第12章 湖面の映り
青い蛍の羽が湖面をかすめ、濁った水がようやく一瞬だけ澄んだ。
小僧は全く止まる気配がなく、なんとそのまま追いかけていった。
【青い蛍が綺麗なのはわかるけど、そんなに追いかけるもんか。】
「止まれ、小僧! 沈むぞ!」
小僧は全く聞き入れない。仕方なく、目の前に飛んで行って、止まれのジェスチャーをした。
【なぜあんなに蛍を食べたがるのか——前に俺の体の中で金色の蛍に導かれて食べ物を食べたからか?】
小僧は少し遅くなっただけだった。俺の体を避け、まだ蛍がどこへ飛んだかを見ている。
蛍は湖の中央に静かに浮かんでいる。
小僧の体がもうすぐ足を踏み外す!
慌てて飛んでいって、小僧の頭を抱え、体から引き離した。
案の定、足が湖の水に触れた瞬間、その体は何かに掴まれたように、どんどん沈んでいった。
湖面は相変わらず静かで粘っこく、まるで何も沈んでいなかったかのようだった。
小僧は骨の上に毛皮が生えてからずっと重くなっていた。まだ筋肉がついていないのが幸いだった。そうでなければ、俺には持ち上げられなかった。
それでも、少し下に沈みかけた。小僧は新しい体が湖の水に消えるのを見て、震え上がり、口を「カチカチカチ」と鳴らした。
「震えるな。そうしないともっと掴まれなくなる。」
岸に置いてやると、小僧はようやく安心した。
もう青い蛍を追いかけようとはせず、近づいてきて俺の顔に擦り寄った。
「もういい。お前がちゃんと俺の言うことを聞く方が、取り入るよりずっと大事だ。」
引き離した。怖がりで向こう見ずなだけじゃなく、何よりこういう骨と皮だけの感触があまり好きじゃない。気味が悪い。
看守の体が湖の中に沈むと、かえってやや澄んだ場所が現れた。
青い蛍がその澄んだ水面の上に止まり、何度か飛び動いた。
近づいて、下を覗き込む——
映っているのはセレスだった。
彼女の後ろには……たくさんの女性の影が立っていた。
【へえ、彼女は自分の世界でそんなにモテるのか。どんなフェロモン美人だよ。】
しかしセレスは立ち止まらず、どんどん先へ進んでいった。「迷える旅人」という設定に実によく合っている——一度振り返ったら、自分が旅をする意味を見失ってしまうのだろう。
次の瞬間、映りが変わった。
黒い髪、丸い眼鏡、散らかった部屋……俺だ。
【ちょっと待て、なんでこの湖が俺のことを知ってるんだ?】
そればかりか、俺の映りをセレスと重ねるなんて……
やめてくれよ。俺がセレスと比べられるはずがない。現実の俺はゲームで自分を麻痺させている陰キャだ。
友達もいないし、趣味も変でマニアック。電話に出るだけでも緊張で手が震える……
【これって制作陣の個人情報流出じゃないか? 出たら絶対に問い詰めてやる!】
しかしその後ろに、セレスの周りにいた女性たちの姿は消えていなかった。
【そうか……俺もこうして振り返らずに人から離れていった。同じ迷える旅人なんだな。】
「もしかしたら……そういう意味じゃないかもしれない……」
映りが急にセレスが話しているように変わった? いや、見間違いだ――この映りはセレスじゃない。
【じゃあこれは俺に向けた言葉なのか? でも明らかに俺の心の声に応えているじゃないか。】
映りはカタイナだった。彼女はバーの椅子に座っている。話しているのは、彼女の記憶の中のあの女——やっぱり顔ははっきり見えない。
しかし二人の頭上に、なんと名前とセリフを表示する吹き出しが出ていた。
【……もう笑うしかない。】
カタイナ:「あなたは私と一緒にいたくなかったの?」
見知らぬ女:「ただ助けたかっただけよ。あなたがあるべき姿になれるように。」
カタイナ:「あるべき姿?『私』は決して黙らない。『私』になりたいなんて思わない。私の精神的支えは……あなたなのに。」
見知らぬ女:「覚えておきなさい。あなたが『彼女』を閉じ込められるようになった時、あなたはそのあるべき姿になれる。でも今夜限り。もう私を探さないで。」
カタイナ:「なぜ?」
沈黙。その女の姿が消えた。
カタイナ:「なぜだ?!」
「湖に異変があるぞ! 誰だ、騒いでるのは!」
突然、誰かの声が聞こえた。湖の映りが消えた。
振り返る——別の二人の看守だった。さっきの物置部屋の方から来たようだ。
目には悲しみと怒りが満ちている。どうやらあの二人の看守が死んだことをもう知っているらしい。
「そこを離れろ! 外の者!」
旗を持った看守が、鉤のついた端を投げつけてきた。慌てて転がって避ける。旗は湖岸に突き刺さった。看守は元々壁のあちこちにいたのに、瞬きする間に湖岸まで突っ込んできた。
通った地面には長い亀裂が残っていた。
提灯を持った看守も、灯りを揺らしながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
【どうやら戦いは避けられないらしい。】
しかしさっきの戦いで、もう手持ちの切り札は全て使い果たしていた。
セレスはもう二度と起きないかもしれない。再生の祝福ももう使った。
思わず目が小僧に向かう。
もうとっくに隠れているかと思っていた。ところが毛皮が生えてからは、二歩後ろに跳んだだけで、隠れてはいなかった。
その目も俺を見ていた。
【ついに一緒に戦う気になったのか?】




