表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ぬいぐるみ、俺は〈十八〉の全女ソウルライクBOSSたちに真の終局をもたらす!  作者: 野間羊
第2巻 コロティア編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/30

第12章 浮遊体

 堡塁の入り口に立った。


 鉄の扉は半開きで、誰かの凱旋を待っているかのようだった。でも蝶番は錆び付いていて、全然動かない。少しずつ体を押し込むしかなかった。痛くはないけど、綿が体中でぐちゃぐちゃに動いて、なかなか気持ち悪い。


 中は外よりずっと暗かった。空気には橋の上よりも濃い鉄錆の匂いが満ちていて、それに何とも言えない別の匂いが混ざっていた——ずっと湿っていたのがすっかり乾いたような。嫌な匂いじゃないけど、ちょっと落ち着かない。


 もっと怖いものが待ってるかと思った。でも歩いていくと、俺の移動に合わせてぼんやりと灯る松明だけで、守兵も死体もなかった。ただ行き止まりの扉の向こうだけが、かすかに光っていた。


 あれは何だ?


 近づいて覗いてみると、どうやら士官の居室らしい。扉を力いっぱい押し開けた。


 床には雑多な物が散らばり、隅には何個か箱が積まれていた。漁ってみる——空っぽだった。


【箱モンスターじゃなくてよかった……なるもんじゃない。】


「あいたっ!」


 ほっとした拍子に、後頭部を何かで叩かれた。体勢を崩して箱の中にひっくり返り、蓋まで閉まってしまった。


【なんだよ?!】


「打!」


 自分の頭の上に向かって叫んだ。


 箱の蓋が吹き飛んだ。何かが蓋から落ちてきた。


「ぷぎっ!」


浮遊体フユウタイ? しかも当たり判定まであるのか?】


 結構な音を立てて落ちたのに、すぐに跳ね起きた。襲いかかってくるかと思った。


 ところがそいつは逆に遠くへふわふわと離れて、机の下に隠れた。


【前のバージョンじゃ見たことないぞ……】


「あの……人の話、わかる?」


 あ、俺も人じゃないか。


「……」


 自分の頭を叩いた。浮遊体が喋れるわけない。


「傷つけたりしないから。もう箱に閉じ込めないでくれ。」


 そう言いながら近づいた。


 手が触れそうになった瞬間——ツンと鼻を刺す、あの馴染みのある錆びた匂いがどっと押し寄せた。手の甲に赤い錆びが浮かんだ。布地にどうして錆びるんだ?


 慌てて手を引っ込めた。


 その動作に浮遊体が驚いた。急に飛び上がり、もともと腐っていた木の机を倒した。


 机の上から一通の手紙が舞い落ちた。


 拾おうとしたら、また飛んできて遮られた。


「見たいだけだ。悪意はない。」


 そいつは微動だにしない。どっちから回っても、遮られる。


【この手紙、唯一明かりのついてる部屋にあったんだ。絶対重要アイテムだ。】


 その時、青い蛍が入り口からふわっと入ってきて、手紙の上に止まった。


【青い蛍? ずっと追ってなかったけど……そういえば教会を出たときの方向はこっちだった。たぶん護馬甲ゴバカッコウの暴走に間に合わなかっただけか。】


 やっぱり、この手紙は重要だった。


 特殊アイテムなら、蹄鉄テイテツで気をそらしてみるか?


「へへ、これ見て。」


 バッグから蹄鉄を取り出した。浮遊体は案の定そっちに気を取られた。


 俺は転がって、手紙を掴んだ。


 急いで振り返る——怒られたら嫌だから。ところが浮遊体は逆に静かになった。


【……俺のこと、わかってるのか?】


 手紙を開ける。


 今回も記憶の映像はなかった。文字はかすれて一部しか読めない。紙には血痕が残っていた——書いた人が最後の瞬間に残したものだろう。


「橋はもう持ちこたえられません。後方へお伝えください……」


「第四軍団、約束通り最後の瞬間まで守り抜きました……」


「……救出は不要です。」


 最後の一文はとても強く書かれていた。刀で刻みつけたかのように——


「ただし彼女に伝えてほしい。俺は恥をかかなかったと。」


【後ろには何て書いてある? 本当に読めない。宛名の名前までもが滲んでる……】


【でもこの手紙は特殊アイテムで、コロティアのマップに出てきた。きっと彼女に関係してるはずだ。】


【「彼女に伝えてほしい、恥をかかなかったと」——その「彼女」ってまさか? 何だかただならぬ関係っぽいな。】


【……なんで俺がそんなこと気にするんだ。】


 手紙を閉じて、浮遊体を見る。そいつはまだそこにいた。


【そうだ、教会に戻らないと。手持ちのソウル貨ならあの服が買える!】


 立ち去ろうとしたら、浮遊体がついてきた。俺が一歩進むと、一歩浮く。振り返ると、止まる。


「ついてきてどうした? 手紙がほしいのか? まだ渡せないよ。」


「……」


 まあいい。ついてくるならついてこい。もしかしたらこのマップの新しい乗り物かもしれない。


「速く浮けるだろ? 教会まで送ってくれないか?」


 浮遊体は理解したように、黙って俺の下に潜り込み、輪になった。


 空中を浮いて移動するのは確かに烁殻虫シャクカクチュウよりずっと速い——この輪、見れば見るほど浮き輪をはめてるみたいだ。


 こんなに早く新しい乗り物ができるなんて……烁殻虫に悪いな。


 でも……なんでシステムから乗り物の通知がずっと出ないんだ?


【まさか……いや、とりあえず戻ってからだ。】


 浮き輪に乗って、黙り込んだ堡塁を振り返った。


【手紙の文字は滲んでて、守橋将軍と第四軍団のことしか書いてなかった。コロティア本人については、彼女のマップだってこと以外、何の手がかりもない。】


【どうやら真実はここにはないらしい。】


 まあいい、戻って朔に聞いてみよう。


 浮き輪が速度を上げて、教会の方へ漂っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ