25 お父様の説得
「で、お茶会はどうなったのですか?」
「うちだけを対象にしたお茶会は止めた。だが、国内の伯爵家以上の子供を集めるというから、それを止めることはできなかった」
まあ、いくらお父様が王族に近しい公爵家といっても、王妃殿下が言い出したことを表立って留めることはできないだろうねぇ。
国王陛下にしたって、隣国から嫁いできた王妃殿下に表立って苦言を呈せば、隣国からクレームが飛んでくるだろうし。
「前代未聞ですわね。伯爵家以上だから、ある程度の教育は済んでいるとは思いますが……欠席する? ローズマリー」
「いいえ、こちらとしても将来のお婿さんを探すチャンスですから、参加します。ただし、王妃殿下や王子殿下が絡んできた場合に断っても良いという確約がもらえたらですが」
公爵家に迎えても良いお婿さんをお父様に探してもらっているけれど、未だに候補すら紹介されないということは見つかっていないということだろう。
だったら、有能そうな人材を王家主導のお茶会で探すというのもひとつの手段だ。
とはいえ、王家の権力ごり押しで次期王妃にされたら困るので、断ることができるのが前提だけれど。
「わかった。お茶会の打診が来たら、陛下に伺いを立てるよ……しかし、本当にローズマリーは王家に興味はないのかい?」
「ありません。そもそも、私が王家に嫁いだら公爵家はどうなるのです? お父様には弟がいると聞いてますけど、そちらも新しい領地の魔導具に魔力登録しているのでしょう?」
「それは……」
「それとも、お母様とお別れして、新しい人と子供を作るつもりですか?」
この国は一夫一妻制で、それは貴族や王族だからと言って敗れるものではない。
そもそも一夫一妻制になった原因が、過去の国王が各地の貴族から優秀なものをかき集めてハーレムを築いたことで、それによって人が住める領域が小さくなり反乱がおきたのよね。
だから新しく妻を迎える場合には離婚をして、その後に新しい妻と結婚しなおすしかない。
「そんなことをするかっ! 私が愛しているのはレベッカだけだ!」
「あなた!」
「おまえ!」
「はいはい、お二人が相思相愛なのはわかりました。でしたら、私が王家に嫁ぐのは無理でしょう?」
というか、この辺の話はずいぶん前にしたのだけれど、お父様は忘れたのかしら? まあ、大事なことだから改めて聞いたのかな?
「むう。……とにかく、ローズマリーは王家には興味がないということで良いのだな?」
「はい、それでいいです。私は次期公爵として公爵領を守りながら、本に囲まれて生活するのが夢ですから」
王家になんて嫁いだら、自由に本を作ることも出来なくなるだろうし、そうしたらこれ以上本が増えることが無くなってしまう。
いくら権力があってもそれでは意味がないし、お金に関して言えば王家と公爵家で使える金額はそう変わらないだろう。
「ですので、お父様には国王陛下から婚約の打診を断る権利をもらってきて欲しいのです。あと、上位貴族の子供の中から跡取りにならない子供のリストを」
「はあ……わかったよ」
「私もそれで良いと思いますわ。聞いた限りでは王子殿下も王妃殿下も、まともに教育されているか怪しそうですからね。王家に嫁いでもローズマリーが苦労するだけですわ」
ため息をつくお父様に対して、お母様が私の援護をしてくれる。
それもあるのよね。5歳になるのに下位貴族と同じ程度の教育しか受けていない、それなのに教育を見直そうともしない……そんな王家に嫁いでも苦労するだけよ。
このまま王家に嫁ぐことになったら、それこそ前世で読んでいた悪役令嬢物の主人公のようにボロボロになるまで使われた挙句、冤罪で追放されそうだわ。
「いや、王子殿下は教育さえ受ければ陛下のような賢王になるはず……」
「お父様。血を継いでいても国王陛下と王子殿下は違う人間です。賢王になるかどうかは、未来になってみないと分かりません」
お父様は国王陛下とは従兄弟だと聞いているから、昔の国王陛下と今の王子殿下を比べて言っているのだろうけど、前提が間違っている。
いくら似ていても国王陛下と王子殿下は違う人間だし、周りで支えてくれる人間も、これから出会う人間も全く違う。
似ているから、血を継いでいるからと言って、同じように成長すると思われては困る。
「そ、そうだな。実際に会ってみると、思っていた以上に陛下に似ていたから、勘違いしていた」
「ええ、国王陛下にも王子殿下にも失礼ですわ。王子殿下が成長するかは未来の話です。今だけを見れば、下位貴族と同程度の教育しか施されていない子供ですわ」
まあ、つまり何が言いたいかというと、勉強から逃げ回っているただのクソガキということ。
そんな人のために時間を使うくらいなら、私は新しい本を作るわ。




