35 なれなれしい王子たち
「おお、ローズマリー。やっと会えたな」
教室につくなり、第二王子が挨拶もなしに私に話しかけてきたけれど、あれ? マナーは完璧になったんじゃないの?
「ロバート第二王子殿下。お久しぶりでございます」
「なんだ、堅苦しいな」
おいおい。自分よりも爵位が上の人間に対して、堅苦しく話すのは当然でしょ! というか、そもそも私と貴方はほぼ初対面でしょうが!
子供のころのお茶会だって、挨拶くらいしかしてないし、第二王子の方は私に対して名乗ってすらいないのよ!
「ロバート第二王子殿下。私のことはグラース公爵令嬢、あるいはグラース嬢とお呼びください。ロバート第二王子殿下の婚約者候補に申し訳ありませんので」
「はは、私とお前の仲じゃないか。なあ、ローズマリー」
どんな仲だよっ!? 言っておくけど、7年前のお茶会から1度として王子2人には連絡すら取っていないんだからね!
「こんなことだろうと思ってきてみたが、正解だったようだな。ロバート、ローズマリーに迷惑をかけるんじゃない」
「兄上!?」
「ローズマリー、久しぶりだね。愚弟が迷惑をかけたようで、申し訳ない」
「エリック第一王子殿下。お久しぶりでございます」
「あはは、堅苦しいな」
「エリック第一王子殿下。申し訳ありませんが、私のことはグラース公爵令嬢、あるいはグラース嬢とお呼びください」
第二王子に比べたらマシだけれど、第一王子も私のことを名前で呼び捨てにするんだよな。
前世では名前呼びなんて珍しくもなかったけれど、この世界では名前呼び自体が親族だったり、幼馴染だったりと、関係が深くないとありえないことなのよね。
それに加えて名前を呼び捨てにするのは、両親や兄弟を除けば婚約者、あるいは婚姻関係にある人だけ。婚約者候補の段階でも名前に様・嬢をつけるのが常識よ!
「ああ、まだ婚約者候補の段階だからね。外聞が悪いか」
「……いいえ、私は第一王子殿下の婚約者候補ではありません。この身はグラース公爵領を発展させるためにあるので、王家に嫁ぐつもりはございませんので」
「はっ! 兄上、ふられてやんのっ! ま、ローズマリーは私と結婚するんだから当たり前だよな?」
「? いいえ、第二王子殿下と結婚することなどありえません。第二王子殿下も、先ほどから話しているようにグラース公爵令嬢、あるいはグラース嬢とお呼びください」
「は? 何を言っているんだ!? 私の元に来れば王子妃、いや、王妃だって夢じゃないんだぞ!?」
「第二王子殿下。私の夢はそんなところにはありませんので、構わないでください」
第一王子も第二王子も呆けているから、会話は終わったと考えて私は横をすり抜けて自分の席へと行く。
幸いにも爵位順ではなく、家名の順番で席が決まっているようだから、第二王子とは席が離れているわ。
「どうした、騒がしいぞ! ……エリック第一王子。どうしてこの教室に? それにロバート第二王子も、なぜそんなところに突っ立っているのです?」
今日は入学式とこれからの学園生活の説明だけのスケジュールだけの予定だから、担当教師が教室にやってきたのね。
王子2人の奇行に驚いているけれど、そりゃ教室に入った直後に王子2人……そのうち1人はこの教室じゃない……が呆けていたらビックリするわよね。
「とにかく、第一王子は教室から出て行ってください。説明の邪魔です。第二王子も速やかに席に着くように」
学園内に在籍している限り、王子だろうと教師には逆らえないので、第一王子は呆けながらも教室から出ていき、第二王子も静かに席に着いた。
ま、教師の横暴を防ぐために各家から苦情を入れることはできるけれど、普通の親だったら常識の範囲内での注意に抗議はしない。
今回のは明らかに王子2人が悪いから、王家としても苦情は入れられないでしょう。
……とはいえ、王子2人に対しては何か対策を打たないとまずいかも。
何を思ってそうなってるのか知らないけれど、2人とも私のことを婚約者候補だと思い込んでいるみたい。
これは、タウンハウスに戻ったらお父様に相談しないとならないわね。
「まずは、みな入学おめでとう。ここにいる20人が、これから6年間を一緒に過ごすメンバーだ。家の利害関係もあるから仲よくしろとは言わないが、切磋琢磨して能力を高めるように」
前世だったらみんな仲良く、なんていう場面だろうけれど、この世界では同じ国に使える貴族でも、派閥によって仲の良い悪いがあるので教師としても全員が仲良くすることは求めていない。
意味のないイジメや暴力行為などを起こさず、自分の能力を高めて王国に貢献できる貴族に育てることが目的だからね。
「では、これからの過ごし方についての説明を始める。まずは……」




