第2章 それになった
朔に別れを告げて、教会を出る。
外の空気が一気に重くなった——冷たいんじゃない。むしろ息苦しい。何かが胸に圧し掛かっているみたいだ。
「出てきていいぞ、小僧。」
カチカチカチ。小さなやつがバッグから這い出して、嘴をパクパクさせながらあちこち見回す。
「どうやって動くのか見せてみろ。」
ぴょんぴょん跳ねながら数回動き回る。骨の関節が「カチカチカチ」と鳴る。まるでバラバラの骨が喧嘩してるみたいだ。
【速度は遅い。いや、むしろ滑稽だ。でも歩くよりは速い。】
「ここ、すごく歩きにくそうだろ? だからお前の助けが必要なんだ。」
鎖魂獄は想像以上に迷宮みたいだった。頭上には空が見えず、ただ昏く濁った黄ばんだ光だけが漂っている。灰色がかった黒い壁に浮かぶ暗赤色の跡がやけに目立つ。分かれ道が次から次へと現れ、どれもほとんど同じような姿をしている。
小僧の目玉がぐるっと一回転し、またカチカチカチと跳ねながら近づいてきた。
「お、お前……何する気だ?」
傷つける様子はない。すぐ近くまで跳んで来て止まった。ただ嘴をパクパクさせている。鋭い歯が上下に開閉するのを見て、頭皮がむずむずした。
【まったく、何がしたいのかわからん。】
「意味がわからな——」
いきなり丸ごと噛み込まれた。
飲み込まれたんじゃない。包まれたんだ。
視界が急に狭くなり、体が押し潰され小さくなっていく。布地がきつく締まり、縫い目がずれていく。
それから変な空腹感が胃からこみ上げてきた——焼けるようにからっぽで、何日も何も食べていないみたいな。
でもこの感覚は俺のじゃない。
そいつのだ。
俺はそいつになった。
下を向く——黒い骨の爪が二本、体の前で丸まっている。細くて、先が少し尖っている。
口を開けてみる。「カチカチカチ」——発せられた音は小僧と同じだったけど、自分でも何を言ってるのかさっぱりわからなかった。
【これはちょっと気まずい。】
慌ててステータス欄を確認した。
無痛の人の欄、字が少しぼやけていた。今にも消えそうな感じだ。もしかしたら本当に痛みを感じるようになるかもしれない。
最悪なのは——天賦の才の上に鎖の刻印が増えていたことだ。暗金色で、スキルアイコンにぴったりと嵌まっている。
【鎖ってのはつまり地獄難易度ってことか。】
だから小僧の言葉がわからなかったんだ。学べない。鎖で封じられている。あいつがさっき「言った」意味さえもわからない。
分かれ道が多すぎる。左に三本、右に四本、それに枝分かれした小道もいくつかある。
壁には鉄扉が嵌め込まれている。錆びついていて、どこに通じているのかわからない。まったくどこへ行けばいいのか見当もつかない。
途方に暮れていると、一番右の通路から大きな金属が地面に叩きつけられる音が聞こえた。
「ガンッ——」足元の石板まで震えるほどの音だ。
【この物音……何かが落ちたか、それとも何か生き物がいるかだな。】
【今は小僧の姿をしている。怪物に化けて通り抜けてみるか?】
尻尾を弾いた——あれ、力を込めたのは尻尾か。
その細長い骨の尻尾が急に振られ、体が弾き飛ばされた。
着地の瞬間、骨が「カチッ」と鋭い音を立てた。慌てて体勢を整え、倒れずに済んだ。
通路に向かって跳ねていく。
通路の先は開けた大広間だった。
一列の人が前へ進んでいる。皮膚は皺くちゃで、体にぶら下がっている。水に浸かって干されたかのようで、顔はぼんやりとした輪郭だけが残っている。
首には足枷が垂れ下がり、一歩進むごとに細かい金属の擦れる音を引きずっている。
列の両側には、一人ずつ看守が立っている。
鎧は囚人を護送するものとは思えないほど華やかだ——暗金色の下地に複雑な模様、肩当てが高くそびえている。
でもどちらも不完全だ。左側の看守は左半分の体しかなく、右側の看守は右半分の体しかない。同じ人間を真ん中から縦に切り裂いたのに、両方ともちゃんと地面に立っているみたいだ。
左側の看守は、返しのついた長い旗を右手に掲げている。旗竿には暗赤色の布切れが掛かっている。右側の看守は、左手にランプを提げている。灯りは濁った黄色で、中で何かが渦巻いている。
列が前に進む。囚人が一人通過するたびに、ランプが三回点滅する。光ったら通行許可だ。
一人目——三回。二人目——三回。三人目——これも三回。
四人目の囚人が通った時、一回しか光らなかった。
左の看守が一瞬で旗を振り下ろした。
説明もなければ、会話もない。返しが囚人の後ろ首に引っかかる。まるで古い服を引っかけるように。
囚人の体が溶け始めた——違う、旗の色に呑み込まれている。頭のてっぺんから足の先まで、数秒で消えた。
足枷が地面に叩きつけられる。「ガンッ」——さっきの音だ。右の看守がランプを揺らすと、足枷が吸い込まれた。ランプの中の渦巻きがより激しくなった。
その間ずっと、囚人たちは一人として顔を上げなかった。声を発する者もいなかった。
【今の俺じゃ、あのランプ、一回も光らないだろうな。ましてや三回は無理だ。】
やっぱりこの道はやめておこう。まだあの二人と戦いたくない。小ボス級で間違いない。
こっそり引き返し、尻尾をそっと弾かせて、なるべく音を立てないようにする。
他の通路に行ってみよう。




