Ep.29 宣言
【報告】近況報告にも載せましたが、この度『なぜ、私に関係あるのかしら?』がアース・スターノベル大賞様にて金賞・コミカライズ賞を受賞致しました!
これもたくさんの読者様おかげです!本当にありがとうございました┏○))ペコッ
独立にあたり、わたくしたちは一度王都へ向かうことになった。
王都邸がまだ残っており、そこには管理を任せている使用人が何人かいる。
アルバが独立すると『公国』となるだろう。
寄子たちも追従する形となると、領地が隣接していない家門付近の貴族家にも声掛けをする予定だ。
恐らくアルバが独立するなら、こちらに付く家門は多いと思う。
他国へ移るとなると、さすがにその家門の爵位までは保証出来ない……。
けれどアルバが統治する国ならば、各家門に見合った爵位を叙爵することが可能になる。
国王陛下との話し合い次第ではあるけれど、王都にある屋敷を『大使館』としてそのまま残してもいいと思っている為、『独立』の話と共にそれをお父様が伝えることとなった。
……まあ、王国からしたら相当な痛手となるでしょうけれど、あの王家にこれ以上仕えてもこちらに甘えるだけで、これまで通りなあなあにして終わりだろう。
最悪、アマーリエと別れたことでフェリクス殿下との再婚約を打診されたり、シルヴァン殿下とエヴァンス侯爵令嬢の婚約を解消して、新しく婚約を結び直そうとしてくる可能性だってある。
フェリクス殿下は当然のこと、長年王子妃教育を受けていたのにまともな交流もせず、婚約者を蔑ろにして王家の都合で解消するような人であるなら、シルヴァン殿下も当然お断りに決まっている。
いくら政略的な婚約であろうと……いや、むしろ政略的なものだからこそ、互いを信頼出来るように意思の疎通を図り、思いやることが必要だ。
そんなことも分からず、いくら王家であろうと自分たちの都合で振り回すような婚約者など、まともな貴族家であればこちら側から願い下げである————。
久しぶりに長いこと馬車に揺られ、王都へ入った。
城門に着いた際に外が少し騒がしかったことから、アルバ公爵家が『戻った』と、手続きや王城への伝令で慌しくなったのだろう。
…………さて、王家はアルバが王都へ入ったことを、どう取るだろうか?
久しぶりに戻った王都邸は、相変わらず当主家族がいなくてもきちんと整えられていた。
「お帰りなさいませ。旦那様、若様、お嬢様」
「ああ、留守の間よく屋敷を守ってくれた」
家令のゴードンの息子であるベルナールが中心となって、残っていた使用人一同がわたくしたちを温かく出迎えてくれた。
そんな彼らにお父様が労いの言葉を掛けると、全員が深く一礼をする。
「ただいま、ベルナール」
彼はいつもは気難しい表情を浮かべているけれど、今日はにっこりと微笑んでいる。
旅の汚れを落とす為、各自私室へ向かうことになった。
特にお父様やお兄様は、留守の間の報告も聞かなければならない。
久しぶりに足を踏み入れた私室はきちんと掃除もされており、わたくしたちが戻る前に換気もしたのか空気も澄んでいる。
既に準備されていた湯を浴び、エレンに髪を乾かして貰った後でデイドレスに袖を通した。
ソファへ腰を落ち着けると、見計らっていたかのように軽食と紅茶がローテーブルの上に供される。
「お嬢様、クロイツ侯爵令嬢よりお手紙が届いております」
そう言うと、エレンは手紙を載せた銀のトレイをわたくしの前に差し出した。
マルガレーテには領地を出る前に『王都へ向かう』と報告がてら手紙を送っていたけれど、どうやらわたくしたちが王都へ入ったことを聞きつけて、すぐに連絡をして来たようだ。
マルガレーテ個人の紋章が入った封蝋を丁寧に開けて、中の手紙に目を通す。
そこには端的に『二日後に訪問するわ』とだけ書かれており、彼女らしいと思わず小さく笑ってしまう。
明日、お父様は登城し、国王陛下へ『独立』の意思を伝えることになっている。
二日後にやって来るなら、ついでにその報告も出来るだろう。
わたくしはマルガレーテからの手紙を折り畳み封筒へ戻すと、エレンに頼んで用意して貰った便箋に『了承』の旨を書き記し、クロイツ侯爵家へ届けるように手配を頼んだ。
——————
「……エヴァンス侯爵と、その娘が?」
予め寄子や子飼いに収集させておいた報告を、ライナルトと共に聞く。
その報告によれば、エヴァンス侯爵とその娘が登城し、何やら国王たちに進言したという。
エヴァンス侯爵家の娘は第二王子の婚約者だったはず——王太子から下ろされた第一王子の代わりに婚約者が繰り上がるのだから、王子妃から王太子妃となる。
エヴァンス侯爵家は娘が第二王子の婚約者だとは言え、目立つことを好まず堅実な家門だ。
その娘も王子妃にと望まれるだけあって、割と賢い者だったと記憶している……。
正直、あの第二王子には勿体無いと思うが、彼女のような者でなければ支え切れないということもあるのだろう。
「…………へえ、何を進言したんでしょうね」
ライナルトは悪戯っ子のように、面白そうなおもちゃを見つけたと言わんばかりの笑みを浮かべている。
息子は有能な者を好む。アルバの次期当主として必要な才能ではあるが、本人が優秀であるが故に、目を付けられた者もそれなりの能力を求められ、振り回されている姿を何度か見たことがある。
「……ライナルト。エヴァンスの娘は第二王子の婚約者なのだから、手を出すなよ」
「父上、嫌だな。私は何も言っておりませんよ?」
はあ、と私は一つ溜め息を吐くと、再び報告書に視線を戻した。
……もし、私の勘が正しければ…………。
「ライナルト……明日はお前も登城しろ」
私の声色が変わったことに何か感じ取ったのか、それまでの笑みを消して「承知致しました」と端的に答えた————。
翌日——私とライナルトは、エントランスでアンネリーゼに見送られながら馬車で王城へと向かった。
謁見の申請は昨日のうちに出し、許可は出ている。
久しぶりに訪れた王城は何も変わっていないはずだが、どこか使用人たちや事務官たちに落ち着きがないように見えた。
正面エントランスから堂々と入り、国王の執務室へ到着すると、扉の前に立つ近衛騎士に取り次ぐように言えば、私たちが到着したことを伝え、中へ入るように促された。
「お久しぶりでございます。ヴァレン・フォン・アルバとライナルト・フォン・アルバがご挨拶申し上げます」
「……頭を上げて、そこに座るといい……」
ライナルトと共に深く礼をすると、いつもより覇気のない声が返ってきた。
アイヒェン家と第一王子のことだけで、これほど疲弊することはないだろう……であるならば…………。
ライナルトと共に体勢を戻し、促されるままにソファへ腰を下ろした。
「……して、今日はどのような用件だ?」
こちらに用件を尋ねる割には、どこか諦めに似た色が滲んでいる。
「今日は『報告』に参りました。我がアルバ公爵家は、ルクスフォード王国より『独立』致します」
私は表情一つ変えることなく、端的に結論だけを述べた。
『独立しよう』と考えているわけではなく、『独立する』というこ
とは既に決定事項だと————。
国王は深く溜め息を吐いたかと思えば、「……やはり、そうなるのか……エヴァンス侯爵たちの進言は正しかったな……」と静かに言った。
「エヴァンス侯爵?」
「ああ……つい数日前に会った際に言われたのだ。『アルバは独立するのでは?』と……」
…………ほう。恐らく、それに気付いたのは娘の方だろう。
侯爵もそのことに考えが至るかもしれないが、国王へ進言することはないはず…………。
あの男は堅実であるが故に、どこか融通が利かないところがあるからな。
だが、今回ばかりは侯爵家にも火の粉が降りかかることになる為、娘に迫られて謁見したのだろう。
「左様ですか」
話はそれで終わらないのだろう?と思いつつ、あえて端的に答える。
国王は話に乗ってこなかった私を真っ直ぐ見据えて、重い口を開いた。
「アルバ公爵、其方に王位を譲りたいと思う」
誤字報告ありがとうございます┏○ペコッ




