表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ぬいぐるみ、俺は〈十八〉の全女ソウルライクBOSSたちに真の終局をもたらす!  作者: 野間羊
第5巻 ニクス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/91

第15章 より深き影

「リリィ、何かしたの? 世界が急にこんなに暗くなったわ。」


 朔の声が篝火の方から聞こえた。


 顔を上げて見回すと、教会のステンドグラスから差し込む光が異常に暗くなっていた。夜のような暗さじゃない。もっと重いものだ。まるで光が何かに首を絞められているようだった。


「ニクス様の記憶を少し見たんだ。」

 起き上がる。

「でも出てきたらこんな風になってた。理由はわからない。」

「記憶?」


 朔が一瞬間を置いた。

「ニクス様、またヘリアのことを見てしまったのかしら……彼女の傷を見ればわかるわ。彼女は自分に残された唯一の勇気を、彼女を殺すその瞬間に使い果たしてしまったのよ。」

「朔もそのことを知ってたのか?」

「だって私が彼女たちを連れて帰ったんだもの。彼女たちの過去も多少は知っているわ。」


【……確かにそうだけど、今まで他の人のことを自ら話すことはなかったのに。なぜニクスにだけそんなに気を遣うんだ?】


 深くは考えなかった。闇はまだ染み込んでいる。まるで墨が空気の中でゆっくりと滲んでいくように。


「輪廻をリセットしてくる。この闇はそのうち教会の中まで入り込んでくる。」

「わかったわ。炎の温度に気をつけてね。」


 篝火に足を踏み入れ、朔が背を向ける。


 そして痛みが来た——これまでのどの時とも違う。灼熱ではなく、誰かに裏返されて内側から引き裂かれるような感覚。綿、糸、骨の継ぎ目まですべてが痛みを訴えている。


【警告警告!無痛のムツウノヒトの特性がまもなく消失します。プレイヤーは準備を整え、戦闘戦略を早急に変更してください。】


【……? 今になってこれを出すのか?】


「あああああ! 熱い熱い!」


 朔が振り返って俺を押さえつけ、体の火花を叩き消す。

「なんでそんなに反応が大きいの?」

「なんで俺の無痛が消えたんだ?」

 息を整える。

「前から兆候はあったけど、カタイナにで縛られたせいだと思ってた。」


 朔が手を止め、指を俺の肩の上に浮かせた。何かを確かめるように。

「……もしかしたら、あなたがこの世界に長くいるようになったからかもしれないわ。」


 それ以上は言わなかった。手を引っ込める。

「これからは痛みを感じるわ。今までみたいに結果を考えずに行動することはできなくなる。輪廻のリセットがもっと苦しくならないように、何とか考えてみるわ。」


【ここに長くいるほど……魂が完全になる。その代償がただ痛みをよりリアルに感じることだけだとしたら? じゃあ俺がぬいぐるみである意味は何なんだ——血を見て気絶しないってことか?】


「布地を取り替える時期ね。ついでに診てあげようか?」

「ああ。」


 朔が鎧を外して全体を点検する。

「この素材はもうあまり丈夫じゃないわ。もっと良いものを見つけたら、交換しに来てね。」

「うん、覚えておく。」


【昔遊んでた時はシステムが教えてくれたのに、今は全部自分で覚えなきゃいけない……こっちに気を取られるとあっちを忘れる。】


 縫合剤を吹きかけ、鎧を着直してから、婪の方を見る。


 隅にうずくまっていて、戻ってからほとんど動いていなかった。耳は垂れ、尻尾も下がっている。


「まだ彼女のことを心配してるのか?」

 近づいて頭を撫でる。

「もうすぐ彼女はずっとお前のそばにいられるようになる。傷つくこともなくなる。信じろ。」

「思い出した……全部思い出した。」


 婪が顔を上げる。篝火の光がその目の中で跳ねている。

「あの太陽、嫌いだ。すごく嫌いだ。この火も好きじゃない。あいつは彼女の光だ。」

「わかってる。でも影は容赦しない。俺たちはまだこの光で影を追い払う必要がある。ニクス様を救ったら、また黒に戻ろう。いいか?」

「いいぞいいぞ。」


 尻尾が一回振られた。


 背中に飛び乗り、教会の扉の前に立つ。


 開ける前に、自分の手を下に向けた——新しい布地に換えたばかりで、指先に風の流れがはっきりと感じられる。


 今回は違う。再生の祝福も、無痛もない。一歩一歩が最後の一歩かもしれない。


「……準備はいいか?」

「いいぞいいぞ。早く彼女を助けたい。」


 扉を押し開ける。


 暗影回廊アンエイカイロウがすぐ外にあった——教会の扉が回廊の入り口に直接繋がっていた。


 婪の火が輝く。しかし影は退かなかった。


 前より凶暴に、石の隙間から染み出し、火の光の縁で探りを入れ、積み重なる。何かに怒りを掻き立てられたようだ。


 最初の一歩を踏み入れた瞬間、影が襲いかかってきた。


 痛い。無数の小さな歯が同時に足首と膝に食い込むように、布地の隙間から刺すような灼熱が入り込んでくる。


 体を縮めて下を見ると、布地に小さな黒い染みができていて、その縁がゆっくりと広がっている。


【……これが痛みを感じるってことか。】


 以前なら影に触れても血条が減るだけで、痛みはなかった。


 今はわかる。針で刺されるような、引き裂かれるような、何かが少しずつお前を食い荒らしている感覚。速くはないが、止まない。


 婪の耳が後ろに倒れ、低く唸りながら頭を振った。炎が急に一回り大きくなる。


 影はしばらく後退したが、あの染みはまだ残っていて、刺すような痛みも消えず、抜けない棘のようにそこに突き刺さっていた。


 自分の脚を押さえ、その痛みが治まるのを待ってから顔を上げる。


 回廊の奥は前より静かだった。より暗い場所で何かが待っている。


 反手双刃ハンシュソウジンを握りしめる。刃の柄の模様が今ははっきりと感じられる——以前はそんな細かい凹凸に気づいたこともなかった。


「……痛みを感じるようになったなんて、本当に慣れないな。」


 婪は何も言わなかった。しかし一度立ち止まり、振り返って俺を見た。


 その耳を握りしめ、回廊の奥へ向ける。

「……行くぞ。」


 再び歩き出した。


 俺はまだ痛い。婪も痛い。でも前に待っている人がいる。痛みを理由に立ち止まれる距離ではない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ