表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ぬいぐるみ、俺は〈十八〉の全女ソウルライクBOSSたちに真の終局をもたらす!  作者: 野間羊
第5巻 ニクス編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/68

第1章 闇

【ダメだダメだ、道すら見えない。全然前に進めない。】


 腕を上げても、指さえ見えない。

【小僧の目を頼りにするしかないか。】


「前は見えるか?」

「見えないよ。主人も真っ暗?」

「お前は狼じゃないのか? 夜目が利かないのか?」

「狼って何だ? それに、どんな能力なんだ?」


【小僧の見た目は確かに狼に似てるけど、本物の狼じゃない。現実の基準で考えても仕方ない。】


【……いったん戻って、朔に相談しようか?】


 考えていると、久しぶりの光が前方に灯った。

【赤い蛍? 久しぶりだな。青い蛍に取って代わられたと思ってたけど、まだいたのか。】


 光が現れてから、ようやく前方の道の輪郭が見えるようになった。でも照らせるのは周りのほんのわずかな範囲だけだ。

【なぜこんなに光が弱いんだ……この世界のせいか、それとも蛍自体が弱まってるのか?】


 小僧に乗る。

「あいつについて行くんだ。でも食べるんじゃないぞ。わかったな?」

「わかったわかった。」


 小僧が赤い蛍を追いかけて走り出した。速すぎもせず遅すぎもせず、常に数歩の距離を保っている。


 その脚は囚人の爪から変わったものだ。これだけ走れれば十分だ。急かしたりはしない。

「ゆっくりでいいぞ。」 首をポンポンと叩く。


 小僧がスピードを落とした。


 それからおかしいことに気づいた——

【なぜかHPがどんどん減ってる!】


「小僧、急いでついて行け! HPが減ってる!」

「どうしたどうした? わかったわかった!」


 小僧がまた加速して追いかけた。

【参ったな。走ってるだけでこんなにHPが減るなんて……このマップにもマップダメージがあるのか。】


 急いで愈伤棉ユショウメンを食べてHPを戻す。


「帰れ……帰れ……彼女はお前には会わない……」


 前方から老いた声が聞こえてきた。


 赤い蛍が速度を落とし、声の主を照らし出した。


 人間の頭だ。焦げた黒い杭の先に刺さっている。まばらな髪と髭が顔の大半を覆い、眼窩の場所はぽっかりと空いている。


「それはどういう意味だ?」

「帰れ……帰れ……彼女はお前には会わない……」

【俺の言葉が聞こえてないのか? それとも無視してるのか?】


「なぜ! そう言うんだ!」


 わざとゆっくり話し、声を大きくした。


「闇は恐怖を生む。執着は石に卵をぶつけるようなものだ。そのわずかな温もりを携えて立ち去れ。」

【温もり……蛍の光で俺の存在に気づいたのか。耳も聞こえないし目も見えない。確かにこれだけが頼りだな。】


「恐怖なんてとっくに見慣れた。でもお前がそう言うなら、ニクスがどこにいるか知ってるんだろ?」

「彼女の名を口にするな……」


 言い終わらないうちに、杭の根元から黒い影が這い上がり、頭をあっという間に絡め取った。


 影は蛍の光を無視する。光の輪に触れた部分は消えていくのに、それでも頭を引きずっていく。


 影がすぐにこちらにも広がり始め、光の輪の中へ少しずつ染み込んでくる。

【こいつらは蛍も捕まえようとしてるのか? それは困る。なくなったら道すら見えなくなる。】


 飛び上がって反手双刃ハンシュソウジンを振る——空振りした。

【武器は効かない……魔法を試してみるか。】


「スーパー無敵二連打!」


 青い拳が飛んでいき、影を少し退かせた。しかしさらに多くの影が押し寄せてくる。


 小僧も黙ってはいなかった。頭を下げて噛みつき、届く範囲の影を次々と引き裂いて飲み込んでいく。


 確かに食べられる。前に囚人を食べた時と同じように、吸収している。気づくと、小僧の四肢が黒くなり、半透明になっている。跳ぶときにとくに目立つ。

【また進化してる……でも遅すぎる。影は食べきれない。】


 ここに留まってはいられない。赤い蛍を動かさなければ。


 杭の根元を見る——何かがぶら下がっている。

 見覚えのある形だ。


 杭を切り落とし、小僧にそれをくわえさせる。


 近づいて見ると——虫の形をした装飾品だった。


 あの女がくれたものとまったく同じだ。ただ色がもっと濃くて、煙で燻されたように見える。

【また彼女のものか……でもなぜこんな場所に? 彼女はどこにいる? それにこの色合い、もう使われた後みたいだ。】


 赤い蛍がようやく動き始めた。飛ぶと、影の侵入速度が遅くなった。


 ほっとして、ついていく。


 遠くに炎の光が見える。


 篝火だ——ちゃんとした、使える篝火だ。


 炎の中に人影がある。


 朔だ。いつもより輪郭が薄く、何かに押しつぶされているように見える。


「リリィ。」

 彼女が呼んだ。いつもより早口だ。

「手短に言うわ。この世界は暗すぎて、私の火は長くは持たない。この篝火はあなたのためのものだけど、すぐに消える。ここでは篝火での移動はできないの。」


【……転送ができない?】


 朔の体がもう半透明になり始めている。

「それから、もし何か手に入れたら、ちゃんと保管しておいて。」

 炎が急に暗くなり、彼女の姿がほとんど消えかけた。

「私がいない間は……赤い蛍について行って。それが唯一消えない光だから。」


 言い終わると、朔が消えた。


 篝火はまだ燃えている。しかし炎は低くなり、さっきより暗くなっている。

【彼女の言う通りだ。この火は長くは持たない。】


【でも彼女は転送ができないって言ってたな……この世界は本当に特別なんだ。朔の火さえも前みたいに固定できないのか?】


 手の中の虫の形をした装飾品を見下ろす。

【あの女はどれだけ多くの場所にこんなものを置いているんだ? いったい何のために?】


 遠くで、赤い蛍が闇の中で静かに光っている。まるで待っているかのように。


 立ち上がる。

「行くぞ。朔がいないなら、俺たちだけでやるしかない。」

「行く行く!」


 小僧が尻尾を振った。


 赤い蛍が少し先へ飛び、止まって待っている。

【朔の篝火さえも保てない場所だ……何も起こらないでほしい。】


 深呼吸して、ついていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ