第4章 タンゴの合間
発条人形の動きは全然固定じゃなかった。時々ちょっと止まってすぐ動き出すかと思えば、こっちが眠くなるくらい長く止まってから動いたりする。
動き出すたびに追いかけてきて叩いてくる。凶悪極まりない。全力で逃げるしかない。
【この階のモンスター、本当に手強い。動きが制限されてなかったら、とっくにやられてた。】
でもどうやって上の階に行けばいいんだ?
カクカクいう音を聞きながら、壁を全部撫でてみた。仕掛けもなければ、何もない。
「小さなやつ、まだ固定観念に囚われてるのか? 酷いなあ~」
ソノラの杭が空中に浮かんで、文句を言うだけで手伝う気はない。
【……まあいい。固定観念だとしても——こいつらを完全に止めるしかないんだろ。】
しばらく観察した。動いているときに攻撃するのは自殺行為、止まっているときに攻撃しても罰せられる。じゃあ、カクッと止まった一瞬を狙うしかない。
「カチッ、カチッ、カチッ——」
歯車の音。ドラムスティックみたいな反手双刃を握りしめ、振り返り、飛び上がり、人形の腰の発条に引っ掛ける。
引っ張る。もう一度。
人形はどんどん硬直していく。発条が緩み、へなへなと地面に倒れて動かなくなった。
三階へ続く石段が現れた。
青い蛍が一瞬光った。
胸がまた震えた。
【……またか? 一階でもそうだった。あいつが飛んでくると胸が震える。一体何をくれてるんだ?】
「あらあら、みんな寝ちゃったね。小さなやつ、上がっておいで~」
階段を上がる。階段の隅に目立たない篝火があったので、すぐに灯した。朔が炎の中に現れた。
【この世界の影響もようやくマシになったみたいだ。】
「おや、小さなやつは朔の人間だったのか? じゃあ納得だ。」
朔は彼女を無視して、ただ俺を見ていた。
「……胸に、何か感じる?」
「あるよ。どうして知ってるんだ?」
朔はしばらく黙って、直接は答えなかった。
「それがあなたの体内に蓄えられています。一番上まで行けば、わかりますよ。」
【……またはっきり言わない。】
もう一度聞こうとしたら、ソノラが割り込んできた。
「はいはい、そこでイチャイチャしないで~。心臓の鼓動まで一緒になってるのに、口ではそんなに固いなんて。」
杭から音波が放たれた。篝火は消えなかったけど、炎が反対方向に倒れた。朔の姿が消えた。
「お前——『待ってるよ』ってまだ聞いてないんだけど。」
「ごめんね~。私はそういう偽装が得意なタイプじゃないから。」
ソノラの口調には珍しくからかう感じがなく、ちょっと困ったような雰囲気だった。
「あなたね、心に思ってることがあるなら、なんで我慢して言わないのさ。」
【……俺、我慢してるか?】
反論する間もなく、音楽が鳴り始めた。イントロを聴いただけで、何の曲かわかった。
「三階のみんなが好きなのは——」
「タンゴ。」
「タンゴ。」
俺とソノラがほぼ同時に言った。
「え? 小さなやつ、詳しいんだ? じゃあ頑張れよ~」
——
バンドネオンの音が壁の隙間から染み出してくる。低く、ねっとりしている。
闇の中から新しいモンスターが現れた。二匹一組で向かい合い、片方の手は相手の肩に、もう片方の手の甲には短刀が縛り付けられている——刃はほんのりと曲がっていて、まるで三日月のようだ。顔はない。
タンゴの最初の一歩は拍じゃない。休止だ。
音楽が一瞬止まった。
三日月刀が振り抜かれる——俺に向かってじゃない。互いに相手の肩に向かって。
刀光が一閃、火花が石畳に散る。
【タンゴって血が出るもんなのか?】
二つ目の休止。彼らが向きを変え、刀が相手の顔を切りつける。あと一寸で届くところで止まった。
三つ目の休止。全てのモンスターが一斉に俺に向かって突っ込んできた。
慌てて身をかわす。刀が腕をかすめ、布地が少し削げて、120ダメージ。
【なんでまた俺を狙うんだ? かすっただけでこんなに減るのか?】
「タンゴは一人で踊るものじゃないよ~」
杭の中から声が漂う。
「パートナーが必要なんだよ、小さなやつ。さもないと、あいつらの気性は一階よりもずっと悪いからね。」
【わかってるよ……】
周りをざっと見渡す。どのモンスターにも相手がいる。はぐれ者はいない。彼らにも休止はあるけど、速度もダメージも二階よりはるかに強い。逃げ切れない。
視線をソノラの杭に移す。空中に浮かんで、一番近くにある。見物するように上下に揺れている。
掴んだ。
「……何をする気?」
ソノラの声が困惑している。
「俺のパートナーになれ。」
「本気で? じゃあ、あなたのダンスの腕前を見せてみなよ。」
音楽が三小節目に入った。あるモンスターが相手を離し、こちらへ歩いてくる。
迷っている暇はない。
杭を抱え、左手をその「肩」の位置に当て、右手で突き出た部分を握る——それが三日月刀だと思って。
「さあ来い。」
一つ目の休止。モンスターたちが止まる。杭を抱えて一歩踏み出し、すぐに引き戻す。まるで杭がリードしているふりをする。
【バカみたいだ……でも他に方法がない。】
二つ目の休止。モンスターたちが向きを変え、刀を一斉に俺に向ける。杭を抱えて一回転し、杭の先端を一番近い奴に向けた。
そいつは一瞬固まった。
三つ目の休止。テンポが速くなり、抱えた杭を連れて速歩きを始める。杭は軽いけど、形が不規則で、身体に当たって痛い。
一匹のモンスターが突っ込んできた。杭で受け止める。杭の表面の模様が震えて、短い音符を一つ鳴らした——ピアノを一つ押したような音。
そのモンスターが止まった。首をかしげて、杭を見つめる。まるで聴いているように。
もう一度叩いた。また甲高い音符。
モンスターたちが全員動きを止め、一斉にこちらを見た。
「あんた、私の杭を楽器にするつもり?」
ソノラの声からからかうニュアンスが消えた。
「タンゴは対話だ。俺はモンスターとは言葉が通じないけど、お前となら通じるだろ?」
一拍の沈黙。
それからソノラが笑った——嘲笑じゃない。本当に面白いと思った笑い方だ。
「……わかったよ。あんた、なかなか面白いね。続けなよ。」
音楽はまだ鳴っている。
パートナーも三日月刀もない。ただ音の出る木の棒だけがある。
杭を抱えて、切れのあるリズムの中で自分のステップを踏む。速いときは速歩き、止まるときは杭で音符を打つ。一声、二声、三声——メロディーにはならないけど、モンスターたちはもう攻撃してこない。
彼らは聴いている。
最後の長い音。止まって、杭を頭の上に掲げ、力を込めて最後の音符を叩く。
——リン。
全てのモンスターが一斉に三日月刀を仕舞い、お辞儀をし、闇の中へ沈んだ。
四階へ続く石段が現れた。
青い蛍が光った。胸がまた震えた。今までより強く、誰かが内側から叩いたみたいに。
「……あんたの頭の回路はちょっとぶっ飛んでるけど、私はすごく気に入ったよ。」
杭が手から滑り出て、空中に戻った。
「役に立てばそれでいい。」
振り返らずに階段へ向かった。
背後からソノラの囁きが聞こえた。笑っているのかどうかもわからない口調で。
「朔が見込んだ人間は、やっぱりみんな変だね。」
【「みんな」? どういう意味だ?】
【俺以外に誰がいるんだ?】
心の中で考えながら、一段目の階段を踏んだ。
音楽はもう頭の上で鳴っている——四階のリズムが、どっしりと響いている。
【上がればわかるさ。】
でもこの階段、なかなか頂上に着かない。
いや、違う。
階段が……横に動いてる?
これは上じゃなくて、前に行ってる。
【ここは何階だ?】
音楽が変わった。タンゴじゃない。ワルツだ。
でもあのモンスターたち——回らない。平行移動している。
【ワルツって回るんじゃないのか?】




