第8章 試音
ソノラが親指と人差し指で続けて音叉を叩く。六本の音波が一列に並び、上下に起伏しながら俺に向かって押し寄せてきた。
よかった。それぞれのリズムに気づけた。旋律は完全に違う。タイミングを見計らって隙間をすり抜ければいい。
左に避け、右に避け、一つも当たらなかった。
「なかなか機敏じゃないか、小さなやつ。」
「楽しんでるだけに見えるけど、本当に戦う気あるのか?」
「もう結構真剣だよ。音楽は楽しむためのものだろう? あんたも、そんなに堅苦しくしないでよ。」
口ではそう言いながら、心の中で次の攻撃の間隔を計算している。
ソノラが笑った。止まった音符を踏んで素早く目の前に移動し、手を曲げて音叉をそのまま武器のように叩いてきた。
横に避ける。
彼女はこれで当たるとは思っていない。むしろ、俺が転がった隙に中指でもう一度音叉を叩いた。
二本の円形の音波が、転がって止まった場所に落ちる。立ち上がって踏んだら即死だ。
慌てて耳を羽ばたかせて飛び上がり、空中でもう一度転がって、どうにか避けた。
「ゆっくりゆっくりゆっくり。」
十本の指を順に叩く。十種類の音符が飛んでくる。
飛びは遅い。適当に避ければいい。わざと大きく回りながら、彼女の指を観察する。
【中指と薬指で叩いた音符は遅くなる。人差し指と小指のは加速する。親指のはまっすぐ。】
「つまんないなあ。」
「これだけだと思ったのか?」
「え?」
背後から高速で音符が一つ飛んできた。さっきより何百倍も速い。視界の端に映った時には、もうすぐそこまで来ていた。
避けられない。
360ダメージ。
【残り二百ちょっと……一撃でほとんど持っていかれた。】
第三マップのダメージはやっぱりぶっ飛んでる。このHPでどうやって耐えろっていうんだ。
「おや、まだ飛べるのか?」
ソノラがもう一度叩く。二つの音符が両側から挟み込んでくる。
本能的に上へ飛ぼうとしたが、体が何かに守られているように感じた——耳を羽ばたくのを止めて体を落とすと、かえって楽に避けられた。
二つの音符がぶつかって爆発する。余波がかすめて、また50ダメージ。
【こんなやり方があったのか……】
まだ着地していないのに、地面はもう音符で埋め尽くされていた。
油断している隙に、ソノラはとっくに罠を仕掛けていたのだ。
彼女は首をかしげてこちらを見ている。口元に笑みを浮かべて、まるで自分で踏み込むのを待っているようだ。
「どれくらい飛べるか見てみたいんだ、小さなやつ。」
また一群の音符が飛び出してくる。
今度は速く飛んでくるが、あちこちで突然遅くなり、空中に漂って空間を埋めていく。
避けられる場所がどんどん減っていく。いつ加速するかも警戒しなきゃいけない。
スタミナがもうすぐ尽きる。彼女は消耗させようとしているのだ。
ソノラはまだ笑っている。
彼女が軽く叩くと、円形の音波が彼女を中心に広がり続ける。音はどんどん高くなり、範囲もどんどん広がる。
唯一避けられる場所には、音符がびっしり並んでいる。
「こんなふうに追い詰めたくはなかったんだけどね、小さなやつ。でもあんた、どうやら音楽の真髄を全然理解してないみたいだ。」
「音楽の真髄?」
そうだ。ひたすら避けてばかりで、旋律を聴くのを忘れていた。手にある、ドラムスティックみたいな反手双刃も、一度も振っていなかった。
でももう避けようがない。
目を閉じて、聴く。
音波が広がる音は連続していない——ある方向に、極めて短い休止がある。
そこには音符がない。
その方向へ突っ込む。
——間に合わない。音波のほうが速い。
目の前が暗くなり、また明るくなった。
教会の天井だ。
地面に寝転がって、頭上のステンドグラスをぼんやり見つめる。
朔が歩いてきて、しゃがみ込む。
「ごめん、朔。」
「おかえり、リリィ。なぜ謝るんですか?」
「再生の祝福を使っちゃった。ソノラに一発も当てずに戻ってきちゃった。」
「大丈夫ですよ、リリィ。あなたはもう十分頑張りました。ゆっくりでいいんです。」
起き上がり、篝火のそばに座る。バッグからフラグの飾りを取り出して、反手双刃に装着した。
【砕効果……ないよりはましだ。】
【次は、もう消耗でやられないようにしないと。】




