第5章 修復
「リリィ、どうしたのよ!」
教会に戻った途端、朔に気づかれた。
彼女は駆け寄って俺を持ち上げ、素早く篝火のそばに置いた。HPとスタミナは回復したが、両腕は依然として空っぽのままだった。
【やっぱり篝火では欠損は治らないのか……これは厄介だ。】
「いったい何があったの?」
朔が俺の頭を撫でながら、声には焦りが混じっていた。
「どうしてこんなことに? 鎧が攻撃を防げなかったの?」
シエルも寄ってきて、慌てた表情で言う。
「そんなはずないのに……」
「違う、鎧のせいじゃない。」
俺は体を起こした。
「縫合剤を使わなすぎたんだ。コロティアのマップ以来ずっと使ってなかった。朔が布地を替えてくれればそれで済むと思ってた。」
シエルが一瞬止まり、それからじたばたと足を踏み鳴らした。
「守護者様は布地の交換だけを担当してるのよ! あたしが縫合剤を売ってるのは、それには別の役割があるからなんだから! なんでそんな大事なことを忘れちゃうの……」
そう言いながら俺の手に縫合剤を押し込もうとしたが、今の俺には受け取れない。
「腕は……持って帰れなかったの?」
朔が指でそっと両肩の欠けた部分を塞いだ。
「怪物に追われてる間、小僧は武器だけは守れたけど、腕は拾えなかった。」
「武器ならまた打てる。」コーラが初めて口を開いた。
「わかってる。でも武器にはフラグ様の飾りがついてるんだ。それはなくせない。」
その言葉を聞いて、朔の指が一瞬止まった。
ほんのわずかだったが、俺には感じ取れた。
【……何か変なこと言ったか?】
しかし彼女は何も言わず、指先に魔法陣を灯して、光の輪が肩から下へと伸びていった。
両腕を再構築しているのだ。
彼女の方を見ると、笑っているのに、額は汗でびっしょりだった。
その汗は彼女の上にとどまれず、熱せられた鉄鍋に水が落ちるように、じゅっと白い湯気になって消えていった。
平然を装っているが、目尻は常に潤んでいて、すぐに消えるものの、瞬きするたびにまた溜まっていく。
「朔、やめてくれ。」俺は言った。「辛そうだ。」
「大丈夫よ、魔法ですぐに腕は元に戻るから。」
篝火が小さくなっている。炎が低くなり、熱も退いている。
彼女はまた自分の命と引き換えに俺を完全にしようとしている。
「朔、もうやめてくれないか?」
もがいて立ち上がり、彼女の手から飛び降りた。魔法陣は俺が離れたことで中断された。
「リリィ、おとなしくして。」朔の手が空中で止まった。「腕がなければ、何もできないよ。」
「もっと良い方法があるはずだ。君が命を削って俺を助けるなんて、もう見たくないんだ。自分で何とかする方法を考える。」
【多分、もう一度戻れば腕はまだ見つかるはずだ。さっきの蛍みたいに。】
「リリィはまだ見つかると思ってるの?」朔が聞いた。
「違うの?」
【考えてみれば俺はぬいぐるみだ。影に奪われただけで、完全に消えるはずがない。】
「リリィ、あなたはセレス様の後を継いだのよ。」
朔が間を置いた。
「どうしてあなたなのかはわからないけど、確かなことが一つある——セレス様が失ったものは戻ってこない。あなたも同じよ。」
【……朔はなぜそこまでセレスのことを知っているんだ? 最初からずっとそうだ。彼女は俺にしか会ったことがないのに。】
「それは……」
「失ったものは、失われたままなの。」
【……いつからだろう、俺が「彼女たちを好き」だけじゃなくなったのは。】
昔の俺は、誰の物語を見ても「いいな」と思っていた。誰と誰がどんなふうに接していても嬉しかった。誰かが傷つけば胸が痛んだ——でもそれだけだった。画面越しなら、痛みが去った後で食事だってできた。
でも今は違う。朔が命を削って俺の腕を繋ごうとしている。フラグの飾りがなくなりそうになった時、自分の腕より慌てた。コロティアのあの自信のない心音を聞けば胸が苦しくなる。でも何を言えば踏み越えにならないのか、わからなかった。
【俺はもうセレスじゃない。俺はリリィだ。そしてリリィには、失いたくないものができた。】
口を開けて何かを言おうとした。
でもどこから言えばいいのか、わからなかった。
しばらくして、自分から彼女の手の中に飛び戻った。
魔法陣が再び光を放ち、両脇の空洞を少しずつ埋めていく。腕が戻っていく。その代償ははっきりと見えた。
「再生の祝福は、もうあげられないの。」
朔の声はとても小さかった。
「ごめんね、リリィ。これからはもっと頻繁に戻ってきてね。」
「構わないよ。元々必要なかったんだ。」
両腕が完全に戻った後、すぐに篝火のそばに跳び戻り、口で縫合剤の蓋を開けて、糸を肩口に吹きかけた。
【—システム通知:ほつれ状態を解除しました。—】
やっぱり、実際にこの世界に来ていると違う。マイナス状態が限界まで溜まっても通知が来ないし、装備の消耗度も表示されない。
新しい腕を動かしてみて、コーラのところへ行った。
「鎧はまだ直さなくていい。」
彼女が一瞥した。
「反手双刃はだいぶ鈍ってるな。研いでやる。」
武器を受け取り、うつむいて研ぎ始めた。
「そういえば、あの宝石は……どうなった?」
「彫り終わった。」
コーラは顔を上げなかった。
「シエルが指輪にすると言ってた。」
「指輪? どうして?」
「元々の用途はもう必要ないと言ってた。詳しいことは本人に聞け。」
「じゃあ買わなきゃいけないのか?」
「ああ。」
研ぎ終えた反手双刃を差し出した。武器の表面に小さな「+1」が浮かんでいる。
武器を受け取る。
「このソウル貨は受け取ってくれ。」
「なぜだ?」
「あんたは二度も武器をタダでくれたし、魂鍛石もほとんど使ってない。こんなに助けてもらって、どうやって感謝すればいいかわからない。」
「輪廻の世界では武器は手に入りにくい。それを知ってるから手を貸してるだけだ。」
彼女は顔を上げた。
「それに武器を作る材料はシエルが探してきてる。お前が感謝するなら、むしろシエルにすべきだ。」
「もう一つある。」
コーラがまたうつむく。
「魂鍛石がどの輪廻の世界にも散らばってることに、不自然だとは思わないか? 今は武器の強化にしか使えないけど、もしかしたらそれだけじゃないかもしれない。」
【そういえば……考えたこともなかった。それに、もっと上のランクの魂鍛石もあったはずだ。】
【各世界を渡り歩いてこんなものを残していけるやつ……まさかまたあの女か?】
考え込む間もなく、バッグの中で何かが動いた。
虫の形をした装飾品だ。勝手に飛び出してきた。
周りを見回す——シエルは棚を整理している。コーラは鉄床を拭いている。朔は石の台座に座り、目を閉じて片手で顎を支えている。
誰もそのネックレスに気づいていない。
俺だけに見えている。
朔はやっぱり消耗が大きかったんだ。わずかにひそめた眉を見て、胸が締め付けられるように痛んだ。
【いつもこうだ。何かあるたびに、俺はただ迷惑をかけるだけだ。】
「先に行くよ。」
「うん。」コーラが応じた。
「そうだ、シエル。」
振り返る。
「『大師』に会ったよ。頼まれてたものはもう渡した。」
「そうなの? よかった♡」
シエルが手にしていた品を置いた。
「そうだ、コーラから指輪の話はもう聞いた? 改良が終わったら、『特別価格』で売るからね。ぬいぐるみが指輪をつけるなんて馬鹿げてるけど、役に立つものは誰だって欲しいものだしね、でしょ?」
ネックレスはもう割れたステンドグラスまで漂ってきていて、もう少しで外に出ようとしていた。
【もう失くすわけにはいかない。】
「じゃあ戻ってきたら買うよ。」
小僧にまたがる。
「あの虫について行くぞ。どこへ行くのか見てみよう。」
小僧がネックレスを追って教会の扉を飛び出した。
闇が再び押し寄せるが、ネックレスの微かな光は暗闇の中でもはっきりと見えた。
それは何かを目指しているように見えた。




