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19 詳細を詰める

「盛り上がっているところ悪いが、ローズマリーと相談させてもらえるかな?」


 エイミーに向けた物語の作成について盛り上がっていると、ノックの音の後にお父様が入ってきた。

 本来なら入室の合図を送った後に入るのがマナーだけれど、この談話室は秘密はないという意図で作られた部屋なので扉は開け放してあるのだ。

 そんな理由で全員が油断している状態でお父様がやってきた、というわけね。


「お父様。こちらは問題ありません」


「あなた。スペンサー子爵はよろしいのですか?」


「ああ、子爵との話し合いは終わって、今しがた見送ってきたところだ」


 本来なら上位者であるお父様は相手を見送る必要はないのだけれど、今回はこちらが呼び出したことと、面倒なことを頼んだからわざわざ見送ったのだろう。


「お父様、相談とは何ですか?」


「その前に応接室へと移動するよ。ここでは相談事が漏れてしまうからね。……ああ、メイドと侍女は部屋には入らないように」


「「「「かしこまりました」」」」


 お父様の先導に従ってついていくと、そこはスペンサー子爵と面会をしていた応接室。確かにここなら声は外に漏れないわね。

 侍女とメイドがお茶の準備だけをして退室をすると、静かにお父様が話し始める。


「まず、スペンサー子爵との話し合いで本を作るための材料などは用意してもらえることになったよ」


「ありがとうございます、お父様。」


「しかし、スペンサー子爵からはとても下位貴族や平民が手に取れるような値段にはならないということだったよ?」


「考えはあります。まず最初に作る本はお父様に買っていただきます」


「ん?」


「お父様から各領主へと貸出という形で下賜されて頂ければ」


「ふむ……確かに公爵家には余裕があるけれど、それなら普通に下賜すればいいのでは?」


「そうすると乱暴に扱われるか、宝物のように扱われて読まれないか、どちらかになりそうです」


 お母様やエイミー、それに家庭教師に聞いた限りではお父様は各領主に慕われているらしいので、下賜という形にすると祀られる可能性がある。

 それに自分のものになったと思えば子供が乱暴に扱っても叱らない親は出てきそうだし、貸出という形にして、汚損や破損をした場合の罰金を制定しておくのが無難だろう。


「ふふ、あなたから下賜されたら確かに恩を感じている家は宝物にしそうね」


「なので、貸出という形にして子供の教育に利用してもらうのが良いと思います。もちろん、汚損や破損させた際の罰金も制定して」


「ふむ」


「罰金を考慮して貸出料を安く設定すれば、下位貴族が借りることとも可能ではないかと。……あとは、お母様にお茶会に本を持って行ってもらいます」


「私?」


「はい。お母様やエイミーから聞いた限りでは、貴族女性は物語に興味がありそうなので宣伝してもらおうかと」


 子供に対する読み聞かせのため、という理由では借りない家でも夫人が読みたいからという理由では借りるかもしれないもの。

 特に汚損や破損に対する罰金を決めておけば、大人なら汚さないと判断して簡単に借りるかも。


「ふむ……あまり数が多くならないのなら、それで大丈夫そうだな」


「ところで、お父様。スペンサー子爵から紙の原料は聞けましたか?」


 紙の原料については、あらかじめお父様と相談してスペンサー子爵から聞き出すことの1つに設定してあった。


「ああ。子爵領で春に大量繁殖する植物が原料だそうだ。領民総出で刈り取るのだが、薪にするにも不適切で扱いに難儀していたものを、何かに使えないかと試行錯誤した結果だとか」


「大量繁殖……ですか。でしたら、そこまで問題にはならないかもしれませんね」


「ローズマリー、どういうこと?」


 よくわからないと言った顔で、お母様がこちらに問いかけてくる。


「今回の紙に限ったことではないですが、何かを大量生産する時には原料の確保が重要となります」


「それはわかるけれど……あれでしょ? 羊皮紙をたくさん確保すると動物が足らなくなるという」


「そうです。新しい紙は植物から作られていることは知っていましたので、繁殖が難しいものなら人工的に植樹などをして増やしていかないとと思っていたのです」


 前世とは違って、この世界では人口が少ないからなのか、資源に対する考え方が未成熟だ。

 食料に関わる物ならともかく、薪は森で拾い放題だし、川にも何を捨てても良いと考えている人が多いという。

 だからこそ、紙の原料は考えて確保しておかないと、すぐにでも枯渇する可能性があったのだけれど……大量繫殖して持て余しているようなら大丈夫かな?


「スペンサー子爵はそのことも伝えてあるよ。繁殖スピードが鈍らないのか、それと直轄領で増やせないかも相談している……ま、こちらは先の話になるだろうけどね」


 私としてはすぐにでも直轄領でも栽培したいものだけど、お父様の考え方もわかる。

 まだ私の本は作成にもこぎつけていないし、需要があるかもわからない。それなのに、大量繫殖して持て余すような植物を自領には持ち込ませたくないだろう。

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