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転生ぬいぐるみ、俺は〈十八〉の全女ソウルライクBOSSたちに真の終局をもたらす!  作者: 野間羊
第2巻 コロティア編

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第14章 腐の息吹

 教会の外で、浮遊体フユウタイは待っていなかった。


【……やっぱり乗り物じゃなかったか。】


 仕方なく、コロティアを探すのまた自分の足で行くしかない。


 赤い蛍の方へ向かおうとしたら、バッグの蹄鉄テイテツがちょっと動いた。また一匹の護馬甲ゴバカッコウを呼び出した——今度はおとなしく俺の前に立ち、首を低くした。


【この蹄鉄……いったい誰がくれた半分代行ツールなんだ?】


 乗る。護馬甲はすぐに赤い蛍の指す方向へ走り出した。


 またあの堡塁の前に来た。橋は無傷だった。護馬甲は止まらず、そのまま突っ切った。


 橋を渡るときに下の錆水を見下ろして、ふと守橋将軍の言葉を思い出した。


「背後には万の灯火」……


【まさかこの馬が非戦場の場所に連れて行こうとしてるのか?】


 でもここは錆骸丘サビガイオカだ。そんな場所があるわけない。


 道の先は崖だった。護馬甲が止まる。


 対岸に、かすかに万の灯火が見える。錆の匂いもなく、曇りもない。


【……渡れない。ただ見てるだけか。】


 ぼんやりしていると、何かが崖の底からゆっくりと浮かび上がってきた——


「お? 浮遊体? こんなところで何してるの? またこっそりついてきてたのか?」


 言い終わった瞬間、自分が震えているのに気づいた。違う、護馬甲が震えている。そいつは浮遊体を見て、また暴走した。


 反応する間もなく、地面に投げ出された。護馬甲は一目散に逃げていった。


【痛くはないけど、綿が飛び出しそうだ……この馬、いったいどうしちゃったんだ?】


 まだ起き上がれないうちに、浮遊体が変わり始めた。


 収縮し、伸び、人の形に固まる。


 コロティアだった。どうやら浮遊体は彼女自身だった。


 でも彼女の顔にあれは何だ?


 錆びた鉄の枠が、顎から首までをぐるりと巻いている。縁は皮肉に食い込み、錆が皮膚を伝って垂れている。周りの布地は鉄錆と混ざり合い、もう服なのか傷なのかもわからない。


 彼女は俺のすぐ先の崖端に立ち、対岸の万の灯火の方を見つめ、背を向けていた。風が崖の底から吹き上がり、彼女の裾を揺らしている。


 ボス戦はこうして始まった。戦闘とは思えないほどの静けさだ。


 彼女は何も言わなかった。


 俺は言うべきことはもちろん言う。フラグに言ったら手加減してくれたから、コロティアもそうに違いない。


「コロティア、俺はお前を傷つけたいわけじゃない。救いに来たんだ! もう一人で背負わなくていいんだよ!」


 彼女は少しだけ首をかしげた。その目の中で何かが一瞬輝いた——風に揺らされた火の粉みたいに、すぐに消えた。


 彼女は元の向きに戻った。首を振った。


 怒りも悲しみもない。ただ首を振る。まるで引き受けたいけど引き受けられない願いを断るように。


「ふう——」


 一筋のサビの息が、彼女の口からゆっくりと吐き出された。とても遅いのに、範囲は広い。ため息のように、人が全身の力を振り絿って最後の息を吐き出すように。


 三度転がってやっと避けられた。


 やっと立ち上がったら、足元が突然揺れた。脇から錆気が噴き出し、布地の端をかすめていった。あともう少しずれていたら、当たっていたところだ。


【これは警告か?】


 案の定、地面から錆気が連続して噴き出し始めた。ランダムだけど、本当に当たりそうなのは数本だけだ。その場でスタミナ回復を待って、錆気が噴き終わったのを確認してから数歩移動することもできる。


 彼女は本当に傷つけようとしているんじゃなく、俺を遠ざけようとしている。


 やっと止まった時、顔を上げると自分はもう彼女からずいぶん遠くに離れていた。護馬甲は逃げたし、走るのは得意じゃない。このまま彼女はさっさと立ち去ることもできたし、隙をついて攻撃だってできた。


 でも彼女はしなかった。ただそこに立ち尽くし、微動だにしなかった。


 しばらく待って、もう技を出さないことを確認してから、慎重に一歩前に進んだ。


「コロティア、俺……」


 彼女は手を上げた。


 いくつかの手話をした。


 それから浮遊体に戻り、崖の下へ落ちていった。


 あの錆色の光は風に吹き散らされる灰のように、見えない深みへと落ちていった。


 俺は一人その場に立ち尽くし、口にはまだ叫べなかった「打」の字が残っていた。


 頭の中で何度も彼女の手話がよみがえる。


【天賦のてんぷのさい……手話まで秒で覚えられるのか?】


 俺にはわかった。


「どうか……立ち去って。」


 命令じゃない。懇願だ。


「もう……近づかないで。」


 彼女は自分を指し、それから手を振った——別れの挨拶じゃない、とても小さな、誰にも見られないように振っている。


「お願い。」


【彼女は俺を追い払っている。】


 なんだか泣きそうになった。悲しいんじゃない。言葉にできないほど胸が詰まった感じだ。


 彼女は世界を救ったのに、「近づかないで」さえも「どうか」と言うしかなかった。


 長い間黙っていた。


 風が崖の底から湧き上がり、俺の布を体に貼りつけた。


 崖の底に向かって叫んだ。


「コロティア——それでも俺は戻ってくるからな!」


 声は風に散らされた。でも風は音を下まで届けてくれるだろうか。


 彼女に聞こえたかどうかはわからない。


 でもこれが俺の答えだ。

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