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09 物語作成計画

「お嬢様、参りました」


 色々と考えながら読書をしていると、エイミーがメイドと侍従を連れて戻ってきた。

 まあ、こちらが視線を向けるとすぐに一礼してエイミーは去って行ったけれどね。


「二人ともご苦労様」


「お嬢様のお呼びとあらば、すぐにでも参りますよ」


「不慣れですが、精一杯尽くさせていただきます」


 先に答えた侍従の方はエイミーの同僚らしいから、あるていど砕けた態度だけれど、メイドの方は私と接することが少ないから緊張しているみたい。


「主家の人間とはいえ、私は5歳の言葉なんだから、そこまで緊張しなくていいのよ」


「そ、そういうわけにはいきません」


 まあ、それもそうか。


「お嬢様、そちらは書斎の本と……紙ですか?」


「ええ、エイミーに用意してもらった羊皮紙よ」


「お嬢様は筆記師になるおつもりですか?」


「まさか。これは書斎にある本の内容をまとめているのよ。読んでいるうちに共通の内容があるのに気づいたから、わかりやすいようにね」


 メイドはまだ緊張しているようだけど、侍従の方は元から砕けた態度なので、こちらにスルスルと寄ってきて、手元の羊皮紙に書き込まれている内容を覗き見ている。

 侍従は専属というわけではないから、お父様に報告されそうだけど、別に報告されて困る内容でもないので堂々と見せる。


「ほう、これほど被っているのですか」


「それだけじゃなくて、例えば創造神に関しても神殿だと大地だけではなく、人と獣神を作り出したと書かれているのね」


「ええ、そちらは王立学園で習いましたね」


「でも、教会だと大地だけでなく、人と獣を作り出した、と書かれているの」


「獣神ではなく獣……ですか。神殿だと獣神が眷族である獣を作り出したのですよね?」


「そうなのだけれど、おそらく教えとして人々に伝える際に、人が神と同列だと勘違いされるのを避けたのではないかしら?」


 神殿の古代神解説書では創造神が人と獣神を作り出し、この世に命が満ち溢れるようになったと書かれているが、これをそのまま教えにすると人と獣神が同じ立場になってしまう。

 そうすると動物たちが人よりも一段低い階位となってしまうので、心無い人にとっては動物は自分たちよりも下の存在だから虐げても良いと考える材料となってしまう。

 神の教えでは命を無駄に摘み取らないというものもあるので、勝手な解釈をしないように人と獣神ではなく、人と獣に書き換えているんだと思う。


「ふむ……面白いですね」


「ま、でも手慰みみたいなものよ。私が本当に知りたいのは、もっと他の事」


「他……ですか?」


「ええ。……そうだ、二人とも公爵領の生まれではないんでしょう? 何か口伝だったり寝物語だったりを知らない?」


「口伝?」


「寝物語?」


「そう。私ね、こんなに本があるのに職業本や神話しかないのが残念なの。そんな教訓ばっかりの話じゃなくて、読んだら面白かったな~、感動したな~と思えるようなものが欲しいのよ」


「ふむ。しかし、口伝や寝物語も教訓がメインですよ?」


「そうだけれど、それを改変して面白い話を思いつくかもしれないじゃない。職業本は改変のしようがないし、神話は流石に改変すると神殿や教会から文句を付けられるでしょう?」


「ふふ、それはそうですね」


 前世では神話をモチーフにした物語もあったけれど、あれは神が遠かったのとオタク文化が成熟していたから許されていたことだろう。

 オタク文化どころか、まともな趣味本もなく、情報伝達も未熟そうな世界で同じことをやったら方々からバッシングを受けるかもね。


「というわけで、民間に伝わっているお話が聞きたいの。お母様に聞いてみたら、高位貴族は乳母を雇うから寝物語も聞いたことがないって」


「それもそうですね。私は子爵家の三男なので、母や兄から聞いたことがありますね」


「わたしも男爵家の出身なので、お母様や平民の幼馴染に聞いたことがあります」


「本当っ!? ぜひぜひ教えて!」


 ふむふむ、二人から聞いた限りだと危険な場所に近づかないようにという教えと、人にやさしくしましょうという教訓が多いみたいね。

 近畿の森に近づいた子供が怪物に襲われて命からがら逃げだす話、見返りを求めず老人や子供に親切にした人が後に商人として大成する話。

 助かるのは動物や物の擬人化というか、会話ができることが許容されている点ね。


 前世の昔話では動物や物が話し出すという物語が多かったけれど、この世界でも同じように岩が子供に警告をしたり、困っていた動物が助けてくれた人にお礼を言ったりする。

 まあ、獣神がいたり、山神が山そのものだったりするから、大丈夫だとは思っていたけど、民間に伝わる話でもそうなのね。


「こんな感じですが、参考になりましたでしょうか?」


「ええ! 二人とも、すごく参考になったわ。……ところで、このお話を本にしたい、と言ったら二人は困るかしら?」

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