第11章 錆水と鉄心
【「とことん付き合ってやる」という言葉がまだ耳に残っているうちに、奴の刀がまた飛んできた。】
攻撃がちっとも効かないことに、守橋将軍は腹を立てたらしい。彼は二連斬りを繰り出し、俺に素早く転がるよう強いる。刃がぬいぐるみの布地の端をかすめ、かわすたびに紙一重だった。
そしてその転がりの末、俺は橋の中央に来ていた。下は濁った錆水が流れていて、落ちたら間違いなく死ぬだろう。
その時、守橋将軍が攻撃を止めた。彼は無理やり手綱を引き、鈍重な戦馬に向きを変えさせて走らせる。走りながら大刀を掲げ、橋の鎖に向かって勢いよく叩きつけた——一太刀、二太刀。音は甲高く、これまでの鈍重な感じは微塵もなかった。
【しまった! 橋を断ち切って、俺を落とそうってのか!】
急いで橋の反対側へ走る。たどり着ければ堡塁に入れる。でもこの鈍足で、逃げ切れるわけがない。
橋の鎖が断絶する轟音を立て、守橋将軍が突然振り返り、戦馬を制御して橋の中央へ向かって猛進してきた——
「ドゴォッ!」
橋の床板が崩れ落ちた。
【くそっ! このボス戦にこんなギミックがあったなんて知らなかった!】
落下感がどっと襲い、心臓が喉元から飛び出しそうだった。
——
水に落ちても、俺は沈まなかった。死にもしなかった。蹄鉄がいつの間にかバッグから飛び出していて、板のように錆水の上に浮かび、しっかりと俺を支えている。俺はそれにしがみついて、手を離せなかった。
【なんで浮かんだんだ?】
守橋将軍も沈まなかった——戦馬は胴体半分を水面に出し、錆水が甲板を伝って滴り落ちている。水中ではむしろ動きが速くなっていた。
蹄鉄が俺を乗せて後退する。将軍が馬を追わせる。一閃の錆色の刀光が走り、俺は大刀で水面からすくい上げられ、体が高く舞い上がった。
すくい上げ。
——HPが530も削れた。
【なんだこの数値!】
「決着をつけてやる!」
将軍は俺を断橋の残骸に向かって投げ飛ばした。この速度でぶつかれば即死だ。怖くて目を閉じた。
【また教会に戻るだけか……】
——
想像していた衝撃はなかった。背中が硬いものに当たり、体はしっかりと受け止められた。
目を開ける——やっぱり蹄鉄だ。いつの間にか追いかけてきて俺を受け止めていた。小さな救命ボートみたいに。
ちらりと血条を見る:45。残り45。
【……生きてる。】
「また女巫か! 死罪に値する!」
守橋将軍が素早く刀を収め、この言葉を吐いた。俺は一瞬戸惑った——なぜ「また」なんだ? まさか「大師」を知ってるのか? ありえない。大師はこんな死闘に身を投じるようなことはしない。
——
考える暇はない。将軍は刀を掲げ、馬を駆ってもう一度突撃してくる。刃先が水面をかすめ、層をなす錆色の輪を広げる。この錆水の中では、彼の動作は橋の上よりずっと速い——硬直が完全に消えていた。
転がろうとしたが、スタミナがすくい上げで空になった後まだ回復していない。
【動けない!】
身の下の蹄鉄が急に動いた。後退はせず、まっすぐ将軍に向かってぶつかっていく。将軍はすぐに刀を収め、刀身で受け止めようとした。
蹄鉄は刀にぶつかる直前で突然向きを変えた——刀身と柄の隙間をすり抜け、回転しながら将軍の頸甲の継ぎ目に叩きつけられた。
「バキッ——」
頸甲が吹き飛ぶ。中から現れた首は錆びついてはいたが、確かな急所だった。
【今だ!】
深呼吸し、藍ゲージを全て使って詠唱する:
「死ぬかと思ったけど天が味方したから全力でぶっ倒させてもらうぞ!」
一瞬で、無数の拳が四方八方から現れ、将軍に向かって轟きわたる。すぐに織魔絨を一つ握り潰し、藍を満タンに戻す。もう一度詠唱し、また拳を繰り出す。
一発、二発、十発、百発。守橋将軍は人馬ごと後ろにのけぞり、鉄蹄をバタつかせ、刀も手から離れた。
ついに、人も馬も一緒に錆水に倒れ込み、大きな水柱を立てた。
「……それでも……守れなかったか……」
将軍が最後の息を引き取り、残骸はゆっくりと水底へ沈んでいく。水面は静けさを取り戻した。
俺は蹄鉄の上にぐったりと寝転がり、大きく息をついた——ぬいぐるみに呼吸は必要ないけど、それでも疲れた。
【はあ……また朔に迷惑をかけるところだった。】
もしこの戦いに負けていたら、祝福が発動してもう一度朔を傷つけるところだった。
蹄鉄は俺を乗せて断橋の反対側の岸まで漂わせた。這い上がると、蹄鉄は勝手にバッグへ戻っていった。何もなかったかのように。
バッグを開けて説明をもう一度見る。
【「内側は固いが、外側は錆びて原型をとどめていない蹄鉄。誰が残したものかはわからない。」】
……やっぱり相変わらずだ。
【ただの普通の蹄鉄なのか? いったい誰が助けてくれてるんだ? これを見たら将軍の前に連れて行かれ、これに救われたのに、その理由すらわからない。】
災いであり、同時に恵みでもある。
【たぶん……真実はこの先の堡塁の中にある。】




