第9章 普通じゃない好き
教会に戻ったからには、一度整理しなきゃいけない。
あの女がくれたもの、まだバッグの中に眠っていて、使えない。虫の形をしたあの……いったい何のためにあるんだ?
【これ、本当にソノラを傷つけたりしないよな? 俺は別に彼女を傷つけたいわけじゃないんだけど。】
「リリィ、武器に何か付けたの?」
朔がフラグの飾りに気づいた。それに、俺がそれをじっと見ているのも気づいている。考えていたのはそれじゃなかったけど。
「これはフラグ様がくれたものだよ。」
「どうして彼女があんたにこんなものを?」
「弱すぎて見かねたんだろ。我慢できなかったんだよ。」
【絶対に好感度のプレゼントだなんて言えない……】
「本当にそうなの? 彼女は何も気にしないと思ってたけど。」
【しまった、なんでこんなこと言っちゃったんだ……フラグみたいな無関心なやつが、自分から何かを送るわけないよな? バレるか?】
「彼女たち、あなたのことが好きなんですよね。」
【朔、こんなにストレートに聞いてくるのか?】
「シエルのことは、コーラに頼まれて手伝ったってわかってるよ。でも、彼女たちのことは、私には全然わからなかった。」
【朔の口調、どんどん変になってる! 早く何か言わないと!】
「俺は……えっと、主に……」
「もう隠さないでくれませんか? リリィ。」
【この目、相変わらず優しくて澄んでるのに、なんていうか……説明しがたい圧迫感がある。】
「わかったわかった。朔が悲しむんじゃないかと思って隠してたんだけど、完全に俺の独りよがりだった……ごめん。」
「どうして私が悲しむと思ったの?」
「だって……彼女たちの好きは、普通の好きじゃないから。」
朔の体にまた灰が増えた。
「でも安心して、俺の彼女たちへの好きはまだ……」
【ダメだ、どう言えばいいか全然わからない……彼女たちへの好きって、どちらかというと「推し」みたいな? そんなこと言えないよな。】
「その好きも、うまく説明できないんでしょ? リリィ。」
「彼女たちを好きなのは否定しないよ、朔。」
「わかってます……」
「でも絶対に安心してほしい。彼女たちへの好きと、朔への好きは……違うから。」
【これ、完全に告白だよな? 少なくとも俺にとっては。朔ならきっとわかってくれたはず!】
「違うんですか?」
【なんで朔の顔はこんなに変なんだ……】
「私はあなたの全部が……」
朔の唇が微かに動いた。声はとても小さい。
「全部」という言葉だけがかすかに聞こえて、後は篝火のパチパチという音に掻き消された。
「朔、何て言った? 聞こえなかった。」
「何でもありません。それをあなたから聞けて、とても嬉しいです、リリィ。」
「でも全然嬉しそうじゃないけど。」
「そうですか? 表情が追いついていなかっただけかもしれません。心の中ではもうかなり嬉しいですよ。」
【本当か? まあいい、もうこれ以上変なことは言うまい。ちょっと準備してくる。】
「じゃあ準備してくるね、朔。」
「うん。」
——
小ボスを倒して手に入れたソウル貨なら、あのネックレスが買える額だ。
「シエル、ネックレスを買いに来た。」
「三千ソウル貨だよ♡」
「え?! 値上げしないって言ったじゃん!」
「ははは、冗談だよ♡ 着払いで~♡」
シエルがネックレスを渡し、俺もソウル貨を渡した。
「またのご来店をお待ちしてまーす♡」
「わかったよ。」
——
そういえば、コーラとシエルの話が出たけど……途中で金色の蛍を全然見かけなかったな。
蛍が見えなかった……
あの女はこのマップのNPCじゃないってことか?
そういえば、彼女は瞬きの間に消えたし、空間が裂けるような音もしたし……
まさか彼女は……コスモ?
コスモは後半のボスのはずだ。なんでこんなところに? それにテストサーバーの時と姿が違いすぎる。今の彼女は完全にちょっとイカれた変質者みたいだ。
どうやら制作陣はマップ間の連動にもちゃんと手を入れているらしい。
そういえば、青い蛍の点滅——あれは本当にただの心音の合図だったのか?
それとも、フラグやコロティアが俺を探しているのか?
念のため、中を見に行ってみよう。




