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22 スペンサー子爵領からの届け物

「届いたー!」


 エイミーに作った物語の校正をエイミーと一緒にしていると、あっという間に月日が過ぎてスペンサー子爵から本が届いた。

 ちなみに、エイミーに作った物語は入れ違いでスペンサー子爵領から届けてくれた人に預けたから、結局お母様も使用人も本ができるまで内容は知らないままよ。


「お嬢様、こちらはどう分けますか?」


「100冊刷っていただいたけれど、お父様に渡す10冊は先に取り分けておいて。あとは私たちや使用人、お母様に渡す分が54冊。残りの36冊は在庫として倉庫にわかるように置いておいて」


 前世だったら段ボールに目印をつけておくところだけれど、この世界には段ボールなんてないから保管はそのまま置いておくか木箱に入れるか。

 そのまま置いておくのはほこりをかぶるから木箱に入れたいところけれど、そうすると中身が何かわかりづらくなるというデメリットがあるのよ。


「はい、わかるように保管しておきます」


「ええ、そうして。お父様やお母様が宣伝した先から注文が入るかもしれないからね」


 というか、注文が入ってもらわないと困る。私は自分で作った本で本棚を埋めたいのではなく、様々な種類の本が読みたいのだ。

 そのためには、たくさんの人に本を読んでもらって、新しい本を作ってくれる作家を育てなければならないからね。


「ローズマリー、スペンサー子爵から本が届いたと連絡がきたよ」


「ローズマリー、お母様にも早く本を見せてちょうだい」


 仕事中だから、ということで連絡していなかったお父様とお母様がやってきて、本をねだってきた。

 確かに自分が関わっている本だから気になるのはわかるけれど、仕事を放り出してやってくるのはどうなのだろうか?

 まあ、大人とはいってもお父様もお母様も20代前半らしいから、仕方がないか。


「はい、お二人の分は分けてありますよ。お父様には宣伝用も含めて10冊、お母様はとりあえず2冊ですね」


「助かるよ、ローズマリー。陛下に軽く本を作り始めたと話したら、早く献上してくれとせっつかれていてね」


 お父様は公爵だから仕方ないけど、王族との距離が近いなぁ。


「ローズマリー、私には2冊だけなの?」


「はい。お母様が読む分とお茶会で広める時に使う分です。公爵家の寄子にはこちらから郵送しますから、お母様は寄子以外の貴族の方に宣伝をお願いします」


 今回の本は私の趣味で作ったもので公爵家の事業ではないから、本の配分に関しても王族に献本する以外は自由だ。

 私とエイミーに1冊ずつ、お母様に2冊、お父様に10冊……これは王族への献本も含むわ。あとは寄子の貴族に送る分で20冊、購入を希望した使用人にそれぞれ1冊で30冊。

 公爵家の事業となった時にはお金をとって貸し出しにするつもりだけれど、今回の本は私の趣味で本を広める目的だから下賜という形をとるわ。


「で、お父様にはこちらの20冊も」


「ああ、寄子に配る分だね。ローズマリーが作成した手紙と一緒に送るよ……しかし、20冊?」


「スペンサー子爵の分も入っています。作った本人ですから三本くらいは持っていると思いますが、次期公爵からの下賜品をスペンサー子爵だけ持っていないのは問題になりますから」


「よく勉強しているね。確かに自領が作り出しているものとはいえ、下賜品、それも形が残る本を持っていない寄子が出るのは良くない」


 これが果物や穀物なんかの消え物なら問題ないのだろうけど、形が残るものとなると他の寄子がスペンサー子爵を訪ねてきた時に現物を持ってないと問題になる。


「ああ、そうなると私からの下賜品というのがわかるようにしたほうが良いですか?」


「ん? そうだね。スペンサー子爵のことを考えると、見本にはない目印があったほうが良いかな?」


 ん~、そうなると検品印みたいなものを押すのが良いかな? 公爵となれば印章が使えるけれど、あくまでも次期公爵である私にはまだ使えない。

 となると、私だけの印章というか、ハンコを作って押すのが良いか。


「エイミー、厨房からお芋とナイフをもらってきてくれるかしら?」


「お芋ですか? かしこまりました」


 私はこれでも貴族だから本当は金属の印章を作らせたほうが良いのだろうけれど、今回は時間がないから芋版で済まそう。

 前世では年賀状を芋版で作るのが流行っていたから、意外と芋版の作り方は覚えているのよね。

 とりあえず、私の名前は入れるとして、それでいいかな?


「お父様、公爵家の紋章や直轄領だけで採れる花とかはありますか?」


「どうしてだい?」


「簡単に作れそうなら印として使おうかと」


 そう言いながら、私は手元の紙に芋版に使う見本を書いていく。この世界の文字でローズマリー・グラースと書いてみるけれど、やはりこれだけでは寂しい。

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