第3章 焚風(タキカゼ)
小僧の体から放たれる光のおかげで、HPが減らなくなった。
影は光の輪の外側でうごめくだけで、少しでも内側に入ろうとすれば熱で押し戻され、とうとう俺たちに触れることはできなかった。
だが愈伤棉をこんなふうに消費し続けるわけにはいかない。一発食らうたびに食べるなんて、ソウル貨を火にくべてるようなものだ。
俺は残りHPを抱えたまま進むことにした。篝火を見つければ自然に回復できる。今はもうダメージを受けていないのだから、しばらくは持つはずだ。
しかし火紅色の蛍の案内がなくなってからというもの、走り回ってもただ同じ場所をぐるぐる回っているだけのような気がしてきた。柴の山は見つからないし、前に点灯したあの篝火の場所さえもわからなくなっていた。
【「大師」が言っていた。蛍を救い出せって……やっぱり彼女の言う通りだ。あの案内がなければ、この場所はどこにも辿り着けない。】
だが蛍は影に呑まれてしまった。どこにいるのかすらわからない。
小僧が走っているうちに急に立ち止まり、顔を上げて尻尾をピンと立て、そのまま跳び上がった。
上に通路の口があった。換気口のように狭く、下の道よりさらに窮屈そうだ。
「ここは来たことない場所だ。もし行き止まりでモンスターにでも出くわしたら? 降りよう。」
小僧がどうやってあの穴に気づいたのかはわからないが、あの上は下より安全だとはどうしても思えなかった。
少なくともさっきまで走っていた時は、行き止まりにぶつかれば左右に曲がって、いくら迷っても命に関わるようなものには出くわさなかった。
「焦げた匂いがする! 光る虫だ!」
【焦げた匂い? 小僧が蛍の匂いを嗅ぎつけたのか?】
「蛍か? 確かなのか?」
「そうだそうだ!」
「よし、這って行くぞ。」
「いいぞいいぞ!」
小僧が伏せて、少しずつ前に進み始める。俺も体を低くし、小僧の耳の後ろに顔を埋めた。
通路の先に出口があり、飛び降りた。
相変わらず暗い。前と何も変わらない。
小僧がもう一度匂いを嗅いだ。しかし耳がぺったりと垂れた。
【間違えたか? 無駄足だったのか?】
「大丈夫だ大丈夫。もう少し探そう。」
小僧を慰めていると、視界の端で金色の点が一瞬光って消えた。
【見間違いか?】
小僧の耳が突然ピンと立ち、金色の点が光った方を見つめた。
「あそこだあそこだ!」
急いで振り返る——金色の点がもう一度光った。今度ははっきり見えた。闇の中で何かがもがいている。影にがっちりと絡め取られている。
「五連打!」
すぐに詠唱する。五つの拳が飛んでいき、与えるダメージは大したことないが、影に対しては追い払うだけで十分だった。拳は確かに影を押し退け、その隙間から炎の光が漏れた——
火紅色の蛍が再び輝きを取り戻した。
以前よりずっと明るく、照らす範囲も一回り広がり、色も深くなった。真っ赤な赤色だ。
影は一気に後退し、闇の奥へと縮こまった。
蛍は止まらなかった。すぐに前方へ飛び始め、その速度は前よりも速く、失った時間を取り戻そうとするかのようだった。
追いかけていると、一つの柴の山を通り過ぎた。蛍は止まらず、そのまま横を飛び去っていった。
その場所を頭に焼き付け、さらに追い続ける。
蛍がようやく止まった時、前方の道は「扉」に塞がれていた——より濃く、より黒い影でできている。だがその縁からは微かな光が漏れている。
蛍の光が当たると、影は蠢いて後退するが、決して散ることはなかった。
近づいても、影は反応しなかった。
扉の表面に奇妙な紋様が浮かび上がっている。
【これは何の文字だ? 天賦の才でも読めないのか……】
長い間凝視したが、一文字も読めなかった。
しかし、扉に刻まれた図案は理解できた。丸い輪に、四本の爪痕が真ん中を貫いている——何かに引き裂かれたような。この扉自身の印のように見える。
視線を下に移すと、別の紋様があった。こちらは見覚えがある。
【……さっき通ったあの柴の山の場所じゃないか? あの柴の山の形とまったく同じだ。】
つまりこの紋様が柴の山に対応している。そしてこの紋様が扉に現れているということは……対応する柴の山を見つけて点火しなければ、この扉は開かないということか?
もう一度よく見ると、この柴の山の紋様と同じものが、あと二つある。
【つまり……三つの柴の山を見つけて全部点火しなければ、この扉は開かないってことか?】
三つの紋様の形とそれぞれの位置関係を頭に焼き付け、振り返って引き返した。
火紅色の蛍はついてこなかった。振り返ると、扉の脇に移動して、空中に止まったまま動かなかった。
【蛍の役目はここまでだ。あとは自分でやるしかない。】
さっき通りかかった柴の山の前に戻る。枯れ木が円錐形に積み上げられていて、触れればすぐに燃えそうだった。
手を伸ばして触れる——何も起きない。
【……おかしい。篝火は触れればすぐに点くものじゃなかったのか?】
【そうか、これは朔の火じゃない。】
小僧に視線を向ける。
「光術で点火してみろ。」
「俺が? わかったわかった。」
小僧が近づいて匂いを嗅いだ。木の枝を一本くわえて持ち上げるのかと思ったが、口を開けると、その中に小さな光の玉が凝っていた。それから身をひねり、尻尾を一振り——バットのように光の玉を柴の山に叩き込んだ。
【……曲芸まで覚えたのか。】
柴の山が燃え上がった。
普通の炎じゃない。その光は目に刺さるように痛く、思わず顔を背けてしまった。まるで直視した太陽のように、まぶたの裏に残像が浮かんだ。
【「烈陽の一部」……なるほど、だからこの名前なのか。】
立ち去ろうとした時、背後から一陣の風が吹いた。
とても軽い風だった。
しかし俺のHPは一気に3まで減っていた。
【?!】
慌てて愈伤棉を取り出そうとした。手が震えている。小僧は警戒して飛びのき、振り返って後方に向かって牙を剥いた。
さっきまで柴の山が放っていた刺すような光はもう消えていた。闇の中で、細長い影がゆっくりとくねっている——蛇のように。それは俺を襲ったわけではなく、ただ通り過ぎただけだった。乾いた熱を帯びた風を残して、そして消えた。
愈伤棉を握りしめ、それが消えた方向を見つめる。心臓の鼓動はまだ落ち着かない。
【—システム通知:「烈陽の欠片——焦痕蛇」を発見しました。—】
【焦痕蛇……太陽の欠片……】
その名前を頭に刻み込んだが、それが何なのかは全くわからなかった。
さっきはただ通り過ぎただけで、攻撃はしなかった。しかし近づくだけで死にかけた。
【このやつ……また出会うことになるんだろう。】
視線を戻し、愈伤棉を口に放り込んだ。
「行くぞ。残りの二つを探すんだ。」




