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07 お父様への相談

「ところで、お嬢様。あの者に何か言われましたか?」


「聞こえていた?」


「最後だけですが、お嬢様に出ていけ、と言っていましたよね?」


「そうね。彼女の中では公爵であるお父様と恋に落ちる物語が展開されているようで、私やお母様が邪魔だから出て行って欲しいそうよ」


 本を読みながら聞き流していたから詳細は覚えていないけれど、確かこんな感じだったわね。


「なっ! 公爵令嬢であるお嬢様になんという物言い!」


「まあ、教育はなっていないわよね。例え、私とお母様が出て行ったところで、平民である彼女が公爵夫人になれるわけがないのに」


 前世では一般人と王族が結婚することもあったようだけど、この世界では貴族や王族は平民とは結婚できない。

 どこかの貴族の養女にするという手もあるけれど、お母様にぞっこんなお父様が、お母様を捨てて彼女と結婚するなんてありえない。

 まあ、そもそも彼女の言うジェイソンとお父様は別人なのだから、そんな未来はあり得ないけどね。


「メイド頭に厳しく叱責するように進言してきます」


「いいわ。こちらでお父様に相談するから。エイミーは彼女の失点をできるだけ集めておいてくれる?」


「かしこまりました」


 メイド頭だろうが、侍女長だろうが、使用人の誰が叱責したところで彼女は反省はしないだろう。

 だって、彼女の頭の中では自分は物語の主人公で未来の公爵夫人なのだから、ヒーローとの逢瀬を邪魔した人間として認識するだけだろう。

 だからこそ、彼女を排除する手っ取り早い方法は、雇用主であるお父様に現状を伝えて解雇に追い込むことだけだ。


「私はここで本を読んでいるから、代わりの人間を呼んでくれればエイミーは情報収集に出ていいわよ」


「助かります。すぐにメイドと侍従を連れてまいりますので、そのままお待ちください」


 いつもだったら、屋敷内は安全だから放っておいていいというところだけれど、流石に頭のおかしい人に突撃されたばかりだから、誰か傍に置いておかないとエイミーが心配だろう。

 そのまま本を読んでいると、エイミーがメイドと侍従を連れてきて、すぐさま部屋を出て行った。

 お父様の執務の関係上、相談するのは夕飯の前になるから、それまでに相談内容を私の方でもまとめておかないとなぁ。


 なんて考えていると、すぐにでも夕飯前となって、執事からお父様の執務がひと段落したとの連絡がきた。

 さて、エイミーが集めてくれた情報も精査できたし、お父様に相談しなくてはね。


「おや、ローズマリー。執務室へやってくるなんて珍しいね」


「お父様の執務がひと段落したと報告を受けたので、相談に参りました」


「相談?」


「はい、先日から屋敷で働いているリサというメイドについてです」


「メイド…………ああ、ガスリー子爵の推薦で働き始めたトランメル家のお嬢さんだね」


「はい。本日の午前中に私のいる書斎に勝手に入ってきて、暴言を吐いていきました」


「なにっ!?」


「内容は私とお母様に屋敷から出ていくように、とのことです」


「は?」


「お父様には理解できないかもしれませんが、彼女の中ではお父様に自分が見初められて公爵夫人になるストーリーが展開しているようです」


「……待て。どういうことだ?」


 あからさまにお父様が混乱している。それはそうだろう。お父様と彼女が顔を合わせたことなど1度としてないのだから。

 エイミーが使用人たちに聞き取りをして分かったことだが、彼女の雇い入れを決めたのはお父様でも、彼女を迎えたのも教育を受けさせたのも使用人たちで、お父様とは顔合わせをしていない。


「使用人たちにも聞き取りをしました。彼女は自分は未来の公爵夫人になるんだ、と嫌な仕事や面倒な仕事から逃げているそうです」


「待ちなさい! 私はそのメイドの顔も知らないんだぞ!」


「わかっております、お父様。こちらは全て彼女の妄言。その証拠に顔も知らないのになぜ公爵夫人に慣れると思うのか? と使用人が聞いたところ運命だと答えているそうです」


「……は? まるで理解ができないのだが」


「私もです、お父様。おそらくは、子供が夢を語るのと一緒で現実が見えていないのだとは思いますが、彼女の年齢でそれは教養がなさすぎかと」


 リサの年齢は15歳。平民であっても優秀なら王立学園に通いだす年だし、そうでなくても結婚して家庭を持っている人もいるくらいの年齢だ。

 夢を見ることが悪いこととは言わないけれど、公爵家の屋敷で働いているというのに、家人を追い出して自分が主人になろうとするなんて現実が見えてなさすぎる。

 この屋敷には他の貴族が来ることなんてめったにないけれど、もしも他の貴族に彼女の態度を見られたらお父様の失態になるだろう。


「ふむ。こちらでも調査の上、間違いがなければ追い出すか」


「お願いします……あ、でも推薦したガスリー子爵の方は」


「そちらも問題ない。先代や先々代は忠臣だったが、どうも私腹を肥やしているようだ。領民からの評判も悪いようだし、そのメイドに教養がないのなら、それを理由に僻地に左遷することになるだろうね」

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