその煙草捨てて自分で拾うとか、何してるか分かんねーよ……」
相津が呆れた顔をすると心春も注意した。
「柏木さん!ゴミ拾い中は禁煙です!
そもそも街中で警察官が煙草を吸ってはダメですよ」
柏木が「悪い悪い、つい癖でな。気をつけるよ」と言いながら煙草の火を消すと、三人は担当区画へ向かった。
道中、相津がふと思い、歩きながら二人に尋ねた。
「今更だが、他の奴らはなんでいないんだ?」
「今回は完全に警察の交流イベントだからな。
正式な警察職員じゃない、ジョージ、アリス、レオはそもそも参加できないんだよ」
柏木は麦わら帽子の顎紐を緩め、頭の後ろへずらした。
「じゃあなんで翔はいねーんだよ?」
相津がすかさず聞くと心春が少し困ったように答えた。
「それが朝オフィスに寄ったら翔くんまだ寝てて……、何度も起こしたのですが全く反応がありませんでした……」
「ほら、あいつ休日は昼夜逆転するだろ?
昨日土曜日だったからどうせ朝方までゲームして遊んでたんだろうよ」
柏木の予想に、心春がうんうんと頷いた。
相津もなるほどという表情をしていたので納得したようだ。
そうこうしているうちに、河川敷のゴミ拾い場所に到着した。
「到着しました。
ここが今日のわたしたちのゴミ拾いエリアです」
心春が両手を広げ、二人に示した。
「結構広いな……」
「時間も限られてるし、三人で手分けするか」
相津と柏木がそう言うと、各々に分かれていき、ゴミを拾い始めた。
相津は河川敷の斜面部分を。
柏木が河川沿いを。
そして二人の間の中央部分を心春が掃除し始めた。
〜〜 一時間後 〜〜
三人は休憩のため、斜面にある階段に座り、一休みすることにした。
「ゴクゴク……。はあー生き返るぜー」
柏木がお茶を一気に飲み、タオルで汗を拭いた。
「こうして座っていると風がとっても気持ちいいですね」
心春もお茶を飲み、遊んでいる子供たちを眺めていた。
「たまにはこういう平和な時間も悪くないな」
相津は帽子をとって汗を拭いた。
三人は心地良い風に普段の喧騒を忘れ、平和だなと感じていた。
しばらくすると心春が何かに気付いた。
「あれ?
あの子供たちさっきから何か探してませんか?」
心春が指差した先には5歳くらいの男の子と女の子が草むらをかき分けて何かを探していた。
「どれ、行ってみるか」
柏木がそう言うと三人は子供の元へと向かった。
「こんにちは。君たちさっきから何を探しているの?
わたしたちは警察官だから良かったらお手伝いさせてくれないかな?」
心春は怖がらせないようにしゃがんで女の子にそう言った。
「お姉ちゃん、警察官なのー?
じゃあミクのボール見つけてくれるの?」
ミクと名乗った女の子の話を聞くと、どうやらお兄ちゃんと二人でボール遊びをしてたら草むらに入ってしまい、見つからなくなってしまったという。
「お兄ちゃん、警察官のお姉ちゃんたちも探してくれるって!」
女の子がそう言うと、男の子がこっちへ走ってきた。
「おじさん、本当に手伝ってくれるの?」
「ああ、もちろん。
だからどの辺り飛んでいったか教えてくれないかな」
柏木が尋ねると男の子は指を差してだいたいの方向を教えてくれた。
「相津、見つけられないか?」
柏木が相津に顔を向けた。
相津は"任せろ"という顔で男の子に聞いた。
「なあ坊主、ボールの大きさはどのくらいで、色は何色か分かるか?」
「うん、大きさはだいたいこのくらいで赤いボールだよ」
男の子は両手でテニスボールくらいの大きさの丸を作った。
「オッケー、ちょっと待ってな……」
相津はそう言って辺りを見渡す。
その"眼"が赤色に変わる。
《アイズ》の"色彩識別"を使い、相津は今、草むらから赤色の情報だけをその眼で読み取っている。
しばらくすると相津が男の子に声をかけた。
「坊主、ちょっとこっちおいで」
相津は男の子と歩き出すと草むらの中に入っていった。
「あそこの辺りにボールないか探してみてくれないか」
「うん、分かったよ!」
男の子は草むらをかき分けて探しだす。
すると「あっ!」と大きな声を上げた。
「あった!ボールあったよミク!」
男の子は嬉しそうにボールを手に取り、妹の元へ走り出した。
兄妹はしばらく見つかったことに喜んではしゃいでいたが、落ち着きを取り戻すと三人にお礼を言った。
「「見つけてくれてありがとう」」
二人は感謝の言葉を伝え、頭を下げた。
「見つけたのは坊主だよ、俺たちは手伝っただけだ」
相津はそう言って、男の子の頭にポンッと手を置いた。
心春はそれを嬉しそうに見ていた。
「さあ、ボールも見つかったし、もうすぐお昼だからそろそろお家に帰ろうか」
柏木が二人の子供の肩を叩くと「うん!」といって二人は帰っていった。
途中、こっちを振り返っては何度も手を振っていた。
「じゃあ、そろそろ我々も行きますか」
柏木が腰を上げ、背伸びをする。
心春はジッと相津を見つめていた。
「……さっきから何ニマニマして見てんだよ心春……」
心春は意味ありげな笑顔で相津に答えた。
「相津さん、子供にはすごく優しいんだなーって思って……それが何だかとっても嬉しくて」
「別に普通だろ?」
柏木が横から口を挟んだ。
「またまた〜、自分で見つけなくて、わざと男の子にボール見つけさせたくせに。テレんなよ!」
「テレてねーし!そんなんじゃねーよ!」
柏木がからかうと心春も一緒になって笑った。
暖かい気持ちが胸いっぱいに広がり、とても満たされた気分になった。
心春は相津に何とも言えない不思議な感情を抱いていた。
憧れ、尊敬、恋、全てが合わさったような感情だが良いことなのは確かだった。
「それじゃあ、わたしたちも帰って一緒にご飯食べましょう!」
───雲一つない青空の下、心地良い風が三人を包んだ。 心春を真ん中にして並びながら、三人は自分たちの居場所へと帰っていくのだった───
おしまい
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