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異世界転生しました!・・・で、私は誰?  作者: 高坂ナツキ
王立学園編

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50/92

50 提案

「本の価格を下げるわけにはいきません……しかし、方法がないわけでもありません」


「……ん?」


「皇族は貴族相手に商売ができないので写本の許可があっても、購入費を回収できない……それが、ブラウン皇国の問題ですよね?」


「ああ」


「でしたら、皇族ではない貴族、あるいは商会がテイラー王国から本を購入し、写本によって利益を上げればいいだけでしょう?」


 持てる者は施しを、というのなら、持っていない者が本を購入して購入代金を写本によって回収すればいい。

 本を購入する代金と権力の釣り合いを考えると、伯爵くらいが妥当かな? あるいは、デビット第四皇子が商会を設立して、そちらで写本を作るというのもアリだろう。


「他の貴族に購入させるのか?」


「ブラウン皇国から本の購入を打診してくるのは皇家だけではありません。いくつかの公爵家、それに侯爵家や伯爵家からの打診もありました。しかし、皇家が購入を希望していると話すと途端に打診は取り下げられました」


 デビット第四皇子の話を聞いて理由は分かったけれど、ブラウン皇国の貴族たちは皇家が購入するのなら無料で写本させてもらえると考えて本の購入を取り下げたのね。

 皇家が購入を希望した本以外にも販売している本はあるのに、全ての貴族が購入の打診を取り下げたからびっくりしたわ。

 そりゃ、高額な本の料金が羊皮紙やインクの代金だけになるのなら、購入を希望していた本でなくても良いと考えるでしょうよ。


「……そんなことが」


「ブラウン皇国の皇家が購入を希望したのは3冊。それ以外の本を購入していた貴族も打診を取り下げていました。本なら何でもよかったのか、それとも皇家に遠慮したのかはわかりません」


「ううむ」


「しかし、ブラウン皇国の貴族も注目しているということはわかります。なにせ、皇家と同じタイミングで本の購入を希望しているのですから」


 友好国へ本の輸出を打診する際には、まずは皇家や王家といった国を代表するところに、その後に有力貴族やテイラー王国との交易を担当する貴族に打診することになっている。

 タイミング的にブラウン皇国で本の購入を希望した貴族は、皇家が本を購入するかどうかを検討している時間よりも早く購入を検討していることになる。


「ふむ……ジョン。グラース公爵令嬢の案は実現可能か?」


「そうですね……皇家から資金援助をするのなら可能かと。商会に関してもデビット様が個人資金を投入して設立、実務はほかの者に任せるという形にするのなら……」


「可能なのかっ!?」


「そちらに関してはブラウン皇国のしきたりがあるでしょうから、そちらで話し合いをお願いします……ただし、この案にも欠点はあります」


「……欠点?」


「はい。ほかの貴族が購入するにせよ、紹介で購入するにせよ、皇家が最初に本を読めるわけではないということです」


 本を購入した場合には、購入者にまず読んでもらって本当に欲しかった本かどうかを確認してもらう作業がある。

 購入後は購入者の一家が読むのか、即写本に回すのかはわからないが、どちらにせよ皇家に献本する前に誰かが読むことに違いはない。

 ちなみに確認時に内容が違うとなると返本になり、お金も払わなくてよくなるが、二度と同じ本は購入できない決まりとなっている。


「……そうか。貴族家はもちろん、商会を立てたとしても実務担当者が確認することになるのか」


「はい。現在は皇家でスケジュールに余裕がある人が確認しているそうですが、私の案を採用した場合には皇家が読めるまで時間がかかります」


 貴族社会では流行の最先端にいることがステータスなので、皇家よりも先に他の貴族が本の内容を知っているというのは問題だろう。

 なので、その辺りのことが理解できている貴族を選択する必要があり、そういった皇家を立てられるような有能な貴族は少ないものだ。


「ふむ、そのあたりのことも考えてジョンと話し合うとしよう……グラース公爵令嬢、本日は手間を取らせた」


「いいえ。デビット第四皇子殿下の力になれたのなら幸いです。こちらとしても、実家の事業が他国の方に望まれているのがわかって、光栄ですわ」


 これは本当。国内の貴族の反応はお茶会などで吸い上げられるけれど、国外の反応となるとなかなか公爵家まで届かないのよね。

 私たちが作った本が望まれているのか、それとも物珍しさから購入されているのか、そういった情報がわからない。

 だからこそ、国外よりも国内を優先させてきたのだけれど、デビット第四皇子の反応から国外への輸出を増やしてもいいかもね。

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