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17 面会の成功と報酬

「やったわ! エイミー!」


 自室に戻るまでは淑女然としていてた私だけれど、自室に入って扉が閉まったのを確認すると思わず大きな声が出てしまった。


「お嬢様、はしたないですよ」


「でも、エイミー! スペンサー子爵との面会が上手くいったのよ! これで本が作れるわ」


 確約というわけではないけれど、お父様とスペンサー子爵との間で仮契約のようなものはできたから、大成功と言っていいだろう。


「ふふ、それは良かったですね」


「本当に! エイミーたちのおかげでもあるから、本が作れたらお礼をしなきゃね」


「私たちのおかげ? 特に何もしていませんが」


「何を言っているの? みんなが地元の伝承や寝物語を教えてくれたからこその成功だもの」


 各地で伝わっているお話を直接伝えたからこそ、お父様もスペンサー子爵も価値があるということに気づいたのはあると思う。

 私が適当に描いた物語だったのなら、あそこまでの反応にはならなかっただろう。


「そんなものでしょうか?」


「そうよ。それにスペンサー子爵との面会に際して、完璧に身支度をしてくれたり、書斎で本を用んでいる時も手伝ってくれたでしょう?」


「それは職務の範囲ですので」


「いいのっ! 私が感謝したいって言ってるんだから。……で、エイミーは何か欲しいものとかない?」


「……欲しいもの」


「まあ、本を作るのにお小遣いの大半を使っちゃうから、あんまり高価なものは無理だけど」


「……でしたら、物語を作ってほしいです」


「物語? エイミーたちが教えてくれたような寝物語?」


「ではなく、面会前にお嬢様が話していた恋愛に関する物語です」


 ああ、そういえばスペンサー子爵との面会前にエイミーと貴族女性向けには恋愛をメインにした話の方がウケが良さそうだと話していたような。


「それくらいでいいなら、良いけれど……どんな話が良い?」


「どんな?」


「うん。二人が幸せになるハッピーエンドがいいのか、それとも引き裂かれる悲恋がいいのか。他には、恋愛をする二人の年齢差とか。同い年がいいのか、それとも年が離れているほうがいいのか」


 一口に恋愛物語といっても、どんな話が好きかは千差万別。前世でもハッピーエンドが好きな人と、メリーバッドエンドが好きな人がいたし、お礼なのだからエイミーの趣味に合わせてあげたい。


「そんなに物語が思いつくのですか?」


「思いつくというか、とっかかりかな? 伝承や寝物語もそうでしょう? 危険な場所があったり、危ない事件があったりして、それを忘れないために物語にする」


「確かにそうですが」


「それと一緒。恋愛って言われても様々な形の恋愛があると思うし、何か物語にするためのエピソードというか、ポイントがあったほうが書きやすいと思うのよ」


「……お嬢様、本当に5歳ですか?」


「5歳だけれど、高位貴族としての教育を受けているからね。歴史の勉強では王室だったり、高位貴族のドロドロとした恋愛を学ばされるのよ?」


 物語を書くとなれば、エイミーだけじゃなくて他の人にも、なぜ書けるのか? と突っ込まれることは想像に難くないので、理由は準備済みだ。

 現在の王国では重婚は罪だし、王族であっても第二夫人を娶るということはないけれど、昔はそうではなかった。

 気にいらないからと親が決めた婚約者を捨てた王子、妻の妹を第二夫人に迎えた侯爵、逆に幼馴染の騎士と添い遂げるために出奔したお姫様……バリエーションに富みすぎでしょ。


「確かに昔の高位貴族の恋愛観はおかしかったですが……そこまでドロドロしていましたか?」


「教科書だと家系図が載っているだけだったりするけど、家庭教師に聞いたら色々と裏事情を教えてくれたわよ」


「そうなのですか……学園では詳しくは教えてくれませんでしたね」


「よくわからないけれど、学園では大勢が一緒に授業を受けるのでしょう? 教師も全体の平均に合わせるから、詳しくは教えなかったんじゃない?」


 王族や高位貴族にはドロドロとした恋愛をしていた歴史があるけれど、子爵家や男爵家はそもそも不倫や浮気をするほどの財力がない。

 下位貴族に関する注意点としては、架空の投資話や横領などの金銭的なトラブルが主だったわ。

 結局のところ恋愛をするにしても金銭的に恵まれてないと難しいというところなのだろう。


「……お嬢様、もしかして恋愛話は昔の話を参考に?」


「ドロドロとした恋愛話が良いなら、それもいいわね。でも、他にもお父様とお母様みたいに年中ラブラブなカップルでも良いし、庭師とメイドのような清純な関係でも良いですよ?」


 公爵家で働いている人たちにとって情報漏洩は重い罪になるので同僚と恋愛したり結婚したりすることが多いので、観察対象に困ることはない。

 というか、お父様とお母様が貴族とは思えないくらいに距離が近いので、そちらを参考にしているだけでも恋愛小説が書けるくらいだ。


「で、エイミーはどんなお話が好み?」

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