31 うれしい悲鳴
王族のお茶会が終わってからは、激動の時代になったわ。
まずは王妃が王族としての義務を放棄したこと、そして乱心したことを理由に離宮で静養することが決まったわ。
私やお父様みたいに被害を受けた人にとっては遅きに失している感はあるけれど、さすが上位貴族を集めたお茶会での失態は陛下にとってもかばいきれるものではなかったようね。
王子たちに関しては徹底的な王族教育を受けることで処分は一時保留。まだまだ幼いから教育の結果を待って、王位継承権をはく奪するか、それとも次期国王として育てるか決めるみたい。
まあ、王子たちは無知ゆえの……というか、下位貴族並みの教育しか受けてないがゆえの暴言や態度だったので、今から教育すれば何とかなるでしょう。
ちなみに、私を含めた国内貴族との接触禁止令が出されているので、少なくとも王立学園に入学するまでは王子たちのことは考えなくてもよさそうね。
「ふふ、ふふふ」
「お嬢様、笑いがこらえ切れていませんよ」
これまでのことは王宮内のことだから私にとっては、そこまで関係ないけれど、私の目の前に積まれている手紙の山こそ、私にとっての激動の時代。
「だって、エイミー。見てよ、この手紙の山! 本が欲しいって注文から、物語を書いてみたいってお話まで!」
そう。あのお茶会からしばらくは音沙汰なしだった各貴族だけれど、時間が経つとポツポツと手紙が届き始めた。
お茶会に参加した親からは寄子に配りたいから本を購入したい旨、そして私と本について語り合った何人かからはお話を書いてみたいという手紙がね!
公爵家に在庫として置いてあった本は早々にほかの公爵家に買われていったので、今はスペンサー子爵に頼んで恋愛物語の印刷が終了し次第、伝承・寝物語の増刷に動いてもらっているわ。
「お嬢様、気持ちはわかりますが、公爵令嬢が私室とはいえ、1人でニヤニヤしているのは外聞が悪いです」
「あら? エイミーだって、笑顔が隠しきれていないわよ。いつもよりも2割増しで表情が明るいもの。スペンサー子爵から届いた恋愛物語を毎日読んでいるのでしょう?」
「……なんのことでしょう?」
エイミーはそっぽを向いてごまかしているけれど、いつもの化粧では目の下のクマは隠しきれていない。
もちろん、お母様やほかの使用人たちの分も届いたので、休憩時間や夜に寝る前に感想を言い合ったり、こんなお話が読みたいなどのアイディアを出しているみたい。
届いてからは、お茶会をしていないので他家には流出していないけれど、お茶会で発表したら瞬く間に注文書が増えるでしょうね。
「さて、私も新しい物語を書いていかないとね。物語を書きたいって子は多いみたいだけど、この中の何人が本当に物語を書き続けられるかわからないし」
物語を書くこと自体は文字の読み書きができれば難しいことではないけれど、物語を書き続けることは難しい。
勉強や武術みたいに目に見える成果が出づらいし、人から感想をもらえても、それが自分の意図しないものであることも多い。
傑作を書いたとしても必ずしも全員に受け入れられるわけではないし、一度でも脚光を浴びると次も同じクオリティを求められる。
「次はどんな物語を書くのですか?」
「といっても、私は恋愛物語くらいしか書けないのよねぇ」
正確には前世では異世界転生物で日常や冒険を主軸にしたものも書いていたけれど、そういったものを書くには知識が足りない。
この世界にいる人類の敵や、日常生活を詳しく知らないと、読んでいる人たちから総突っ込みを受けそう。
その点、恋愛系の話はマナー教育で王族のどろどろとした恋愛を学んだり、実際に両親のラブラブぶりを見ているからラインがわかっている。
「また、幸せなお話ですか!?」
「それでもいいけれど、バリエーションを持たせるために主人公の二人が引き裂かれる話やなんかでも良いとは思うのよね。……お母様やほかの使用人からのアイディアはどんな感じ?」
「……そうですね。私を含めて主人公が幸せになってよかったという声が大きいですが、一部ではもっと主人公が追い込まれてほしいという声もありましたね」
「まあ、あるわよね」
今回の話はエイミーの要望で逆境に負けず頑張る主人公したけれど、さすがに1作目から追い込まれすぎるのもどうかと思って、ゆるめで書いたのよね。
ん~、次は主人公を男にして好きな人を娶るために無理難題に立ち向かうような話でもいいかな~。
「何か思いついたのですか?」
「うん、まずは詳細を詰めて書けるかどうかを確認しないと。……それと、手紙お返事も考えないとね。注文に関してはお父様に回して。子供たちからの手紙は私が返事を書くわ」
本を作るというのは私の思い付きで始まったけれど、公爵家の事業にもなっているから注文に関してはお父様に確認を取らないとね。




