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34 入学

「お嬢様、着きましたよ」


「ありがとう」


 タウンハウスにも慣れたころ、王立学園の入学式となった。優秀な平民や下位貴族は寮から通う人もいるけれど、仮にも公爵令嬢である私はタウンハウスからの通いだ。


「いってらっしゃいませ、お嬢様」


「ええ、いってくるわ」


 御者に軽く挨拶をすると、私はエイミーを伴って王立学園の正門の前に立つ。……うん、すでに異世界転生者っぽい人がちらほらいるわね。

 貴族の少女は意味もなく学園を見上げながらぶつぶつと小声でひとりごとを言っているし、平民の少女は何もないところで転んでいるし、いやにびくついている少年もいる。

 こうして見ると、物語の主人公たちって危ない存在よね……絶対に絡まれないように、端を通っていきましょう。


「お嬢様、何やら不審な人が多いですね」


「王立学園に入学できるから感動しているのでしょう。放っておきなさい」


 他の人も不審そうな目で見ているけれど、関わったら危ないと思っているのか、私と同じように端を通っていく。

 あ、ちなみに意味もなく転んでいた平民の少女は警備員に連れ去られていたわ。正門は貴族が通う学舎につながっていて、平民が通う学舎は違う門から入るからね。

 というか、さっきの平民の少女、私と同じくらいの年よね? 平民が王立学園に入学できるのは15歳からなのだけど、何をしに来たのかしら?


「お嬢様、入学式が執り行われる講堂へと案内します」


「そういえば、エイミーは学園に通っていたのよね。その時と変わりはない?」


「少し変わった部分もありますが、学園に一緒に通う使用人には事前講習がありますので、学園内は把握しておりますよ」


「そうなのね。じゃあ、案内をお願いするわ」


 私がそう言うと、エイミーは私を先導しつつ、するすると学園内を歩いていく。私はというと、エイミーに置いて行かれないようにしつつ、初めて見る学園内の設備に興味津々だ。

 ちなみに、学園の外観や中身を見ても、この世界がどんな物語の世界かピンとこないから、私が知らないか、ゲームや漫画なんかの絵で表現されている作品ではないのかもしれない。


「キミたちは本日より栄えあるテイラー王国の王立学園へと入学した。貴族の一員としての自覚を持ち、日々を過ごすように」


 エイミーに先導され講堂に入ってしばらくすると、入学式が始まり学園長が私たちに向かってこう言った。

 物語とかでは学園内は身分の上下がないということもあるけれど、王立学園では生徒間で身分の上下はきちんとある。

 身分の上下を問わないのは教師と生徒の間だけであり、下位貴族は上位貴族に逆らわないように、上位貴族は下位貴族に無理な命令をしないように教育されている。


「在校生代表から挨拶です。エリック第一王子殿下、お願いします」


 私がぼんやりと考えている間に学園長からの挨拶は済んだようで、壇上には学園長の代わりに第一王子が立っていた。


「新入生諸君、まずは入学おめでとう」


 7年前のお茶会依頼に直接見る第一王子だけれど、意外にもあの時に感じたような悪ガキ感はなくなっていて、王子様然としている。

 噂では王立学園内でも、そこそこの人気があると聞いていたけれど、あの外見で中身が少しでもまともになっているのなら、そりゃモテるだろう。

 ま、私としては王子ってだけで公爵家の婿に迎えられないから、外見や中身がよくても対象外だけどね。


「では、皆の者! これからは王立学園の一員として、貴族として、恥ずかしくないふるまいをするように」


 おや? 考え事をしている間に、第一王子の挨拶は終わったみたい。

 前世でも式典なんかでは、つまらない話をする人が多かったけれど、それは異世界にやってきても変わらないのね。

 ん? なんか、壇上から降りるときに第一王子がこちらをチラチラとみていた気がするけど……気のせいよね。


「新入生は順番に退出するように。教室に関しては、使用人にあらかじめ伝えてある」


 先生が爵位順に案内するけれど、私は公爵令嬢なので、もちろん順番は早い方。


「エイミー、私のクラスは?」


「Aクラスです」


 前世で読んだ学園ものでは学力なんかでクラスの変動があるものも多かったけれど、この学園では1年時に決まったクラスから動くことはない。

 クラスは学力で決まると言われているけれど、学力自体が爵位によって上下するので、Aクラスに在籍できるのは伯爵家以上の上位貴族に限られる。

 異世界転生者だったら、前世の記憶で上位をとれると思うかもしれないけれど、貴族としてのマナーや領地経営の問題も出てくるので、前世の記憶だけで上位は取れないのよね。


「同じクラスになっているのは?」


「第二王子殿下。それと公爵家から2人、侯爵家から7人、伯爵家から9人となっています」


 私も含めて20人か、意外と多いわね。前世で考えたら、人数が少ないと感じるかもしれないけど、そもそも貴族しか通えない学舎なのだから人数は少ないのよね。

 お父様や私みたいに王族と在籍期間が被った場合には人数が増えるけれど、普段は1クラスに数人ということも珍しくないみたい。

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