表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ぬいぐるみ、俺は〈十八〉の全女ソウルライクBOSSたちに真の終局をもたらす!  作者: 野間羊
第3巻 ソノラ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/68

第4章 タンゴの合間

 発条人形ゼンマイニンギョウの動きは全然固定じゃなかった。時々ちょっと止まってすぐ動き出すかと思えば、こっちが眠くなるくらい長く止まってから動いたりする。


 動き出すたびに追いかけてきて叩いてくる。凶悪極まりない。全力で逃げるしかない。


【この階のモンスター、本当に手強い。動きが制限されてなかったら、とっくにやられてた。】


 でもどうやって上の階に行けばいいんだ?


 カクカクいう音を聞きながら、壁を全部撫でてみた。仕掛けもなければ、何もない。


「小さなやつ、まだ固定観念に囚われてるのか? 酷いなあ~」


 ソノラの杭が空中に浮かんで、文句を言うだけで手伝う気はない。


【……まあいい。固定観念だとしても——こいつらを完全に止めるしかないんだろ。】


 しばらく観察した。動いているときに攻撃するのは自殺行為、止まっているときに攻撃しても罰せられる。じゃあ、カクッと止まった一瞬を狙うしかない。


「カチッ、カチッ、カチッ——」


 歯車の音。ドラムスティックみたいな反手双刃ハンシュソウジンを握りしめ、振り返り、飛び上がり、人形の腰の発条に引っ掛ける。


 引っ張る。もう一度。


 人形はどんどん硬直していく。発条が緩み、へなへなと地面に倒れて動かなくなった。


 三階へ続く石段が現れた。


 青い蛍が一瞬光った。


 胸がまた震えた。


【……またか? 一階でもそうだった。あいつが飛んでくると胸が震える。一体何をくれてるんだ?】


「あらあら、みんな寝ちゃったね。小さなやつ、上がっておいで~」


 階段を上がる。階段の隅に目立たない篝火があったので、すぐに灯した。朔が炎の中に現れた。


【この世界の影響もようやくマシになったみたいだ。】


「おや、小さなやつは朔の人間だったのか? じゃあ納得だ。」


 朔は彼女を無視して、ただ俺を見ていた。


「……胸に、何か感じる?」


「あるよ。どうして知ってるんだ?」


 朔はしばらく黙って、直接は答えなかった。


「それがあなたの体内に蓄えられています。一番上まで行けば、わかりますよ。」


【……またはっきり言わない。】


 もう一度聞こうとしたら、ソノラが割り込んできた。


「はいはい、そこでイチャイチャしないで~。心臓の鼓動まで一緒になってるのに、口ではそんなに固いなんて。」


 杭から音波が放たれた。篝火は消えなかったけど、炎が反対方向に倒れた。朔の姿が消えた。


「お前——『待ってるよ』ってまだ聞いてないんだけど。」


「ごめんね~。私はそういう偽装が得意なタイプじゃないから。」


 ソノラの口調には珍しくからかう感じがなく、ちょっと困ったような雰囲気だった。


「あなたね、心に思ってることがあるなら、なんで我慢して言わないのさ。」


【……俺、我慢してるか?】


 反論する間もなく、音楽が鳴り始めた。イントロを聴いただけで、何の曲かわかった。


「三階のみんなが好きなのは——」


「タンゴ。」

「タンゴ。」


 俺とソノラがほぼ同時に言った。


「え? 小さなやつ、詳しいんだ? じゃあ頑張れよ~」


 ——


 バンドネオンの音が壁の隙間から染み出してくる。低く、ねっとりしている。


 闇の中から新しいモンスターが現れた。二匹一組で向かい合い、片方の手は相手の肩に、もう片方の手の甲には短刀が縛り付けられている——刃はほんのりと曲がっていて、まるで三日月のようだ。顔はない。


 タンゴの最初の一歩は拍じゃない。休止だ。


 音楽が一瞬止まった。


 三日月刀が振り抜かれる——俺に向かってじゃない。互いに相手の肩に向かって。


 刀光が一閃、火花が石畳に散る。


【タンゴって血が出るもんなのか?】


 二つ目の休止。彼らが向きを変え、刀が相手の顔を切りつける。あと一寸で届くところで止まった。


 三つ目の休止。全てのモンスターが一斉に俺に向かって突っ込んできた。


 慌てて身をかわす。刀が腕をかすめ、布地が少し削げて、120ダメージ。


【なんでまた俺を狙うんだ? かすっただけでこんなに減るのか?】


「タンゴは一人で踊るものじゃないよ~」


 杭の中から声が漂う。


「パートナーが必要なんだよ、小さなやつ。さもないと、あいつらの気性は一階よりもずっと悪いからね。」


【わかってるよ……】


 周りをざっと見渡す。どのモンスターにも相手がいる。はぐれ者はいない。彼らにも休止はあるけど、速度もダメージも二階よりはるかに強い。逃げ切れない。


 視線をソノラの杭に移す。空中に浮かんで、一番近くにある。見物するように上下に揺れている。


 掴んだ。


「……何をする気?」


 ソノラの声が困惑している。


「俺のパートナーになれ。」


「本気で? じゃあ、あなたのダンスの腕前を見せてみなよ。」


 音楽が三小節目に入った。あるモンスターが相手を離し、こちらへ歩いてくる。


 迷っている暇はない。


 杭を抱え、左手をその「肩」の位置に当て、右手で突き出た部分を握る——それが三日月刀だと思って。


「さあ来い。」


 一つ目の休止。モンスターたちが止まる。杭を抱えて一歩踏み出し、すぐに引き戻す。まるで杭がリードしているふりをする。


【バカみたいだ……でも他に方法がない。】


 二つ目の休止。モンスターたちが向きを変え、刀を一斉に俺に向ける。杭を抱えて一回転し、杭の先端を一番近い奴に向けた。


 そいつは一瞬固まった。


 三つ目の休止。テンポが速くなり、抱えた杭を連れて速歩きを始める。杭は軽いけど、形が不規則で、身体に当たって痛い。


 一匹のモンスターが突っ込んできた。杭で受け止める。杭の表面の模様が震えて、短い音符を一つ鳴らした——ピアノを一つ押したような音。


 そのモンスターが止まった。首をかしげて、杭を見つめる。まるで聴いているように。


 もう一度叩いた。また甲高い音符。


 モンスターたちが全員動きを止め、一斉にこちらを見た。


「あんた、私の杭を楽器にするつもり?」


 ソノラの声からからかうニュアンスが消えた。


「タンゴは対話だ。俺はモンスターとは言葉が通じないけど、お前となら通じるだろ?」


 一拍の沈黙。


 それからソノラが笑った——嘲笑じゃない。本当に面白いと思った笑い方だ。


「……わかったよ。あんた、なかなか面白いね。続けなよ。」


 音楽はまだ鳴っている。


 パートナーも三日月刀もない。ただ音の出る木の棒だけがある。


 杭を抱えて、切れのあるリズムの中で自分のステップを踏む。速いときは速歩き、止まるときは杭で音符を打つ。一声、二声、三声——メロディーにはならないけど、モンスターたちはもう攻撃してこない。


 彼らは聴いている。


 最後の長い音。止まって、杭を頭の上に掲げ、力を込めて最後の音符を叩く。


 ——リン。


 全てのモンスターが一斉に三日月刀を仕舞い、お辞儀をし、闇の中へ沈んだ。


 四階へ続く石段が現れた。


 青い蛍が光った。胸がまた震えた。今までより強く、誰かが内側から叩いたみたいに。


「……あんたの頭の回路はちょっとぶっ飛んでるけど、私はすごく気に入ったよ。」


 杭が手から滑り出て、空中に戻った。


「役に立てばそれでいい。」


 振り返らずに階段へ向かった。


 背後からソノラの囁きが聞こえた。笑っているのかどうかもわからない口調で。


「朔が見込んだ人間は、やっぱりみんな変だね。」


【「みんな」? どういう意味だ?】


【俺以外に誰がいるんだ?】


 心の中で考えながら、一段目の階段を踏んだ。


 音楽はもう頭の上で鳴っている——四階のリズムが、どっしりと響いている。


【上がればわかるさ。】


 でもこの階段、なかなか頂上に着かない。


 いや、違う。


 階段が……横に動いてる?


 これは上じゃなくて、前に行ってる。


【ここは何階だ?】


 音楽が変わった。タンゴじゃない。ワルツだ。


 でもあのモンスターたち——回らない。平行移動している。


【ワルツって回るんじゃないのか?】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ