第14章 鎖せない『私』
「カタイナ! これで済むと思うなよ!」
巨体が酒の塊の中で暴れ回る。顔がしばらく綺麗になったかと思えば次の瞬間には歪み、まるで表情を奪い合っているようだ。
カタイナは無駄口を叩かず、槌の重みを確かめるように軽く上下させ、跳び上がって叩きつけた。
槌が振り下ろされた瞬間、巨体の上半身が一瞬で虚ろになった。空振りで、槌頭は酒の塊に食い込み、破片が飛び散る。
カタイナは力を入れすぎて、体ごと前に突っ込んだ——その先は大きな穴だ。
しかし彼女の反応は速かった。一瞬で空中に自分を固定し、慣性がまるで消えたかのようだった。両脚は穴の縁の数センチ手前で止まった。
槌を抜き、地面に戻る。
「逃げてばかりか!」
巨体の虚ろな影が再び集まる。
「逃げる? 遊んでやってるんだ。お前には触れもしない。」
そう言ってまた地下牢へ引っ込んだ。
カタイナの息は荒い。槌の柄を握る手がギシギシと音を立てる。彼女の肩が震えているのが見えた。
記憶の中で彼女がバーに座り、全身が痛み、からっぽになっていた様子を思い出す。今もまったく同じだ。
【この酒の塊のせいじゃないか?】
足元が揺れた。急いで跳びのく。
巨大な拳が下から突き上げてきて、さっきまで立っていた場所を打ち抜いた。皮膚が割れ、酒が無造作に吹き出る。
またあいつだ。場所を変えて奇襲してきた。
飛びかかろうとすると、また大手が虚ろになって引っ込んだ。
【殴って逃げるだけ。どうしようもない。】
今は小僧の体の中にいるおかげで遠くまで跳べる。穴の向こう側に着地した。
「そのワイン色の変な犬、どこから来た? なぜ閉じ込められてない?」
カタイナがこちらをじっと見つめ、槌をゆらゆら揺らす。
ワイン色? 下の映りを見る——毛は黒いのに、映りは暗赤色に透けている。
【いつ変わった?】
気を取られていると、槌が振り回された。
「『私』も私も、外の者が大嫌いなんだ!」
【ちょっと待て! 俺は助けられる!】
しかし小僧の口から出るのは「カチカチカチ!」だけだ。
【しまった、絶対に通じない!】
槌が風を切って横薙ぎに来る。顔すれすれで炸裂した。脚が震えている——俺が怖いんじゃない。小僧が怖がっている。
槌が止まった。俺の顔からわずか数センチのところで。
「お前にも責任があるって?」
【彼女……聞こえたのか? でもそんなはず——】
「何を言ってるんだ」とは聞かなかった。直接続けた。元々カチカチという音が聞こえるかのように。
考える暇はない。彼女の兜の中にある、ついたり消えたりする白金色の筋が見えた——それが彼女の目だ。なかなか綺麗で、銀のように輝いている。
人の目を見るのが好きだ。人の中で一番神秘的で、唯一無二の場所だから。
そしてこの目をさっき別の場所で見た——巨体のあの顔。彼女とまったく同じ目だった。
【やっぱりもう一人の『彼女』がいるんだ。】
「怖がって固まったのか? 早く答えろ!」
槌がさらに迫る。彼女の声は震え、指の関節は白くなり、前腕には暗赤色の筋が浮かんでいる。
【この色……酒みたいだ。まさか本当に影響されてるのか?】
【お前の看守たちは俺を閉じ込めようとした。仕方なく戦った。死体が湖に落ちたら、この巨体が出てきた。】
「カチカチカチ。カチカチカチカチ。」
テンポをゆっくりに。
カタイナは一瞬固まった。槌は動かさなかったが、真剣に聞いている。
「やっぱり。全部お前のせいで『私』が閉じ込められなかったんだ!」
槌がまた掲げられた。
【償いたいんだ。助けさせてくれ。】
「カチカチカチカチ!」
「どうやって助ける? 看守たちは私の理性だった。彼らなしで勝ち目があるか? ましてやお前みたいな邪魔ばかりする外の者が!」
彼女は吼えたが、槌は振り下ろさなかった。手首が震え、膝が一瞬折れかけてまた無理に伸ばした。
【記憶の中で酔っていた時の姿とどんどん似てきた。】
巨体が見逃すはずがなかった。
「彼女の言う通りだ。お前にできることなんて何もない。」
声が下から聞こえる。左右に揺れ、ぐるぐると回る。姿を現さず、カタイナが自分で消耗するのを待っている。
カタイナは勢いよく振り返り、槌を叩きつけた——そこには何もなかった。
声が別の場所から聞こえる。
「お前がじわじわと朽ちていくのを見るのはなんて面白い。」
カタイナの息はますます荒くなる。彼女は闇雲に殴り始めた。声がする場所に槌を振るう。酒の塊は粉々になるが、巨体は出てこない。
彼女の動きがどんどん遅くなる——左に行きたいのに、体は一拍遅れてついてくる。
【絶対にこの酒の塊のせいだ。でも本人は気づいているのか?】
【止めないと。】
【カタイナ! あいつはお前を消耗させようとしてる!】
「カチカチカチ! カチカチカチカチ!」
カタイナは振り返らなかったが、止まった。槌が垂れ下がった。
「……じゃあ言ってみろ。どうすればいいんだ。」
声がようやく低くなり、もう吼えなくなった。
口を開こうとした瞬間、また足元が震えた——下じゃない。彼女の方だ。
巨体が側面から拳を伸ばし、五指を広げて彼女の背中を掴もうとしている。今回は虚ろになっていない。彼女がもう避けられないとわかっているからだ。
【気をつけろ!】
跳び上がり、小僧の体全体でぶつかっていく。
カチカチカチ——!
拳を押しそれて、彼女の肩をかすめた。巨体が「チッ」と舌打ちし、逆手で俺を振り払った。小僧は酒の塊に叩きつけられ、二回跳ねた。
HPが一気に減った。まだ巨体の半身ははまっていて、俺には届かないのが幸いだ。
「彼女をかばう? お前はどっちの味方だ?」
【問題を解決できる方の味方だ。】
「カチカチカチ。カチカチカチ。」
カタイナが向きを変えてこちらを見た。彼女の目はついたり消えたり、まるで消えかけの灯りのようだ。
「お前……なぜ俺を助ける。」
【よし、まさにこの質問を待っていた。】
【俺があいつを出してしまったから、ちゃんと戻す責任もある。】
「カチカチカチ。カチカチカチカチ。」
カタイナは長い間じっと見つめていた。酒の塊がまた二度震え、巨体の笑い声が遠くから聞こえてくる。
「ゆっくり話せ。急いでないから。」
彼女は本当に急いでいない。カタイナが自分で崩れるのを待っているだけだ。
カタイナもわかっている。彼女の息は荒く、槌を握る指はもう限界だった。
それから彼女は槌を掲げた。巨体に向かってではなく、俺に向かって。
「お前が責任があると言った。なら命で償え。」
槌が振り下ろされた。
避けなかった。彼女はこんな状態だから、誰が近づいても殴る。
誰も信じていないのだ。
槌面が小僧の体にぶつかった。骨の砕ける音が耳に響く。
目の前が暗くなった。
最後に聞こえたのは彼女の叫び声だけだった——
「全部閉じ込めるべきなんだ! 私自身も同じように!」




