第5章 赤髪の騎士
鍵をくわえて牢へ戻った。
シエルはそれはもう喜んだ。
「これ、あたしにくれるの? ありがとうありがとう、やっと出られるよ。」
口から鍵を渡す。シエルはそれを受け取り、鉄格子の間から手を伸ばして鍵穴に差し込み、回す——扉が開いた。
しかし扉が開く時、鈍い大きな音がして、通路の中を反響した。
【看守を呼び寄せるぞ。】
「これあげるね、変な小僧さん。きっとお腹空いてるでしょ?」
彼女は地面に何かを置いた。
食べ物だった。
「カチカチカチ。」
【俺のこと気にしないで、早く逃げろ。】
「お礼を言ってくれてるってことでいいよ。あたし、もう行くね。バイバイ。」
シエルは俺の頭をポンポンと叩き、自分が見つけたあの道具の束を抱えて、通路の外へ走って行った。
彼女はいつもあんなにたくさんの物を持っているけど、売ってる道具はそんなに多くない。原料に使うのかもしれない。
『リィちゃん……鍵を渡してくれない?』
あの女の声が向かいの牢から漂ってきた。
『まだいたのか? ちょっと待って。』
『あんたは本当にいい人ね……リィちゃん……』
【リィちゃん? このあだ名、変だな。】
『ふふふ……あの娘とあんたの関係が羨ましくてね。彼女はあんたのことリィちゃんって呼ぶの?』
『呼ばないよ。心を読まないでくれ。』
『じゃああの子たちはあんたのこと何て呼ぶの? 朔はどう呼ぶ? あの人はどう呼ぶ?』
『なんでそんなこと気になるんだ? 早く扉を開けて出てこい。看守が来るぞ。』
尻尾に力を溜めて、跳び上がる。鍵穴に刺さった鍵をくわえ、女の牢の入り口に投げる。
『ふふふふ……この激しい鼓動はどうしたの……あんた、「朔」って名前を聞いたとき、心拍数が上がるの?』
『生理的な好きってそういうものだろ? まるで——』
『まるでDNAに刻まれてるみたいに……わかるわ……ふふふふ……わかる……羨ましい……こんな扱い、私も受けてみたい。』
『いったい出る気あるのか?』
『もちろん。もちろん。』
女は鍵を取り、牢の扉を開けた。
次の瞬間、彼女は手を上げた。
「ふふふふ……もう行かなくちゃね、ここで時間を無駄にしちゃった。必ず頼みを覚えていてね……リィちゃん……あんたをそう呼ぶのは私だけだとわかってる。特別な名前……幸せだなあ……」
彼女は消えた。言葉だけが梁に絡みつくように、いつまでも残っていた。
鳥肌が立った。
【この女が絶対にコスモなわけがない。朔が言う「ブラックユーモア」がこれのことなら……朔はそれが好きで、だから笑ったんだろう。でも俺には全然面白くなくて、逃げ出したいだけだ。】
——
看守が来た。
でもさっきの二人じゃない。
かなり完全な騎士だった。
彼女の関節の繋ぎ目すべてに鎖が掛かっていて、燃えるような赤い長い髪が兜の隙間からこぼれている。兜の形は鉄処女の檻を閉じたような形で、面当てには五官がなく、縦長の鍵穴だけがある。
背は高いけれど、狭い通路を歩き慣れているせいか、体は少し丸まっている。
肩には巨大な槌を担いでいる。槌頭にも鍵穴がある。
兜の鍵穴の中で、何かが左右に動いている——暗金色の、目なのか何なのか、よく見えない。
彼女は牢をひと目見て、鉄甲の隙間から尖った焦燥した声を絞り出した。
「……牢の扉が開いてる! 全部閉じ込める! ぜんぶぜんぶ閉じ込めなきゃ!」
中に囚人がいるかどうかは気にしていない。彼女が気にしているのは、なぜ扉が開いたかだ。
慌てて隅っこに縮こまり、隠れる。
鍵はまだ牢の鍵穴に掛かっていて、煌々と光っている。
隠しに行きたいけど、彼女がこっちを見ている。
彼女は鍵に気づいた。
「鍵……? 鍵! この鍵はどこから来た?!……看守は? 看守はどうやって鍵を管理してるんだ!」
彼女は鍵を抜き取り、向きを変えて立ち去る。
足音が通路に響き、どんどん遠ざかる。
【しまった。やっと手に入れた鍵がまたなくなった。】
隅っこにうつ伏せて、彼女が消えた方を見つめる。
あの騎士の姿は、ひと目見てもかなり精緻だった。
【まさかまたエリートモンスターか? やめてくれよ、このマップ、どうしてこんなにプレッシャーが大きいんだ。】
「カチカチカチ。」
小僧がまた鳴いた。
下を向くと——シエルが置いていった食べ物が、まだ地面にあった。
金色の蛍がいつの間にか飛んで来て、その上に止まっている。
【……これはどういう意味だ?】




