87 アニメの世界(メアリー編)
「……え?」
気が付くと、わたしは見知らぬベッドの上で目覚めた。
わたしは大好きなアニメを見ながら学校に登校している途中で……あれ? なんでベッドの上に居るんだろう?
よく思い出せないけれど、叫び声と大きな音がしたような気がするんだけど……。
「お嬢様、お目覚めですか?」
声をかけられて、そちらに目を向けるとメイドっぽい服を着た老人がいた。
……お嬢様? 誰? わたしのこと?
「あらあら、寝ぼけていらっしゃるのですね。早く起きないとお父様とお母様に叱られますよ」
「ええと……」
答えようとしたその時、急に頭痛がしたと思ったら、いろいろな記憶が呼び戻された。
そうだ。わたしは……いいえ、私はメアリー・ブラウン。ブラウン男爵令嬢であり、わたしが大好きだったアニメ「春のようなキミに恋する」の主人公よ!
思い出してみれば、確かにアニメで見たのと同じ姿……って、今日はアニメの舞台でもある王立学園の入学式じゃない!?
「ケイト……今日から王立学園よね?」
「あら、お目覚めになられたのですね。そうですよ。早く準備しなければ入学式に遅れてしまいます」
「そうよね!」
そうよ! ここから私の物語が始まるのよ! アニメのようにイケメンのヒーローたちに囲まれて幸せになるの!
「春のようなキミに恋する」は乙女ゲームが原作のアニメで、様々なタイプのヒーローがいるのだけれど、その中でも私が好きなのは第二王子のロバート様!
子供のころに親から無理やり決められた婚約者と上手くいっていなくて悩んでいるのよね。
第二王子だから親からも期待されていなくて、婚約者の横暴に耐える毎日……そこに颯爽と現れるのが主人公である私。
国で唯一といわれる光魔法で、傷ついたヒーローたちの体も心も癒していくのよ!
「お父様、お母様、おはようございます」
「ああ、おはよう」
「おはよう、メアリー。今日から王立学園ね」
そこからは朝食を食べながら、お父様とお母様と軽く雑談をする……アニメの主人公は貴族だったから、てっきり大きな家に住んでいると思ったけれど、実際は前世で住んでいた家に毛が生えたようなものだった。
食事を食べるのも大きめのダイニングテーブルで、食事も普通……まあ、アニメでも学園での描写がメインで家は描かれてなかったし、現実はこんなもんか。
王立学園は意外と近く、貴族とはいっても男爵令嬢でしかない私は寮に入ったりはせずに、家から通うことになっている。
で、ここが王立学園! うーん、アニメで見た通り! ……ま、うろ覚えだけど、こんな感じだったでしょ。
門の傍で感慨にふけっていると、周囲の人からの視線を感じるけれど、別にいいでしょ。せっかくアニメの世界に来たんだから、少しくらいはしゃいでも。
入学式ではロバート様ではなく、ライバルキャラの兄王子が挨拶してたんだけど……こんな展開だったっけ?
アニメではロバート様が入学に際しての抱負を述べて、そのあとに婚約者である悪役令嬢が他の生徒に釘を刺していたような……。
ねえ、もしかして、私以外にも異世界転生者がいてストーリーを捻じ曲げてるってことある?
そうよね。私は詳しくないけれど、異世界転生物では悪役令嬢に転生した人が勝手にストーリーを捻じ曲げて主人公を陥れる話もあるって聞いたわ。
そう考えたら、王立学園の外観がアニメと微妙に違ったのも、入学式の段取りが違うのも納得よね!
「まず、この学園に関する重大事項から話すぞ。上位貴族が所属するAクラス、それに君たちが所属するBクラスは基本的に不可侵だ。もしも寄り親などの上位貴族と会話するときは談話室を使うこと」
男爵令嬢ということで、Bクラスに振り分けられたのだけど、おかしくない? アニメでは主人公はヒーローたちと同じAクラスだったんだけど!
これも悪役令嬢の仕業? 徹底的にストーリーを妨害しようってことね!
「それと、勘違いしている生徒が毎年のように現れるが、王立学園では爵位による優劣がはっきりと存在する。下位貴族である君たちは基本的に上位貴族の命令に逆らうな! もしも理不尽だと感じた場合にだけ教師を呼べ」
ええ~!? 教師のこの言葉も何!? 普通は王立学園内では爵位による上下はないって言うところじゃないの!?
そんなんだったら王立学園に通う意味がないじゃない! これも悪役令嬢が言わせているのね!
だとしたら、私がロバート様と恋仲になれば撤回されるわね。そして、悪役令嬢は断罪されるのよ!
そうとなったら、とにかく行動あるのみ! 教師の無駄話が終わったらAクラスに突撃よ!




