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27 寄子とのお茶会

「こちらの本。今までにあった神話などとは違って面白かったですわ」


「ええ、ええ。特に1つ1つのお話にどこの領地のものか書いてあったでしょう? それを見て、ああこんな場所がある土地なんだな、と想像できるのが良かったですわ」


 今日はグラース公爵家とその寄子のお茶会なのだけれど、5歳だというのに私も同席させられている。

 本来なら貴族の子供のお披露目は10歳なのだけれど、既にスペンサー子爵と面会していることや、今日のお茶会の話題が私の作った本になることから呼ばれたのよね。

 まあ、私のマナーがそこそこ見せられる程度にまで教育されていることが大きいけれど、他の高位貴族の家は王族のお茶会のためにマナーを徹底的に教えているのでしょうね。


「レベッカ様。他の本はありませんの?」


「ふふ、こちらの本は私ではなく娘のローズマリーが作ったのです。ですから、私には答えられませんわ」


 お母様の言葉に、テーブルについていた貴族女性の目が一斉に私の方へ向く。

 中には嘘でしょ、みたいな顔をしている人もいるけど、今回の参加者には男爵夫人や子爵夫人もいるから仕方のないことと目こぼす。

 まあ、私も前世のわたしだったら、同じように信じられないという顔をするし、下手したら嘘でしょ~、なんて軽く言い放っていただろうから声を上げなかっただけマシだろう。


「今一度、自己紹介させてくださいませ。ジェイソン・グラースとレベッカ・グラースが1人娘。ローズマリー・グラースですわ。この度は私の作成した本を話題にしてくださってありがとうございます」


 次期公爵ということで、私の方が立場が上に感じるが、実際には今はまだ公爵令嬢に過ぎないので、家の権利の半分を握っている夫人たちの方が立場は上だ。

 とはいって、将来的には私が上位者になるのだから、あまりへりくだりすぎないし、向こうも敬意を払って接してくれる。


「ローズマリー様。こちらの本を作成したというのは本当ですの? 本当でしたら他の本はありませんの?」


「ローズマリー様。実家の両親がこちらの本を気に入っていますの。公爵家とは違う派閥なのですけれど、販売はありませんの?」


「新しい本はスペンサー子爵に原稿を預けて作成してもらっている最中です。次の本は今回の本とは違って恋愛をベースにした物語です。本の販売については、こちらの紙をご覧ください」


 私は説明すると同時に、みんなが見えるように紙を数枚配る。紙には販売する場合の価格、貸出する場合の価格、それと貸出の際の条件が書かれている。

 本自体の価格は従来の羊皮紙の本の6割程度。貸出料金は羊皮紙の本の半分程度だけど、汚損や破損なしに返却した場合には料金の半分が返却される。


 お父様と相談したら貸出料金を安くし過ぎると、破損や汚損をしても返却しない、返却しても罰金を払わない家が出てくるだろうということが予想できた。

 なので、貸出料金は販売価格とあまり変わらない程度にして、返却時に多かった料金を返却ということにした。

 また、貸出はグラース公爵家の派閥に限るという文章も書かれているが、これはウチと同格以上の貴族は踏み倒しが可能になってしまうからだ。


「貸出……新しい本はもらえませんのね」


「今回の本は見本というか。グラース公爵家からこういった本が販売されるというアピールで下賜したものですからね」


 いくらグラース公爵家が上位貴族といっても、作った本を寄子に下賜し続けるほどの財力はない。


「両親は別派閥ですので販売になるのですのね。ローズマリー様、販売していただいた場合には写本の許可がもらえるということですの?」


「写本はダメですわ」


 私の写本はダメという言葉に、テーブルに着いていた夫人たちがざわつく。

 この世界では本を増やす方法は写本だけなので、これは当然の反応だ。


「こちらの本はスペンサー子爵の協力で作られた新しい本で、今までのように1冊の本を写本したものではありません。まったく同一の本を複数作り上げる新技術です。スペンサー子爵領の発展を促す目的もありますので、写本は一切禁止させていただいております」


 本の奥付というか、最後のページに権利がグラース公爵家にあること、写本を一切禁じることを文章にしてあるのだが、そこまで読んでいる人は少数派なのだろうか?

 それとも、写本を禁じている本が今までに存在していなかったから、嘘か冗談かと思われたのかもしれない。


「では、販売というのは?」


「グラース公爵家に在庫があれば、お金を支払っていただければ現物をお渡しします。在庫がない場合には、スペンサー子爵領で本が作られるのを待っていただく形ですね」


 在庫がなくなった場合には、新しく本を作るところから始めるので数か月から1年くらいの時間がかかる……前世だったら発狂しているわね。

 でも、公爵家の産業として根付かせるには大事なことだとも思っているわ。

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