第10章 セレス
「もう一度チャンスをやるぞ、ぬいぐるみ。武器を置いて我々と来い。無駄な戦いは避けられる。」
「お前らと行ってもいいけど、鍵をちょっと貸してくれ。」
「鍵は貸せない。待て、まさかお前、鍵を盗んだ犯人はお前か?」
【さっきまで戦ってたのに、俺が鍵を取りに来たって気づいてなかったのか?】
「友達を助けるために鍵を使ったんだ。」
「つまりお前が、俺たちを叱らせる原因を作り、囚人まで逃がしたのか? だったら条件は全て無効だ! かかれ!」
言い終わると同時に、合体看守がヌンチャクを振り回しながら突っ込んできた。
第一波は短距離の連打。何とか最初の一撃を防ぎ、反動で転がって避けた――正直言って完全に本能で、頭の中ではガードする考えすら追いついていなかった。
【弾き返し? 考えるな。】
しかし地面から跳ね起きた瞬間、ヌンチャクが突然伸びて、横薙ぎが地面を這うように襲いかかってきた。どうやって変わったのかさえ見えず、腰を打たれた。
体が吹っ飛び、背中が壁にぶつかった。
HPゲージが完全にゼロになった。
見下ろすと、本当にゼロだった。かすり傷だけ残っている。祝福の無敵フレームがなければ、これで一発で教会に戻されていたところだ。
【このダメージ、おかしすぎる。】
壁から滑り落ち、足が少しふらついた。痛いからじゃない。あの深い無力感――相手の攻撃すら見えないのに、どうやって戦えというんだ?
向こうはまだ二人が合体した状態だ。俺はただのぬいぐるみで、藍も空っぽ、遠距離も出せない、近接も届かない。前のボス戦でもここまでひどかったことはない。
【諦めろ。】
この考えが浮かんだとき、自分でも一瞬固まった。
朔が命を削ってくれた祝福を、こんなに無駄にするのか? でもどうすればいい? もう一回触られたら本当に死ぬ。
「強さを追求して一撃必殺」なんて、やっぱりただの中二病だ。自分の実力も考えず――
「まだ終わってないよ……」
この声が突然頭の中で炸裂した。
【セレス? なんでまた起きたんだ?!】
ちょっと待て――視界が一瞬で高くなった!
俺の手、俺の体が、何かに押し広げられ、引き伸ばされている。手にしている武器もあのドラムスティックみたいな反手双刃じゃなくて、本物の、特徴的な反手双刃だ。刃先が冷たい光を放っている。
また観戦側に戻った。
まあいい。ちょうどいい機会だ。セレスがどうやって戦うのか見てみよう。
視界が安定する。耳が動くのを感じた――俺の意志じゃない。彼女のものだ。鏡があればいいのに、きっと格好いいだろうな。
セレスの視線は冷たく看守を捉えている。
看守が眉をひそめた。
「このぬいぐるみ、ただ者じゃないな。なかなかの相手だ。」
セレスは彼の言葉には乗らなかった。
「どいてくれ。急いでるんだ。」
この口調、すごく傲慢だ。あの無表情な顔でこんなこと言ったらきっと面白い――でもこの視点じゃ全く見えない。
看守は明らかに腹を立てた。彼はヌンチャクを後ろに引き、棒身と縄を弓のように張り、そして勢いよく突っ込んできた――
見えた。
この技は表面上は正面からの叩きつけだが、縄の真ん中を彼がつまんでいて、前半分を打った後、後ろ半分が縄の弾力で別の角度から追撃する。つまり、一つの技に二段の攻撃が隠れているのだ。
もし俺なら、まず最初の一段を避けて、その後の二段目をまともに食らうだろう。
しかしセレスは避けなかった。
彼女は迎え撃ち、左手の刃で正確に最初の棍身を打ちつけた――
「カン!」
澄んだ金属音。
看守の動きが止まった。単に中断されただけじゃない。まるで体全体が釘付けにされたように――完璧な弾き返しの刃震で彼を硬直させたのだ。
二段目の攻撃はまだ出る前に無効になった。
【こんなに強いのか?!】
セレスは彼に反応する時間を与えなかった。横に跳び上がり、反手双刃を空中で弧を描かせ、看守の首筋に向かって突き刺した――
さらに半回転して、回転の力で刃先をさらに深く送り込んだ。
この一撃は実にあっさりと決まった。看守の頭は片側に傾き、半分だけが体とつながっている。
「ああ――この卑劣な外の者!」
看守は吼え、片手で傷口をしっかりと押さえた。しかしすぐに首が傾いていることに気づき、手が震え始めた。
「危険因子! 永久に鎖で縛らねば!」
彼はヌンチャクを振り回した。縄がどんどん長くなり、棍身の回転半径が一圈一圈広がっていく。まるで挽肉機のようだ。
セレスはやむを得ず腰を曲げ、地面に這うようにして最初の一圈をかわした。前進しようとしたが、看守が突然縄を縮めた――棍身は当たらなかったが、縄そのものが鞭のように振るわれて、彼女の肩を打った。
すぐに次の一圈の棍身が続き、彼女の背中にしっかりと叩き込まれた。
九百ダメージ。ちらっとHPゲージを見て、心臓が喉元まで上がった。
しかしセレスは倒れなかった。それどころか少しも止まらず、後ろに跳んで距離を取った。
【九百ダメージで死なない? 人の姿だと最大HPが上がってるのか?】
まだ考えがまとまらないうちに、彼女が低く呟いたのが聞こえた。
「あいつをぶん殴れ。拳で。」
五つの拳が看守の頭上に現れた。前に召喚した時より一回り大きい。いや、俺のじゃない――前に彼女が教会の外で護馬甲を殴り飛ばした時のだ。
【藍ゲージ、いつ満タンになったんだ?!】
看守は体を横に向け、ヌンチャクを振り回して拳を打ち砕こうとした。とても正確で、一つ一つ、五つの拳が全て砕けた。
しかしセレスはもう元の場所にはいなかった。
いつ動いたのかわからない。ただ視界が揺れたと思うと、彼女はもう看守の頭上に跳び上がっていた――反手双刃を立てて、まるで開いた鋏のように。
【飛行術? いつ――】
「カチッ。」
とても軽い音だった。
看守の頭部が首から完全に離れ、空中で二回転して地面に落ちた。
セレスは着地し、刃の血を振り払った。最初から最後まで、彼女は一度も振り返らなかった。
背後で鈍い音がした。
跪く音じゃない。二つに分かれた体がそれぞれ倒れる音だ――左の一団、右の一団。合体の時にかろうじて繋がっていた隙間が、今は完全に裂けている。
鍵が地面に落ちて、チリンと二回鳴った。
【かっこよすぎだろ……】
心の中で感嘆していると、隅から黒い影が飛び出してきた――小僧だ。いつ隠れていた場所から出てきたのか。
セレスの足元にすり寄り、尻尾を扇風機みたいに振っている。
【お前、本当に役立たずだな! まあ最初から期待してなかったけどな!】
【ちょっと待て、お前、本当に狼か? 犬じゃないのか?】
セレスはしゃがんで、そっと小僧の頭を撫でた。
その瞬間、視界が急に落ちた――
また元に戻った。
地面にうつ伏せで、顔が地面に着きそうだった。もがきながら起き上がると、また小さなぬいぐるみに戻っていた。小僧と同じくらいの背丈だ。
小僧はまだ俺の足にすり寄っている。
「なんだ、俺がすごいってわかって媚びてるのか? そんなの効かないぞ。お前がびくびくして隠れてばかりだったこと、まだ怒ってるんだから。」
無視して、地面の鍵に向かって歩いた。腰をかがめて拾い上げる。冷たくて、重みがある。
【やっと手に入れた。】
「行くぞ、小僧――お前、何してる?」
振り返る。
小僧が左の半屍の頭部のそばにしゃがみ込み、口を開けていた。
「おい! それを食べるな! 食べ物じゃない!」
もう遅かった。
一口かじりつき、頭蓋骨が口の中で砕けた。関節がカチカチと鳴り始め、黒い毛皮が骨の隙間から生え出した。一枚一枚、まるで再生しているかのように。
そして小僧は左の半屍の中に飛び込んだ。
その半截の体が動き始めた。するとすぐに、右の半截も震え、何かの力に引かれるように、左へゆっくりと寄っていった。
二つが合わさった。
隙間が少しずつ消えていき、まるで一度も離れたことがないかのようだ。
小僧の狼の頭が完全な体の首にはまり込み、毛皮は漆黒で艶やかだ。一つ目は以前より生き生きとし、怪しく光っている。
尻尾が背骨の末端から垂れ下がり、まるで髪の毛のようにゆらゆら揺れている。
よろよろと立ち上がり、体を左右に何度も揺らしてやっと体勢を整えた。
俺を見下ろす。
そしてその太い腕を伸ばし、手のひらを広げて、ゆっくりと俺の前に差し出した。
まるで、俺がその上に乗るのを待っているようだ。
【……お前、いったい……何者なんだ…】




