第15章 飛翔
もしコロティアが全然戦いたくないのなら、「打」しか覚えてない魔法なんて意味がない。
そこで、まずはマップを走り回って「大師」を探すことにした。
どこにいるかもわからないけど。
蹄鉄を取り出してカンカン叩いた。
一匹の護馬甲が地面から起き上がり、首甲を振った。
【こいつ、なかなか使えるな。】
よし、マップを走るか。
ずいぶん時間がかかるかと思ったら、すぐに「大師」に出会った——堡塁の前だ。
守橋将軍はいなくて、彼女は中から出てくるところで、両腕に何冊かの本を抱えていた。
【なんでこんなところに?】
「偶人? なぜここに?」
「こっちのセリフだよ。何してるんだ?」
「面白き書を得たり、暇を潰すがため。」
「面白い本?」
「この地の軍中、長く戦いし者は心緒収まらず、そこから生まれし書なり。偶人もこれが好きなのか?」
心緒収まらず……嫌な予感がする。
【まさか変なやつじゃないよな……】
「詳しく言うと、共に床に入りて楽しむ、交わり……」
「もういい、聞きたくない。好きに読めば。」
この人生で初めて、その言葉の意味を知りたくないと思った。
【絶対に二度と聞くもんか。】
「諾。偶人、我に何の用だ?」
「別のを教えてほしい。」
ソウル貨を取り出した。
「これ全部やる。飛び方を教えてくれ。」
「飛ぶ? 汝、自ら持っているではないか?」
「え? 俺、全然飛べないんだけど……」
「明らかに翼耳を持つのに自ら知らず、悲しきかな。」
「翼耳?」
【そうか、あの羽根の耳はずっと飾りだと思ってた。ただの可愛い飾りで、飛べるなんて考えたこともなかった。】
【まさかそんな使い方があったのか?】
「されど、吾は教えられ、汝は学べる。望むか?」
「もちろん! 早く教えてくれ。」
「善し。これら全て我が持ち帰る。」
飛び方を教えるだけで全部持っていく? 高すぎるだろ——1000ソウル貨もあったのに。
【シエルと友達なわけだ。】
「汝、耳を動かして顔を動かさずとも、自ずと飛べる。」
耳だけ動かせ? そんなのほとんど無理だろ……
「大師」を見る。彼女はただの人間の耳なのに、上下左右に生き生きと動かせる。
【どうやってるんだ?】
「善く学べ。」
よし、天賦の才を発揮する時だ。耳を動かせ、しっかり学べ。
目を閉じて、全神経を耳に集中させる。
そよ風が顔を撫でる。
しばらく待って、目を開ける——飛んでた。
【本当にできるんだ?!】
ちょっと変だけど。耳を上下に羽ばたくと、鼓膜が風で突き抜けそうになる。
【この飛び心地、ひどすぎるだろ……】
「奇才なり。一度学びて即会得するとは。」
「大師」は少し顔を上げて、俺に向かってほほ笑んだ。
「聞きたい、汝、飛び方を学んで、何をしようと?」
「『大師』もあの崖を見たことあるだろ? あそこを飛び降りて、一人を救いに行くんだ。」
「深淵に逃れし者は、再び陽の目を見るは難し。」
「わかってる。だからこそ、俺が引っ張りに行かないといけないんじゃないか?」
【逃げてるからって放っておけないだろ。】
「汝の善、称賛に値す。しかし、慎みてしかるべし。」
「忠告ありがとう。じゃあ行くよ。気をつけて。」
「また会おう。」
「大師」はうなずき、手を振って、すぐに姿を消した。消える速さはシエルに負けない。もしかしたらシエルは彼女から教わったのかもしれない。
【一人また一人、足が速すぎる。】
急いで崖の端へ飛んでいった。
錆気は下に沈むから、空の上のほうはずっと空気がいい。
【やっと一息つける。】
着いた。暗いのはちょっと怖いけど、コロティアのために勇気を振り絞る。
【下りるだけ下りてやる。】
ゆっくり崖の下へ飛んでいく。錆気がどんどん濃くなり、視界を遮る。
どこへ向かってるのかさっぱりわからない。もうなりゆきに任せて進むしかない。
【目は使えない。運を天に任せるか。】
すぐに、風の中にこんな場所にあるはずのない音が聞こえてきた——
蹄鉄を打つ音。とてもかすかだけど、ようやく手がかりができた。
【彼女がそれを叩いてるのか?】
音を頼りに飛んでいく。
ほどなく、他の錆気よりずっとはっきりした浮遊体が見えた。
「コロティア!」
音が止んだ。
コロティアの姿が再び現れる。
彼女はまた手話をした。
「言ったはずよ……どうか離れて……」
「なぜ……自分を……危険に……陥れるの……」
【またそのセリフか……】
動作が終わると、彼女は周りの錆気を集めてきて、俺の行く手を塞いだ。すぐに、彼女はもう見えなくなった。
続いて、錆気の中から錆びた金属の破片が何枚か飛び出し、まっすぐに俺に向かって飛んできた。
耳が、それらが空気を切り裂くヒュッという音をはっきりと捉えた。
咄嗟に身をかわす。
「でも俺はお前を危険だなんて思ってない! コロティア! 聞こえてるんだろ?!」
【お前は傷つけたくないはずなのに、なんでこんなことするんだ!】




