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37 初授業

「本日より、貴方たちが貴族として成長するための教育を施していきます。大半の生徒は家で学習済みかと思いますが、復習のつもりできちんと学ぶように」


 入学式の翌日だけれど、普通に授業が始まる……まあ、下位貴族はともかく、私を含めた上位貴族は王立学園での授業内容など家で先取りしているので、問題ないけれどね。

 ちなみに、ロバート第二王子だけれど、本日はお休み。……というよりも、これから1か月くらいはずっと休みらしい。

 昨日は家に帰ってすぐにお父様に連絡をしたのだけれど、お父様も陛下にすぐに連絡してくれたのね。……王子の態度は明らかに王族としてはありえなかったから、陛下としても早急に対応したのでしょう。


「まずは貴族としての役割から。貴族とは領地、あるいは国を守る存在だ。その守り方はいろいろあるが、王族や領主は土地に防護壁を作ることで民を守る。防護壁は魔導具により発生させられるが、前任者と魔力が似ている……つまりは直系でなければ受け継げない。だから、領主同士の結婚、王族が領主を嫁や婿に迎える行為は忌避される」


 まずは貴族としての常識からね。前世で読んだ物語では、貴族が貴族らしくしていられる理由がいろいろとあったけれど、この世界では物理的に貴族が平民を守っているからね。

 防護壁は完璧ではないけれど、ある一定以上の魔力を持つ魔物を通さない見えない壁。これがあるから、平民たちは領地の中で平和に暮らしていけるのよ。

 魔力の少ない魔物もいるし、魔力はないけれど凶暴な動物もいるけれど、そういったのは領地で編成している騎士団や兵団が対処するわ。


「親が領主でも次期領主に選ばれるのは1人のみなので、残りの兄弟姉妹はほかの領地を継ぐか、文官・騎士を目指すことになる」


 そうそう。お父様には弟がいる……私にとっては叔父ね……だけれど、叔父様は少し離れた子爵領で領主をしているわ。

 叔父様には息子……私にとっては従兄弟ね……が2人いるけれど、もしも私が王族に嫁いだ場合は、そのどちらかがグラース公爵家を継いだのでしょう。


「ちなみに、直系の子供がいない、あるいは子供を作る前に領主が死んでしまった場合は、ほかの貴族が領地を継ぐことになるが、その場合は防護壁の大きさが極端に縮まるので、領地を分割する必要が出てくるぞ」


 叔父様は、先代領主であるお爺様の直系だけれど、すでにお父様がグラース公爵として公爵領を、叔父様も別の子爵領を継いでいるので直系にはならない……ということは、従兄弟が公爵家を継いでも領地の縮小は必至。

 これが私が王族に嫁ぎたくない、領主を継ぐと言っている理由であり、私のわがままが通っている理由でもある。

 領地が分割縮小すれば、これまでは同じ領同士で活発に取引があったとしても、急に取引がなくなったり、領主次第では敵対したりするから、国としてもなるべく今の領主一家に引き継いでほしいのよね。


「なお、このクラスには関係がないが、男爵領や子爵領といった小さい領地では防護壁の縮小は起こらない。ゆえに、男爵や子爵として領地を得るのは実力さえあれば、そう難しいことではない」


 叔父様が子爵になったのもこれが理由。もともと、グラース公爵家が継いでいる爵位だけれど、継ぐ人がいない場合は家臣に子爵代行を任せ、継ぐ人が出てくれば引き継ぐ形ね。

 もしも、従兄弟が2人とも領主になんてなりたくない、と言い出した場合は、グラース公爵家に爵位が返還され、また家臣に代行を頼む形になるわ。

 あと、難しくない、と先生は仰ったけれど、それはこのクラスのものなら、という意味。小さな領でも魔導具を起動させるのには魔力が必要だから、平民や下位貴族が継ごうと思えば、並大抵ではない努力を強いられるわ。


「この辺りは領地貴族としての基本だから、領主を継ぐ者も、そうでない者も、きちんと覚えておけよ。定期考査では必ず入る設問だからな。……次に、文官になる方法と騎士になる方法だな」


 そう。本当に基本中の基本で、下位貴族だって王立学園に入学する前には知っているような知識。

 なのに、王子2人は、なぜ私が婚約者候補になるだなんて思ったのかしら?

 私が領主になるとは思わなかった? 公爵家には私1人しか子供がいないのに? ……まあ、常識すらわからない人の思考なんて、考えても仕方がないか。


「文官・騎士ともに王宮に勤める場合と、領地に勤める場合で難易度が変わる。自信がなければ各領地の試験を受けるべきだが、王宮文官・王宮騎士は名誉職だから、自信があるのなら挑戦してみてもよい」


 ちなみに、私を含めてクラスの人はすでに知っている事柄だからか、教師の話を聞きつつもメモを取るなどの動きはしていない。

 この世界では紙……羊皮紙は貴重なので、上位貴族だからといってムダにしていいものではないのだ。

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