18 お母様の乱入
「ねえ、ローズマリー。王子様とお姫様の恋愛話は考えていないの?」
エイミーとこれから作る恋愛話について語っていると、お母様も乱入してきた。
お母様付きの侍女やメイドも一緒に来たから、私が考えているよりも女性陣には恋愛話は受けが良いのかもしれない。
「王子様とお姫様……ですか。書けなくはないですが、結末が見えているではないですか? 王子様とお姫様の恋愛を邪魔するものなんて登場しませんし、それなら普通に自国の国王夫妻の実話を書いたほうが良いでのは?」
前世の物語では平民の娘と王子様の真実の愛が流行っていたが、現実にあんなことは起こらない。
そもそも、この国では高位貴族は一定の家格のある相手としか結婚できないし、出会いの場となる王立学園は平民と貴族の区画がはっきりと分かれていると聞いている。
「それは流石に不敬ね」
「名前を変えたとしても普通に王子様とお姫様が出会って恋に落ち、二人が協力して平和を勝ち取る……そんな話にしたら、普通にどこかの国の国王夫妻の姿が思い浮かぶと思いますよ」
細かい部分が違ったとしても、これは自分たちのことでは? と考える人は出てくるだろうし、平民が読めば自分たちの国の話だと勘違いするだろう。
もちろん、こういった物語がプロパガンダ的に使われるのは仕方のないことだけれど、私が読みたいのは書き手の趣味が見られるような話なので、そういった政治的な駆け引きは他の人に頼みたい。
「確かに、読んだ人が陛下たちの話だと勘違いされたら面倒ね」
「それに、これはエイミーへのご褒美の本なのでエイミーの趣味が優先です。エイミー、どんな主人公が良い?」
私の言葉に部屋にいる全員の視線がエイミーに突き刺さる
「……えっと、その」
「エイミー。他の人には文句は言わせないわ。これはエイミーへのご褒美なの」
私はそう言いながら、お母様や他の侍女、メイドを睨みつける。
恋愛話は自分の趣味が出るから口を出したくなる気持ちはわかるけれど、これは私からエイミーへのお礼なのだから文句は言わせない。
もしも自分で読みたい話があるのなら、自分の責任でお話を作ればいいだけのことだ。
「エイミー。主人公はどんな人物が良い?」
「……その、逆境にも負けずに頑張るのがいいと思います」
「逆境?」
「はい。私の家は貧乏で、結婚も諦めています。でも、そういう状況でも諦めない人を見てみたいです」
……ふむ。エイミーは確か20歳。前世なら花の真っ盛りって年齢だけど、王立学園に在籍中に婚約して卒業と同時に結婚するこの国では行き遅れと言われてもおかしくはない。
しかも、結婚をあきらめた理由が容姿や性格といったものではなく、実家が貧乏だからという自分ではどうしようもない理由ならコンプレックスにもなるかな。
「お相手は? 主人公を引っ張っていってくれるような強引な人が良い? それとも一緒に頑張ってくれる優しい人が良い?」
「……優しい人が良いです。二人で頑張って幸せになってほしいです」
まあ、その主人公とヒーローならハッピーエンドが良いよねぇ。
「エイミー。これからエイミーが好きそうな設定で物語を書くけれど、それでもエイミーの考えを完全に再現できるわけではないわ。もしも気に入らなかったら、次は自分で自分の好きな話を書くのよ?」
「……私が自分で、ですか!?」
「ええ。お母様たちもですよ。これから、私は様々な物語を書くつもりではいますが、自分の趣味に合わないからと言って口を出すのは厳禁です。自分が読みたい本がなければ、自分で書いてください」
私がそう宣言すると、みんながビックリしたような顔をする。
前世では作家が素人に自分で書けと言うのは傲慢だと言われることだったけれど、そんなのはクソくらえだ。
そもそも私は本を読みたいのであって、別に書きたいわけではない。この世界には私の読みたい本がないので私が書くけれど、そうでなかったら別に書く気はないのだから。
「でも、ローズマリー。物語なんて、どうやって書いたらいいかわからないわ」
「ですので、私が書く本を参考にするのは構いません。それを読んで本の書き方を学んで、自分の趣味が全開になるような物語を書いてください」
「ですが、お嬢様! ……その、自分で書くなんて恥ずかしいです」
「ええ、私も自分で書いた話を他の人に見せるなんて恥ずかしいわ。でも、そうしなければ本は増えないのだもの」
別に私に羞恥心がないというわけではない。私だって自分の創作物を他人に見られるのは恥ずかしいし、前世で小説を投稿していた時も恥ずかしかった。
でも、自分が読みたいジャンルの小説を増やすためには、少しでも母数を増やしてジャンルを活性化させなければならなかったから、我慢して投稿していただけだ。




