54 暴走したロバート(国王視点)
「ロバート、騒ぎを起こしたそうだな」
我の名前はランス・テイラー。テイラー王国の国王であり、目の前にいるロバートの父でもある。
目の前にいるロバートは興奮しきった様子で我を睨んでいるが、問題を起こしたのは自分なのにここまで傲慢な態度を取れる理由が我にはわからん。
我が国の食を支えるグラース公爵家の娘に対して不遜な態度で婚約を迫り叱責され、反省したかと思えば今回のように自分勝手な理論で暴れだす……本当にどうなっているのだ?
「私は悪くありません。ブラウン皇国の皇子がローズマリーに迫るのが悪いのです!」
「はあ。デビット第四皇子もグラース嬢も婚約者がいない身。お互いがどんな交友関係を築こうとも、婚約者でもなければ婚約者候補にもできないお前が関わることではない」
グラース嬢は公爵令嬢であり、王家に嫁ぐにふさわしい家格ではあるものの、唯一の跡取りということで公爵家から外に出すことは叶わない。
加えて、王家としても第一王子であるエリックが王位を継ぐとなれば、血が同じである第二王子のロバートを外に出すわけにはいかない。
王家が潰れれば国全体に影響があるから、後継ぎだけでなくスペアは外に出すことは叶わないのだ。
「父上! 何を言っているのですか! ローズマリーは私の婚約者……引いては王妃となるのですよ!」
「ならんっ! グラース嬢はグラース公爵家を継ぐ次代の公爵だ! お前の婚約者になどならん!」
「はあっ!?」
「そもそも、なぜ第二王子であるお前が王位を継げると思っているのか、そこが疑問だ」
我が国では魔力量も関係するが、基本的には嫡子が家を継ぐ。エリックの魔力量には問題がなく、ロバートよりも魔力が多いから、普通に考えればロバートが王位を継ぐことはない。
そのことに関しては幼少期から教えているはずだし、お茶会で問題を起こしたから王太子として指名はしていないが、ロバートに王位を譲ると言ったことはない。
「……母上が」
「母? 王妃が何か言ったのかっ!?」
「ローズマリーを婚約者にできたほうが王位を継げると」
はあっ!? 離宮に幽閉しているというのに、王妃はまだそんな世迷言を言って王子を誘導しているのか!?
「はあ。ロバート、それは王妃の妄言だ。婚約者で王位を継ぐ者を決めることはない」
「……え?」
「そもそも王位を継ぐのは本人なのに、なぜ婚約者で王位を継げると思っているのかわからん。国王のもっとも大事な業務は魔力で防壁を築くことだ。それは婚約者だけでなく、王妃すら手伝うことはできん」
他の国ならいざ知らず、テイラー王国では魔力防壁を作れるか否かが貴族や王族として重要となってくる。
内政や外交などは国王に求められる資質ではない。そんなものは、もっと能力のある部下が行ってくれる。
だからこそ、王家の婚約者は魔力量さえあれば、伯爵家以上のどの家でも問題がないのだ。
「で……ですが!」
「教育係は教えなかったのか? テイラー王国で重要なのは家を継ぐ本人の資質だと?」
我の目の前にいるのはロバートだけだが、室内には宰相、騎士団長だけでなくロバートやエリックの教育係も控えている。
「陛下」
「うむ、直答を許す。我の質問に答えよ。ロバートにはテイラー王国に関する教育はしなかったのか?」
「いいえ。ロバート第二王子殿下にはマナーや基本的な教育はもちろん、テイラー王国の歴史や貴族の重要性、王位継承に関する事項など詳細に教えておりました」
「ふむ。独りよがりの教育ではなかったか? ロバートが理解する前に先へ先へと進んではいなかったか?」
「いいえ。1日の終了時に理解できているかのチェック、数か月ごとにまとめてテストを行っておりました」
ふむ。手前勝手な教育でロバートを置いてきぼりにしている可能性も考えたが、教育係の態度を見る限り、そんなことはないのだろう。
隣にいるエリックの教育係からも異論が出てこないことから、お互いに連携して教育に当たっていたのかもしれない。
「ロバート、お前の言い分は?」
「……教育係からはテイラー王国の成り立ちや貴族の役割はきちんと教えられていました」
「ならば、なぜグラース嬢を婚約者にすれば王位につけるなどと勘違いしたのだ?」
「母上に……母上にそうだと言われた瞬間に、全てが頭から飛んで行ってしまいました。……なぜかはわかりません。わかりませんが、そうだと思ってしまったのです」
はあ、ここでも王妃か。やはり、このまま王妃の座につかせておくのは無理だな。
「宰相。騎士団と連携し、王妃がどうやってロバートを洗脳したのか暴け。その手口が判明し次第、王妃を隣国へと返す準備に入れ」
「は!」




