第15章 より深き影
「リリィ、何かしたの? 世界が急にこんなに暗くなったわ。」
朔の声が篝火の方から聞こえた。
顔を上げて見回すと、教会のステンドグラスから差し込む光が異常に暗くなっていた。夜のような暗さじゃない。もっと重いものだ。まるで光が何かに首を絞められているようだった。
「ニクス様の記憶を少し見たんだ。」
起き上がる。
「でも出てきたらこんな風になってた。理由はわからない。」
「記憶?」
朔が一瞬間を置いた。
「ニクス様、またヘリアのことを見てしまったのかしら……彼女の傷を見ればわかるわ。彼女は自分に残された唯一の勇気を、彼女を殺すその瞬間に使い果たしてしまったのよ。」
「朔もそのことを知ってたのか?」
「だって私が彼女たちを連れて帰ったんだもの。彼女たちの過去も多少は知っているわ。」
【……確かにそうだけど、今まで他の人のことを自ら話すことはなかったのに。なぜニクスにだけそんなに気を遣うんだ?】
深くは考えなかった。闇はまだ染み込んでいる。まるで墨が空気の中でゆっくりと滲んでいくように。
「輪廻をリセットしてくる。この闇はそのうち教会の中まで入り込んでくる。」
「わかったわ。炎の温度に気をつけてね。」
篝火に足を踏み入れ、朔が背を向ける。
そして痛みが来た——これまでのどの時とも違う。灼熱ではなく、誰かに裏返されて内側から引き裂かれるような感覚。綿、糸、骨の継ぎ目まですべてが痛みを訴えている。
【警告警告!無痛の人の特性がまもなく消失します。プレイヤーは準備を整え、戦闘戦略を早急に変更してください。】
【……? 今になってこれを出すのか?】
「あああああ! 熱い熱い!」
朔が振り返って俺を押さえつけ、体の火花を叩き消す。
「なんでそんなに反応が大きいの?」
「なんで俺の無痛が消えたんだ?」
息を整える。
「前から兆候はあったけど、カタイナに鎖で縛られたせいだと思ってた。」
朔が手を止め、指を俺の肩の上に浮かせた。何かを確かめるように。
「……もしかしたら、あなたがこの世界に長くいるようになったからかもしれないわ。」
それ以上は言わなかった。手を引っ込める。
「これからは痛みを感じるわ。今までみたいに結果を考えずに行動することはできなくなる。輪廻のリセットがもっと苦しくならないように、何とか考えてみるわ。」
【ここに長くいるほど……魂が完全になる。その代償がただ痛みをよりリアルに感じることだけだとしたら? じゃあ俺がぬいぐるみである意味は何なんだ——血を見て気絶しないってことか?】
「布地を取り替える時期ね。ついでに診てあげようか?」
「ああ。」
朔が鎧を外して全体を点検する。
「この素材はもうあまり丈夫じゃないわ。もっと良いものを見つけたら、交換しに来てね。」
「うん、覚えておく。」
【昔遊んでた時はシステムが教えてくれたのに、今は全部自分で覚えなきゃいけない……こっちに気を取られるとあっちを忘れる。】
縫合剤を吹きかけ、鎧を着直してから、婪の方を見る。
隅にうずくまっていて、戻ってからほとんど動いていなかった。耳は垂れ、尻尾も下がっている。
「まだ彼女のことを心配してるのか?」
近づいて頭を撫でる。
「もうすぐ彼女はずっとお前のそばにいられるようになる。傷つくこともなくなる。信じろ。」
「思い出した……全部思い出した。」
婪が顔を上げる。篝火の光がその目の中で跳ねている。
「あの太陽、嫌いだ。すごく嫌いだ。この火も好きじゃない。あいつは彼女の光だ。」
「わかってる。でも影は容赦しない。俺たちはまだこの光で影を追い払う必要がある。ニクス様を救ったら、また黒に戻ろう。いいか?」
「いいぞいいぞ。」
尻尾が一回振られた。
背中に飛び乗り、教会の扉の前に立つ。
開ける前に、自分の手を下に向けた——新しい布地に換えたばかりで、指先に風の流れがはっきりと感じられる。
今回は違う。再生の祝福も、無痛もない。一歩一歩が最後の一歩かもしれない。
「……準備はいいか?」
「いいぞいいぞ。早く彼女を助けたい。」
扉を押し開ける。
暗影回廊がすぐ外にあった——教会の扉が回廊の入り口に直接繋がっていた。
婪の火が輝く。しかし影は退かなかった。
前より凶暴に、石の隙間から染み出し、火の光の縁で探りを入れ、積み重なる。何かに怒りを掻き立てられたようだ。
最初の一歩を踏み入れた瞬間、影が襲いかかってきた。
痛い。無数の小さな歯が同時に足首と膝に食い込むように、布地の隙間から刺すような灼熱が入り込んでくる。
体を縮めて下を見ると、布地に小さな黒い染みができていて、その縁がゆっくりと広がっている。
【……これが痛みを感じるってことか。】
以前なら影に触れても血条が減るだけで、痛みはなかった。
今はわかる。針で刺されるような、引き裂かれるような、何かが少しずつお前を食い荒らしている感覚。速くはないが、止まない。
婪の耳が後ろに倒れ、低く唸りながら頭を振った。炎が急に一回り大きくなる。
影はしばらく後退したが、あの染みはまだ残っていて、刺すような痛みも消えず、抜けない棘のようにそこに突き刺さっていた。
自分の脚を押さえ、その痛みが治まるのを待ってから顔を上げる。
回廊の奥は前より静かだった。より暗い場所で何かが待っている。
反手双刃を握りしめる。刃の柄の模様が今ははっきりと感じられる——以前はそんな細かい凹凸に気づいたこともなかった。
「……痛みを感じるようになったなんて、本当に慣れないな。」
婪は何も言わなかった。しかし一度立ち止まり、振り返って俺を見た。
その耳を握りしめ、回廊の奥へ向ける。
「……行くぞ。」
再び歩き出した。
俺はまだ痛い。婪も痛い。でも前に待っている人がいる。痛みを理由に立ち止まれる距離ではない。




