第14章 心音の歌
七階に戻ってきた。ソノラは目を閉じていて、口元のあの笑いは相変わらずだった。
「やっと来たね、小さなやつ。でも今は一緒に行けないよ。」
「なんで?」 一瞬固まった。
「死にかけた時、やっぱりあの声が聞こえたんだ。」
彼女の口調は珍しく真剣だった。
「あいつが……あんなに長く押さえつけてきたのに、まだ力を残して高塔を破るなんて。」
「あいつって誰?」
「怪物さ。あいつがいるところじゃ、音は生きられない——聞こえないんじゃなくて、消えるんだ。音楽なんてもってのほか。」
【高塔の下に怪物が押さえられてたのか? こんなに長く戦ってきたのに、全然知らなかった。】
「じゃあ、どうして行けないんだ?」
「ここのみんなを見てごらん。」
彼女は一瞬目を開けて俺を見て、また閉じた。
「私がここに留まっているのには、理由があるの。」
「あんたはこれを解決するために来た。でも私の死は……出しちゃいけないものを出してしまう。」
「出しちゃいけないものって?」
「……怪物だよ。あいつがいるところじゃ、音は生きられない。」
これ以上は言わなかった。口調はそこまで真剣でもなかったけど、「出しちゃいけない」という言葉だけはいつもより強く発音していた。
【高塔の下に何かが押さえられてる?】
「それを押さえられるのは、心音だけなんだ。」
彼女が付け加えた。声はとても小さく、独り言のように。
【「完全な心音」?】
「じゃあ、まだ心音があるんじゃないか?」 と聞いた。
「そうだよ。でも、もし私がなくなったらどうなる?」
【……】
「ソノラ、『完全な心音』ってどうやって演奏するか知ってる?」
「『完全な心音』?」
彼女は首をかしげ、笑いが一瞬固まった。
「……もちろん知らないよ。聞いたこともない。」
【この間……明らかに知ってるのに、言いたくないだけだろ。】
「もし本当にヒントをあげたいなら、とっくに教えてるかもしれないね?」
【もうヒントをくれた? まさかまた心音を聴けってことか?】
下を向いて、ドラムスティックみたいな反手双刃を見た。
でも太鼓がなくてどうやって演奏するんだ?
……やってみるしかない。エアギターってあるなら、エアドラムだってあるだろう。
目を閉じて、集中する。心音がどんどん大きくなり、胸の中で何かがドンドン叩いているように感じる。
反手双刃を取り出し、心音が鳴った瞬間に叩きつける——
「ドンッツ——」
空気の中に確かに太鼓の音が響いた。
「ダッツ——」
よし。ドクンドクンの強弱に合わせて、左右の手が対応できている。いける。
「ソノラ、やり方がわかっ——」
言い終わらないうちに、様子がおかしい。
心音閣にいない。
見知らぬ場所。何も聞こえない。でも、目の前に映像が浮かんでいるのが見える。水面に映った影のように、俺の太鼓の音に合わせて明るくなったり暗くなったりする。
手を止めると、映像がぼやけて、何かに飲み込まれるように消えた。
【また記憶か?】
深呼吸して、心音のリズムを再び叩き始める。
映像が再び明るくなる。彼女が歌った——
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静寂から生まれし怪物
全ての音を呪い尽くす
王は音を禁ずる令を敷き
生まれたばかりの子は口を縫われた
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一人の娘が祭司の予言を信じ
音叉はその手で光を纏う
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畸形の耳を持つエルフの娘
人の心音を聞き分ける
ある者の鼓動はあまりに騒がしく
彼女は塔を建てた——心のままに
代償に 国中の人が閉じ込められた
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始まりは皆が感謝した
ここを心音閣と名づけ
音楽で言葉を交わした
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いつしか 音の温もりを忘れ
心音は消え 静寂だけが残った
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映像は完全には繋がっていなかった。ところどころ引き裂かれたようで、これらの断片だけが残っている。でも詩の切れ端は、さっきよりずっと心に響いた。
【ソノラの物語……あの耳の多い娘は彼女自身だ。】
【でもまだ欠けてる。誰が祭司の予言を聞いたのか? なぜ感謝したのに心音が消えたのか? わからないまま。】
映像が消えた。また七階に立っている。最初からそこにいたように。
ソノラはまだ元の位置にいて、目を閉じ、口元にあの笑いを浮かべていた。
「この杭がずっとこの歌を流し続ければ、あの怪物は完全に死に絶える。みんなも……やっとこんな風にしなくて済む。」
彼女は一瞬間を置き、声を落とした。
「やっと……休暇が取れるよ。」
口を開いたけど、声を出す間もなく、彼女の体は光の粒に散っていった。
一つ一つ、音符のように、風に吹き散らされる楽譜のように。
【—システム通知:ソノラの遺燼を獲得しました。—】
俺の手の中に、ひんやりと収まった。
待て。
何か忘れてないか……
しまった! あの虫の形をしたやつをまだ渡してない!
【まあいい……どうせまた祭壇に入るし、その時に渡せばいいか。】




