第14章 女神の選択
しかし、なぜまだHPゲージが出ないんだ?
ずっと、ヴィロシに一度も本当に傷を与えていないからボス戦が発動しないのだと思っていた。でもフラグのように自分で自分を傷つけてもダメージが入るなら、ヴィロシもダメージを受けているはずだ。しかし彼女は風の中に身を隠し、HPゲージも数値も何の表示もない。
どうしてもあの女神の像に目が向く。
最初からおかしいとわかっていた——彼女は静かすぎる。最初から最後まで一度も音を立てず、ただそこに立っている。まるで結末を知っている芝居を見ているかのように。前に彼女に向かって突っ込んだ時、ヴィロシの反応はほとんど爆発的だった。彼女は像に一歩も近づけさせない。
ヴィロシがそこまで信じるのは、何かが約束されているからだ。そして彼女がHPゲージを出さないのも、その約束の一部なのか。
風向きが変わった。ヴィロシが距離を取った——もう刺剣に触れるわけにはいかない。
しかし彼女が知らないのは、腕を一本失ったことで、その移動経路が露わになっていることだ。風の音が変わった。失われた腕のせいで、気流に隙間ができている。どの方向に動くかだけでなく、次の着地点まで読める。
彼女にはまだ片手がある。刺剣の液体にはもう触れられないが、残った方の手で風を操ることはできる。ただ風が彼女の周りを流れる時、左半分と右半分では音が違った。
【好機だ。ヴィロシが女神の像から離れた。彼女の速度ならすぐに追いつけるが、その隙に像に近づける。】
もう一度女神の像に向かって突っ込む。
「また彼女に手を出そうと!」 ヴィロシの声が横から追いかけてくる。連射される弓のように速い口調で。「小さな子、俺の行動がまだわからないのか? 誰にも彼女を傷つけさせない!」
彼女が到着した。氷の刃が手を切り裂き、痛みで刺剣を手放す。剣が手から離れた瞬間、一陣の風が横から受け止め、空中に浮かべてゆっくりと彼女の前に運んだ。
彼女は刀身のピンク色の液体を見下ろす。それから眉をひそめた——それはそれまで彼女の顔に一度も浮かんだことのない表情だ。怒りではなく、困惑を伴う迷いだった。
「……この液体。」 口調が一拍遅くなった。「……もしかしたら彼女のものかもしれない。」
一拍置いて、声が低くなった。「……くそっ、あの愚かな子はまた誰かに騙されたのか?」
風はまだ剣を支え、彼女の前に浮かんでいる。彼女はそれを下ろさず、握りもせず、ただ空中に留めたまま、まるでそこにあることを忘れているかのようだ。
【「彼女」? 誰だ?】
考える時間はない。ヴィロシがまだ剣を見ている隙に、傷ついた手を振り、再び像に向かって突っ込む。
そして後ろ首を掴まれた。法衣の襟を誰かに掴まれ、そのまま宙に浮かされる。
「武器もないのにまだ何をするつもりだ、小さな子?」
横を見ると、彼女はいつの間にか背後に立っていた。あの刺剣がなければ、本当に風の音が聞こえない。
「お前は全然HPゲージを出さない。」 もがく。「こんな状態でどうやって戦えっていうんだ?」
「HPゲージって何だ?」 彼女は首をかしげる。「斬殺線のことか?」
「言ってもわからないだろ。」 抵抗をやめる。「これはズルだ。離せ。」
「誰が正々堂々と戦うって言った? 俺は他の連中とは違うんだ。」
【そうだな……能力がチートみたいなものだ。誰が勝てるんだ。】
「動くなよ。」 彼女の声がふと少しだけ柔らかくなった。演じている状態から一瞬抜け出したように。「お前が何かを見つけたのは知ってる。それは俺の助けになるものなんだろ?」
動きを止めた。
「そうだ。」 言う。「でもお前はまだ戦わなきゃいけない。わかってるだろ。」
「わかってる。俺が死ななきゃあのものは出てこない。」 声が語尾でそっと沈んだ。「でもなぜ死ななきゃいけないんだ? 俺は死が嫌だからこそ、女神様を敬っているんだ。」
「本当か? それならなぜ死を招くようなことをする?」
「あいつらが自業自得なだけだ。」 またあの速い口調に戻る。「あの連中は女神を……あんな姿に変えた。俺の同族を娯楽のために改造したんだ。」
彼女は言い方を変えた。「像」とも「生きたまま」とも言わなかった。しかし口調は先ほどより少し沈んでいて、自分でもうまく言えないことがあるようだ。
言葉は速いが、今回はそれに惑わされなかった。これまでの断片的な記憶——女神がああいう演目を好んでいたこと、君主が改造のために閉じ込められたこと——ずっと時系列通りだと思っていた。しかし今彼女が話す順番はまったく違う。
【……物語の全貌はまったく別物だったのか。】
「でもお前は彼らを救おうとしたことがあると言っただろ?」
「そうだ。慈悲が平和をもたらすと思っていた。」 声が一瞬低くなる。「しかし彼らは依然として女神に敬意を払わず、反省もしなかった。天災の降臨が罰なんだ。」
「なるほど。」 彼女を見る。「じゃあお前が言ってた『彼女』って、誰だ?」
首をかしげて、答えを考えているようだった。
「一人は……あの液体を持ってきた愚かな子だ。お前もそのうち会うだろう。彼女を悲しませないでほしい。」
手を伸ばして、もう一方の手袋を外す。虫の形をした指輪が指の付け根にはまっていた。
「……そしてもう一人の彼女は」 指輪を見下ろす。「女神と同じくらい敬愛できる存在だ。彼女は決して満たされない欲望と共にあり、巧みな言葉を持ち、最高の贈り物をくれる。」
指輪にキスをした。
「あの時はプロポーズされるかと思ったよ。」 口調が急に軽くなり、他人事のように。「何年も復讐と、逝った同族を救うことに忙しくて、愛が必要だってことさえ忘れてた。」
【また虫の指輪だ。あの女も……ここに自分のものを残している。でもなぜ彼女が直接渡した人はみんな彼女を好きになるんだ? ニクスもそうだった。】
「もちろん」 ヴィロシが指輪を手のひらに戻す。「彼女はなぜ自分が封印され、なぜこの世界に留められているかも教えてくれた——同族と引き離され、永遠に死なない敵と一緒にいること。朔は誰も逃がさない。たとえ英雄でも、この世界に留まって彼女の思うままにされるだけだ。俺が好きなセレスやお前も、結局は俺を殺しに来る。俺の能力が脅威なら、他の連中も同じだ。」
【……彼女の言うことは本当なのか? 朔は決して誰も逃がさないのか?】
しかしヴィロシにはもう行く場所がない。朔が彼女たちを輪廻の世界に連れてきたのは、彼女たちに他に行く場所がなかったからだ。フラグの記憶、コロティアの廃墟、カタイナの鎖——彼女たちは自分の世界に戻れない。
ヴィロシはただ狂ってしまっただけだ。もしかしたら超速の力は脳も回転させすぎるのかもしれない。回りすぎて乱れてしまった。
「じゃあ——」 言う。「死ぬ前に女神様の本当の姿を見せてくれないか?」
「何?」 本当に聞き取れなかったようだ。「こんな距離でも見えないのか?」
「髪で半分隠れてる。」 言う。「どうやって見ろっていうんだ?」
「まさか何か企んでるんじゃないだろうな、小さな子? 騙されないぞ。」
「まさか。武器はまだお前のところにあるし、俺自身もお前の手の中だ。どうやって企むっていうんだ?」
二秒間じっと見つめられて、それから彼女は笑ったようだった:「わかった。女神様の御姿を見ずに死なせるわけにはいかないな。見せてやろう。」
彼女は俺を抱えたまま像の方へ飛んでいく。ゆっくりと顎を上げ、唇をわずかに開く——腐蝕術はもう用意してある。
そして像の顔が見えた。
見えそうになったその瞬間——像が動いた。
崩れるのでも、砕けるのでもない。真ん中から縦に割れ目が入り、両側へ滑り開き、内部を露わにした——深い、空洞の、何もない。
ずっと立っていた空の殻。
その空洞から一陣の風が巻き出した。それは俺に向かって飛んではこなかった。まっすぐに俺を越え、ヴィロシの前で浮かんでいた刺剣を巻き上げた。
風が変わった。剣先が向きを変えた。
ヴィロシが止まった。
「……女神様?」
刺剣が彼女の首を貫いた。手が襟から離れた。地面に落ち、振り返って彼女を見る。彼女の指はまだ俺を掴んだ姿勢を保っていたが、もう何も掴んでいなかった。
剣はまだ首の側面に刺さっている。傷口の縁から風の紋様が溢れ出し、剥がれ落ちる細い糸のように、彼女の体を一巻きずつ奪っていく。
「……なぜ……」 唇が動く。「……そんな……」
彼女は俺を見ていた。死ぬまで理解できなかった。
そして風が止んだ。彼女はそこに立ち、最後の姿勢を保ったまま、ゆっくりと前に倒れた。着地の音はなかった。
歩み寄り、腰をかがめて刺剣を抜き、手のひらに握る。
【—システム通知:【名無しの遺燼】を獲得しました。—】
その場に立ち、刺剣を握り、手の中のものを見下ろす。
あの空の殻はまだ立っている。真ん中の裂け目は癒えない傷のように開いたまま。ヴィロシは死ぬまで「なぜ」と問い続けた。
しかし彼女は間違った相手に問うていた。
彼女は女神が囚われていると思っていた。だがさっきあの像が自分で開き、内部から彼女を殺す剣を送り出した。女神を閉じ込めた者など存在しない。女神は最初から囚われてなどいなかった——それはただ作られてその場に立っていただけの殻だ。
ヴィロシは言っていた。指輪をくれた者は「決して満たされない欲望と共にあり」、朔は誰も逃がさないと教えたと。そして女神は敬愛すべき存在だとも言っていた。
しかしこの二つは同じことではないかもしれない。
指輪をくれた女は彼女に敵意を与えた。そして女神の像——作られた殻——はただそこに立ち、動くべき時が来るのを待っていただけだ。ヴィロシはそれらが同じ方向から来たものだと思っていた。
女神が誰かはわからない。なぜ彼女を殺したのかもわからない。
ただ一つわかっているのは——ヴィロシは死ぬまで自分が女神のために戦っていると思っていて、女神は一度も彼女の保護を必要としなかったということだ。彼女はたまたま二つの異なる方向からの風の間に立ち、両方を同時に掴めると思っていただけだ。
指輪は彼女と共に消えた。カタイナと同じように、彼女は自分に属するすべてを持ち去った。
遺燼を見下ろし、しまい込む。
風が止み、城も静かになった。
戻る時だ。しかし今回は聞くことが多すぎる。
ヴィロシの言葉と朔の言葉は合わない——女神のことだけでなく、朔自身のこと、彼女が何をしているのか、なぜ何も語らないのか。
以前は彼女に自分の理由があると思い、聞かなくてもいいと思っていた。しかし今はもう「聞かなくてもいい」という段階ではない。
遺燼を握りしめ、振り返って教会の方へ歩き出す。砕石を踏む足音が空っぽの城に響く。一歩一歩。
朔は石の台座に座って待っている。しかし今回は、俺が口を開く番だ。




